-4-
(改)4/30
セリフの調整を行いました。
(内容に変更はありません)
「ありがとう……」
拾った経緯を話して、河川敷の坂道に座って川を見ながら話す。
女子学生は両手でクマのストラップを包むように持っている。
時々、頭を撫でたり、手を持って動かしたりしている。
その様子を見ている大事なものなのだろう。
「その人形、大事なものなのか?」
「うん。 昔、大切な人にもらったものなの」
「そうか、良かったな。戻ってきて」
「うん……」
柔和な眼差しでクマを見つめている女子学生。
そして、それを俺が見つめる。
幼い子が目の当たりにした喜びに向ける瞳の輝き。
それをこの女子学生は持っているように感じた。
――と、ここで俺の視線に気づいたのか女子学生は俺の方に顔を向けた。
「ん?……あっ!」
「あ……」
その瞬間、坂道なのに何故か立てて置いてあった女子学生のカバンがバランスを崩し、坂道を重力のままに転がった。
いつかこうなるような気はしていたが、特別注視していなかった。
まぁ、案の定というやつだ。
カバンは存分に跳ねてから中身を平らな河川敷にぶちまけて止まった。
「あぁ、ひどいなぁ」
女子学生は俺の顔を見て言った。
「俺は何も言ってないし、やってもないぞ」
「こうなるの分かってたと思う……」
「そう思うなら最初からするなって」
女子学生はムッとした表情を見せたと思ったら下に転がったカバンを取りに走った。
俺は一体なにをしたんだろう。
魔法でも使ってカバンを倒したとでも言うのだろうか。
「おい、走ると危ないぞ……って――」
わぁぁぁぁぁぁぁぁ――。
俺の言葉は一足遅かった。
すでに女子学生は坂道に足を取られて前転でもするかのように転がっていった。
坂道にも草が生えていたから怪我はないだろう。
言わんこっちゃないとすら言えない。
「なにカバンの真似してるんだよ」
仕方なく俺も河川敷に下りる。もちろん歩いて。
「カバンの真似なんかしてないもん!」
「なかなか綺麗な前転だったぞ?」
「前転じゃないもん!」
「白だったぞ?」
「白じゃないもん! って、白?」
「ああ、白だったなぁ」
女子学生は少し考える仕草を見せたあと、ひらめいたかと思ったら手元の空っぽのカバンで俺の脛を思いっきり叩いてきた。
角がクリーンヒット。シャレにならないレベルの激痛が右の脛を駆け巡った。
「いってぇ! なにすんだよ」
「この変態!」
これは俺が悪いのだろうか。
ただ目の前に広がった光景をありのままに、それも色しか言ってない。
……誤解ではないが。