イベント開催
こんにちは。一葉楓です。
後書きに作者の皆さん宛の重要なお話があります。
『おい、夜桜。今どこにいるんだ?』
チャットメニューを開いてその文章を打ってから十分。返信はない。心当たりはないが、夜桜はへそ曲げてんだろうな。今までの経験からして絶対そうだ。
ならば……。
『ミル。なんか返事をくれ。なるべく早く!』
見るにメッセージを送って――
『はいはーい。どうしたの?』
早いな。返信。
『どこにいるんだ? 《死神》のボス攻略してきたんだが……合流しよう?』
『今はね、《始まりの町》だよ』
『オーケー。噴水広場に十分後に待ち合せな』
『らじゃー!』
この《安冥京》から《始まりの町》まではちょっと遠いが、十分以内に行けるだろう。
俺は《死神》のボスドロップを眺めていた麒麟に声をかけ、《始まりの町》に足を向けた。
ふんどしは……《安冥京》を出るまで変態モードのままだった。
◇◆◇◆◇◆
「さて、どこにいるかな?」
見渡して夜桜の魔法職用の装備もミルの大きな鎌も見当たらない。装備は現代社会では見られない個性的なものが多いのでミルのような“普通の”服を着ているプレイヤーはすぐに見つかるはずなんだが……。
と、背中に軽い衝撃を受ける。小さな何かが俺の腰に巻きつく。見下ろすとそれは小さな手だった。俺の腹のあたりで手を絡めてちょっとやそっとじゃ離れそうにない。そして、ベンチの影でフィルベルトが悔しそうに、うらやましそうにこっちを見ている。おいやめろ、道行く人が変態を見る目で見ているぞ。
「おにーちゃん♪」
やっぱりミルだった。相変わらずの真っ黒な服と真っ黒なでかい鎌。屈託のない笑顔は《死神》の攻略で着かれた俺の精神を若干癒してくれる。あー、ほんとに天使だなぁ。
そして……修羅のように血走った目でこちらを睨んでいるのは……夜桜……だよね? 見たことのない装備をしているし、若干髪が逆立っているようにも見えるけど夜桜だよ……ね?
「良。そちらの方は?」
挨拶もそこそこに、引きつった口角を上げた営業スマイルで俺に問いかける夜桜。怖いっす、死神より怖いっす。
「麒麟さん……勝手にギルドに入ってきた」
「そう……ところで良? あなた、私たちと別れてどこで何をやっていたのかしら? 教えてほしいわ」
な、なんだ……? 俺は何にもしていないはずなのになぜこんなにも迫られる!? ツンデレって奴か? いや絶対違う。ヤンデレだろう……違うな、デレなんてどこにもないじゃないか!!
「麒麟さんと一緒に《銀狼》を狩って、一夜を明かしたら《死神》の攻略に――」
「そのっ!!」
「ひぃ!?」
「その一夜はどこで過ごしたの!? まさかこの女と一緒に夜を明かしたんじゃないでしょうね!!」
何その誤解!? 俺ってそんなに煩悩だらけの変態男って思われてる!? つか、なんでそんな風に思うんだよ! 俺はしっかりと現実世界で夜を明かしましたよ! 腹も減ってたしな。
しかし俺がログアウトできることなんてのはこんな公衆の面前で言えることじゃない。何とか頭を絞り、人差し指を上に向けるジェスチャーを夜桜に向ける。
「そう……」
お? 伝わったか?
「天に昇るほどの気分だったのね?」
なぜそうなる――――――――――――――――――――――――――――――――ッ!?
待て待て待て! このままだと俺の命がマズイ! そうじゃない! 現実世界だ! 天になど昇ってない!!
居間にも俺の喉笛にかみつきそうに禁止をのぞかせ、修羅胴を行くものの如く殺気を纏ったゆっくりとした足取りで俺に一歩、二歩……
「夜桜おねーちゃん。何で怒ってるの?」
ミル! ありがとう! 俺の命は救われた!
