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超高速再生で無限復活? ならば情報ごと分子を霧散させるまで

ベルゼノフの「100%絶対反射」すらも、筋肉による逆位相の超振動で相殺し、粉砕したレオン。

王宮を支配していた魔王軍の脅威は去り、王都に平穏が戻るかと思われたその時、王宮の天守閣から禍々しい赤黒い柱が立ち上った。

「クハハハ! ベルゼノフのような小細工など不要! この我こそが魔王軍最強の総司令、不死将ゼノヴィアである!」

天空を染める赤黒い雲の中から現れたのは、巨大な骸骨と肉片が蠢く異形の大巨躯であった。

ゼノヴィアは胸のコアを輝かせ、王都全体を見下ろして笑い声を響かせる。

彼が持つのもまた、世界の判定システムが保障する最悪の権能――「超高速無限再生インフィニット・リジェネ」。

ゲーム『アルカディア・ストーリー』のラストダンジョン直前に立ちはだかる凶悪なボスであり、どれほどHPを削ろうと、細胞ひとつのレベルから0.001秒で完全復元されるため、特定の聖遺物で再生能力を封印しなければ討伐不能な設定だ。

「レオン、だめよ! 退いて!」

エレナが声を張り上げる。

「あの怪物はダメ! 世界のシステムが『HPを常時最大値に固定する』っていうバックアップのルールを適用しているの! いくら吹き飛ばしても、一瞬で元通りになるわ!」

「なるほど。無限再生か」

レオンは大剣を背負ったまま、冷静にゼノヴィアの巨大な体を見上げた。

「要するに、肉体が破壊された瞬間に、システムが分子の初期配置データを読み込んで、周囲の物質を強制的に再構成しているわけだな」

「ハッハッハ! 理解したか! 我の体は世界のデータサーバーと直結している! 粒子一つ残さず破壊しようと、世界の記録から我が存在が書き直されるのだ! 貴様の拳でどれほど粉砕しようと、すべて無駄!!」

ゼノヴィアが巨腕を振り下ろし、大地を砕く。

しかし、レオンは微動だにしなかった。

「なら、バックアップを読み込む速度を超える運動熱で、再構成に必要な質量エネルギーそのものを宇宙の彼方へ拡散させればいい」

「……は?」

「物理学において、質量とエネルギーは等価だ。肉体を破壊する際、単に細かく砕くのではなく、俺の筋肉が発生させる超高圧の摩擦熱によって、敵の肉体を構成する全素粒子を光子レベルまで完全熱放射・拡散させればどうなる?」

レオンが静かに腰を落とし、右拳を引き絞る。

「再構成しようにも、その場に物質も質量も存在しなくなる。サーバーがデータを読み込んで復元しようとした瞬間、復元先の空間の質量がゼロであるため、システムはゼロ除算を起こしてエラー停止する」

「な……何をバカなことを!? システムがゼロ除算でエラーを起こすだと!? そんな滅茶苦茶な理論が――」

「できるさ。俺の筋肉が、素粒子を光に変えるほどの摩擦を生み出せばな」

レオンの全身の細胞が、限界を超えて高速駆動し始めた。

皮膚の表面から放たれる熱量は太陽の光球表面に匹敵し、周囲の空間が赤熱して歪んでいく。

「無限再生の設定がある? バックアップデータで復活する? 知るかそんなこと」

レオンの右拳に、超高密度の熱運動と運動エネルギーが集中していく。

「システムの復元処理が追いつかないほどの熱量で、お前の質量をゼロにしてやる」

「ひ、ひぃぃぃっ!? 身体から太陽みたいな熱が出てるぞ!? なんだその熱量はぁぁぁっ!?」

ゼノヴィアが恐怖で叫び、再生の光を全身に巡らせようとした瞬間。

「見せてやる。これが――【物理(素粒子崩壊・熱力学破砕)】だ!!」

レオンの右拳が放たれた。

ドォォォォォォォォォォォォンッ!!

レオンの拳から解き放たれたのは、衝撃波ではなく、物質そのものを超高熱の光へと変換する絶大な運動熱エネルギーの奔流。

ゼノヴィアの巨躯に拳が触れた瞬間、肉体は「砕ける」間すら与えられず、瞬時に分子結合を叩き切られ、全素粒子が激しい熱運動によって光子へと変換されて消滅していった。

「が……あ……!? 再生が……復元データが……対象の質量が存在しないため……エラー……!?」

パリリンッ! と、空中でシステムが悲鳴を上げるような電子的な破砕音が響く。

無限再生のシステムが、復元先の質量ゼロ空間を認識できず、無限ループの末に処理落ちを起こして崩壊したのだ。

赤黒い巨体は一瞬にして跡形もなく蒸発し、あとに残ったのは爽やかな風と、澄み渡った青空だけだった。

……

静まり返る王都。

レオンは静かに拳を引くと、立ち上る湯気をふぅーと息で吹き消した。

「ふむ。素粒子まで運動させるのは、少し体温が上がりすぎたな」

首をかしげながら、満足そうに自分の手を見るレオン。

「……………………」

エレナと聖女リアは、空を見上げたまま硬直していた。

「ねえ……リア……」

「……はい、エレナさん……」

「あの人……今、敵を『質量ゼロ』にしてシステムをフリーズさせたわよね……?」

「わたくし……もう何が起きているのか、神に祈る言葉すら浮かびませんわ……」

「もう物理とか筋肉とかいうレベルを超えてるのよぉぉぉぉーーーっ!!」

王都の青空に、本日何度目かわからないエレナの悲鳴がこだました。

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