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俺の日常の様子がおかしい

 修学旅行最終日。

 楽しかった旅行も、今日で終わりだ。


「……」


 俺は窓の外を眺める。

 京都での班行動。

 清水寺。

 縁結びの神社。

 そして、昨夜のババ抜き。

 思い返してみれば、あっという間だった。


「……短かったな」


「そうですね」


 隣から声がする。

 声の主はレイナだった。


「少し残念だな」


「ええ」

「でも……」


「ん?」


「それだけ、修学旅行を楽しめてるとも言えます」


「…そうかもな」


 俺とレイナの目が合う。


「最後に、あなたに伝えたいことがあります」


「俺に?」


「はい」


 レイナがこちらを見る。


「少しだけ、二人で話せませんか?」


「……分かった」


 俺たちは旅館の外へ出た。


「……」


 レイナはしばらく黙っている。


「どうした?」


「いえ……」


 レイナは深呼吸する。


「ずっと、言おうと思っていたんです」


「何を?」


「私は……」


 レイナが俺を見る。


「前世のあなたことが、好きでした」


「……」


 突然の言葉に、俺は黙る。


「私にとっては、前世で一緒に過ごした時間も、あなたと交わした約束も、全部大切な思い出です」


「……うん」


「だから、最初は……」


 レイナが少しだけ視線を落とす。


「今のあなたに会えたことが、ただ嬉しかった」


「……」


「でも」


 レイナが顔を上げる。


「今は違います」


「え?」


「私は」

「今の私は――」


「今の、あなた自身のことが好――」


 その瞬間。


 ――ピカッ!!


 ドォォォォン!!


 ものすごい爆発音が京都に響き渡った。


「何!?」


「爆発!?」


「何が起きたんですか!?」


 騒ぎを聞きつけて、次々とみんなが集まってくる。


「宇宙からの攻撃か!?」


「違う!」


 佐々木が宇宙からの攻撃を疑う。


「現在の爆発音の発生源は――」


 神崎が高橋を見る。


「高橋さんです」


「だろうな…」


「そして、今までのデータから判断して、今回の爆発が高橋さんの魔法によるものである確率は――」


 神崎が眼鏡を整える。


「100%です」


「そこまで言い切るの!?」


 高橋が反応する。

 田中もやってくる。


「高橋さん」


「……はい」


「修学旅行の前、何と言いましたか?」


「……魔法は、禁止です」


「そうですね」


 田中が腕まくりをする。


「では――」


「待って!」


「校則違反です」


「ごめんなさい!」


「問答無用!」


「いやああああ!!」


 高橋が逃げる。

 それを田中が追いかける。


「止まりなさい!」


「無理!」


「止まれ!」


「嫌!」


 二人が旅館の周りを走り始める。


「……」


 俺は呆然とその光景を見る。

 佐々木が腕を組む。


「なるほど……」


「どうした?」


「これも宇宙の意思ってことさ……」


「……そうかもな」


 神崎は爆発した場所を確認している。


「興味深いですね」


「何が?」


「昨日購入したステッキと、今回の魔法の発動に因果関係がある可能性が――」


「神崎」


「はい?」


「もういいから」


「ですが――」


「もういい」


 そのとき。


「お前らァ!!」


 山田先生の声が響いた。


「何をやってるんだァ!!」


「先生……」


「全員集合ォ!!」

「今回の件について指導する!!」


「俺たちは何もしていません!」

「やったのは高橋です!」


「連帯責任だァ!!」


「理不尽すぎる!」


 山田先生が全員を集め始める。

 高橋は……田中から逃げ続けている。

 佐々木は爆発跡を見ながら宇宙について考察している。

 神崎はデータを集めている。

 レイナはというと、そんなみんなを見て笑っていた。

 そして、俺は――


「……」


 レイナを見る。


「……さっきの話」


「はい」


「途中だったよな」


「……」


 俺がそう言うと、レイナが少しだけ照れたように笑った。


「やっぱり、また今度でいいです」


「え?」


「今は……」


 レイナは騒がしいみんなを見る。


「この時間を楽しみたいですから」


「……そっか」

「確かにそうだな」


「はい」


 その瞬間。


「お前らァ!!」


 山田先生が叫ぶ。


「全員グラウンド100周!!」


「先生、京都だからグラウンドないですよ!」


「……」


 山田先生が少し考える。


「じゃあ金閣寺100周だ!!」


「それはダメだろ!!」


「先生助けて!」


 高橋が助けを求める。


「高橋、お前は1000周だ!!」


「嫌ーー!」


 山田先生も、田中と共に高橋を追いかけ始めた。

 そして、佐々木が叫ぶ。


「ミステリーサークルだ!」


「いやそれ、高橋の魔法の跡だろ」


「違う」

「これは宇宙人の仕業だ」

「やっぱり、京都には宇宙人がいるんだ!」


 神崎が答える。


「ミステリーサークルである確率は0.03%です」


「可能性はあるな!」


「諦めろよ!」


 レイナが笑い、俺も笑う。


 ……本当にもう、めちゃくちゃだ。


 文化祭では宇宙に行き。

 体育祭では教師が競技に乱入。

 そして修学旅行では、魔法が爆発した。


「………」


 俺はみんなを見る。

 おかしくて。

 うるさくて。

 まともな奴なんて一人もいなくて。

 こんなの、絶対に嫌だと思っていた。

 ……でも。


「……こんな日常も、悪くないな」


 そう思った。


 『俺以外のクラスメイトが全員おかしい』

 そんな毎日が、今日も続いていく。

 ――たぶん、これからも。


 完。

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