「あ、ミルちゃん。ちょっと待っててね、良と大事なお話があるのよ」
お話と書いて制裁と読むのですね。分かります。
「ちょっと麒麟! 夜桜に説明してやって!」
「見ていてちょっとおもしろかったんですが……」
「ふざけるな!」
「しかたがないね……」
それまで俺の後ろで黙っていた麒麟が前に出て、夜桜と何やら話している。あ、テイムした《銀狼》を出した。あれって『リョウ』って名前なんだよな……。
お、話がついたみたいだ。
「良。私、誤解していたみたい。ごめんね」
「あーうん。わかればいいんだよ。(殴る前に)分かれば」
「? 何か言った?」
「イエナンデモナイッス」
若干滲み出るオーラは気のせいだろうか? まあ、知らない女と何かやってたと思ったらこいつはすぐおこるもんなぁ。
「ねーアリアちゃん。夜桜お姉ちゃんはどうして怒っていたのかな?」
「嫉妬だけど……原因は知らない方がいいかもしれない……」
真っ赤になるなよ、アリア。
広場のベンチに腰掛け、俺の中にあった最大の問題を夜桜にぶつける。帰ってくる答えに予想はついているが、本人の口から聞くのがいいだろう。
「ミルの装備のパワーアップと私の装備の新調。むしゃくしゃしてやった。反省はしていない」
ここまではっきり言われるといっそすがすがしいな。
聞けば夜桜の装備は今までは魔法職用だったのをプリースト用に新調。ミルは全体的にレベルアップさせて、それでも余ったお金はアクセサリーにつぎ込んだらしい。俺へのお土産は無し。ひどいぞ!
「確かに0にしたのはやりすぎちゃったかもしれないけど、ちゃんと理由があるのよ」
「理由? 確かに強くなるのは大事だが、こんなに一気に使わなくたっていいじゃないか」
「すぐ必要になったの」
「なんで?」
「それは歩きながら説明するわ。ついてきて」
俺の返事を待たずに夜桜は歩きだす。ミルはすでに分かっているようで俺の腕を引っ張りながら夜桜の後を追う。右手で俺の手を握り、左手はアリアと手を繋いでいる。本当に仲いいな、この二人。
麒麟に目配せしてついてくるように促して、俺たちは広場を出た。……フィルベルトよ、お前はいつの間にアリアの後ろに立ってたんだ?
「《死神》の攻略をやっていたらしいから知らないプレイヤーもいたんだけど、運営がイベントを開催するらしいのよ」
「ほうほう」
フィルベルト、本当か?
「本当だ」
「ざっと説明すると、プレイヤー同士が戦って最強を決めるというもの」
「ちょっと待て! そんなことやったら死ぬ奴も出てくんじゃないのか!?」
「そこはイベント。イベントの中での戦闘ではプレイヤーは死なない設定になっているらしいわ」
フィルベルト、本当か?
「本当だ。っていうか俺に聞くな」
「私とミルは参加手続きしたから。良、フィルベルト、後……麒麟さんもエントリーしてきなさい。参加費は自腹切ってね。そのくらいの金は持ってるでしょ? ポケットマネー」
「だから……イベントで優勝するためにアクセサリーを買った訳か」
「そうそう」
「そうだよー。この銀色のペンダント気に入ったんだ―。」
ミル可愛いなー。よし、許す。
しばらく歩くと、街の一番端っこにたどり着いた。ここら辺は背の低い建物が多いが、人気は目立つ建物を見つけた。夜桜はそこに入っていく。
外見の昭和の日本の建物みたいなダサさとは打って変わって、中は前衛的な綺麗な内装だった。霞ヶ関にあるどっかの大企業の本社みたい。
「優勝するとレア武器や装備がもらえるらしいわ。優勝じゃなくてもある程度まで進めば何かもらえるみたい」
「おー。わたし、絶対優勝する―!」
「ミルちゃん頑張れ―! わたしは参加できないのが悔しいけど、しっかり応援するよッ!」
「えへへ、アリアちゃんありがとー」
入り口正面に壁に沿った長い受付カウンターがあった。そこには少し長い列。空港みたいだ……。
「んじゃ、参加登録してくるわ。……って、フィルベルト。お前も参加すんの?」
「悪いかね?」
「いや悪くないけどさ……運営側だろ? いいのか?」
「ミルちゃんを間近で眺めてハァハァするのだ。それ以上の理由はない」
こいつ……本物の変態だ。
「予選はそれにぴったりな戦いだしな」
「あれ? そうなの? 全部トーナメントじゃないのか?」
「予選は四ブロックに分かれて制限時間ありのフリーフォーオールだ。一人だけになることもあれば、十人残ることも可能。制限エリア内でプレイヤー同士の無差別殺し合いだ。これならばうまく細工すればミルと同じブロックになって、間近で見たり助けたりもできる! そしてその後ミルちゃんはきっと抱きついて――――ッ!?」
説明してくれたのはありがたいが、邪な想像をしてたので顔面に裏拳をぶちこんどいた。悶絶してても別にいいや。こいつがわるい。
「でも運営側の人間がレアアイテムをもらうってのもどうかと思うぞ?」
「それは分かっている。適当なところでリタイアするさ。予選の後は個人トーナメントせいだしな。俺が用があるのは予選だけだ。フフフフフ……」
ダメだこいつ、早く何とかしないと。
手続きを終え、入り口近くで待っていた夜桜たち三人の元へ戻る。麒麟とフィルベルトはまだ手続きの最中。
――ちょいちょい。
ん? 夜桜が手招き? 導かれるまま、ミルとアリアからは見えない物陰に連れてこられた。いや、ひきずられた。
「どうした?」
「良……誤解って、与える方も悪いと思うのよね」
「い、いきなりなんだよ!? 殺気は収めてくれ!」
「良がどんな邪なことやってたかは知らないけど、このイベントはちょうどよかったわ。ちゃんと鍛えていたなら……優勝しなさいよ!」
「無茶だ! っていうか、それは誤解だって!」
「ゴカイもオキアミもないわ!」
「俺は魚じゃねぇ!」
「優勝は無理でも三位以内には入りなさいよ! それができなかったら……分かっているでしょうね?」
「そん――」
「あ?」
「ハイ。ショウチシマシタ」
「それでいいのよ」
どす黒いオーラからぱっと明るい笑顔に変わった夜桜は機嫌よくミルたちの場所へ戻って行く。
ヤバイ、今から悪寒がしてきた。
げんなりとした気分で、カウンターでもらったイベントの資料をアイテムボックスから取り出して目を通す。
主催者とかはどうでもいいし、優勝した時の副賞とかは詳しいことが記載されていないから、対戦方法だけ……
『対戦形式:
予選はA、B、C、Dの四つのブロックに分かれてのサバイバル形式。本選はトーナメント制です。なお、運営側の都合により、40レベル以上のプレイヤーのステータスは40に変換されます。ジョブは変化しません。
・予選:全てのプレイヤーを四つのブロックに分け、それぞれ別々に予選を行います。ランダムで選ばれたフィールドで制限時間が過ぎた時点で生き残ったプレイヤーが本選進出資格を得ます。よって、一人しか進出しない場合もありますし、多数の人が進出する場合も考えられます。このイベントではパーティーを組むことはできませんが、システムに縛られずに仲間を作ることは可能です。
なお、この予選のフィールドではモンスターが出現します。この予選ではプレイヤー、またはモンスターを倒すとそれ相応の経験値を取得することができ、上限四十までレベルアップすることができます。経験値と同じく、アイテムもドロップします。
スタート時、プレイヤーは防具と武器以外のアイテムを所有することはできません。
HPがゼロになったプレイヤーはイベント開催ビルの控室に強制送還され、イベントをリタイアします。
なお、4ブロックの予選は同時に行われます。
・本選:トーナメント形式。予選が終了した翌日から開催します。ランダムで選ばれたフィールドでの一対一の決闘形式で、制限時間は無し。どちらかのHPが0になれば終了で、次の対戦に進むことができます。
ここでの優勝者がこのイベントでの優勝者で、準決勝の後に三位決定戦、最後に決勝戦を行います。
このイベントでの戦闘でプレイヤーが死ぬことはありません。』
なかなか……面白そうなイベントだな。
はい。どうでしたか? これで当分のネタはできましたねw
さて……ここで作者の皆さんに連絡です。この小説で出たイベント、このイベントの中での『特殊な書き方』に案があるのでここで提示しようと思います。読者の方々にとってはネタバレになるかもしれないので、これから下は読まないことをお勧めします。
では。
一言でいうならば、「キャラをそれぞれの作者で分担させて動かしてみよう」というものです。
これから始まるイベントの予選……つまりはフリーフォーオール大戦のサバイバルの時、作者一人に付き一つのキャラクターを動かしてみようという企画です。
これはフリーフォーオールだからこそできることなので、イベントの予選でだけ、やってみようと思います。もちろん皆さんの承認は必要ですが……。
たとえば、奈良都翼さんが良と夜桜、霧々雷那さんがリリア、わたしがミルとアリアとフィルベルト、彩菜さんがミズキとトモキのように役割分担して、その人は初めに設定したキャラクターしか書かないというものです。
動かせるキャラの数についてはその人の希望で、けれど、フリーフォーオールでフィールドのスタート地点はプレイヤーによって違うから、あまり多くしない方がいいかも。
他の作者が使用しているキャラを出すと、少し書きづらくなることがあるでしょうから奈良都翼さんが決めたキャラはAブロック霧々雷那さんはB、わたしはC、彩菜さんはDといった具合に分けようかなと考えてます。
以上が私のこのイベントの予選での案の概要です。
詳しいことは奈良都翼さんにメッセージで聞いてください。奈良都翼さんにはあらかじめ言っておいたので大抵のことは答えてくれます。
ひとまず、次からあとがき欄にこのイベントの案への賛否、それと賛成するなら自分の動かしたいキャラを明記してください。
こんなこと言った後では話は進められず、日常回ばっかになると思いますが、どうかよろしくお願いします。
わたしが動かすキャラの希望はミル、アリア、フィルベルトの三人です。
ではではー。




