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【56】ハッピーエンドのその先



――――数年後


大公兼近衛騎士としてたくさんの功績をたてたアーサーは副団長に任命された。


副団長のひとりが退役となったためその後任を任されたのだ。


「今は少しずつ副団長の仕事も引き継いでいる。遠征に行く機会は減ってしまうが後輩たちも育ってくれたからな」

大公邸で副団長の仕事を終えてきたアーサーを出迎える。


「そのようだ。俺も指南に出掛ければ逞しく成長してくれたと思うよ」

リュカさまについてローズナイト公爵家の騎士に属しているとはいえ、完全に近衛騎士を退団したわけではなく団長からは後輩たちの指南を任されている。

俺に憧れてくれる子たちのために、まだまだ俺も頑張らないとな。


「リュカさまとアッシュももう来てる。それからシェリルとリュヤーは……到着したらしい」

竜の翼がはためく音が聞こえれば、辺境から遊びに来てくれたシェリルとリュヤーが小さな男の子を抱っこしながら来てくれた。


「アルトもずいぶんとおっきくなったなぁ、シェリル」

「お陰さまで」

くすりと微笑むシェリルの腕の中にはリュヤーとよく似た竜人の男の子アルトがいる。


「最近は銀竜さまも可愛がってくださって」

あのジジイ、まさかの孫可愛がり系だったとは。うちのばあちゃんも俺やナルを可愛がってくれたし、ひ孫もな。


シェリルたちは辺境で暮らしつつも時折こちらに遊びに来てくれる。夏は共に公爵邸跡に花を手向けることも忘れない。

あそこはいつまでも俺たちにとっては大切な場所だから。


そしてこれからは建国祭。シェリルたちが遊びに来てくれたのもそれだ。

あの建国祭の事件以来毎年落ち着いている。民は祭りを楽しみ貴族たちも建国を祝い祝杯を上げる。


俺たちは今年は……子どもたちも連れてみんなで町歩きをしつつ楽しむつもりだが。


「今日は親父やナルたちからも土産を持ってきた」

俺の好きなサイダーや辺境の野菜や果物のようだ。秋は食べ物が美味しい季節だからありがたいな。


「サンキュ。ナルたちは元気?」

「ロシェが家を継がない分、跡取り教育も頑張ってるよ」

「ふふっ、なら良かった」

俺はアーサーと結婚するから男爵家をよろしくなと伝えたら思わずふらついていたが、将来は俺の分も男爵領の運営を頑張ると言ってくれた。


土産を大公邸の侍従たちに手渡せば、早速厨房に届けてくれる。


リビングスペースに入れば、成長してすっかり丈夫になったリュカさまが手を振ってくれる。その膝の上には俺とアーサーの息子のフィーがいる。

アッシュもなかなか子どもの相手も慣れたようで遊んでくれていたようだ。


アルトが来たのが分かるとフィーが『!』となり、リュカさまがカーペットの上に下ろして上げればとたとたと近付いていく。


シェリルがアルトを下ろしてあげれば、2人は久々の再会を喜んでいる。


くんくん……アルトがフィーの項をかいでいるようだ。


「昔のアーサーみたいだなあ」

フィーはオメガで俺や母さんに似て竜人の特徴はないがばあちゃん曰く確実にその血は遺伝しているとか。


「懐かしいな。ロシェもあのようにとても可愛らしくて」

「いや、何いってんの」

そう告げれば周囲から和やかな声が漏れ出る。


俺たちも席に着き子どもたちもソファーに座らせてあげれば仲良く手をつないで笑い合っている。


次は大公令息と公爵令息。家格は釣り合っているしシェリルたちも俺たちも彼らに他の婚約をだなんて考えていない。


フィーも俺ほど運命に反抗しなければ何よりだが。いや、親である俺たちがそうしてやらにゃあなあ。


「あのね、ロシェ」

「はい、リュカさま?」


「ぼくたちも、そろそろ……って思ってて」

リュカさまがアッシュと嬉しそうに顔を見合わせる。

な……何ですとーっ!?


「それはいい。甥っ子か姪っ子かまだ分からないが楽しみだな、ロシェ」

「リュカさまの子リュカさまの子絶対可愛い絶対可愛い絶対可愛い!」


「あの……ロシェさん。私似の可能性は」

「リュカさまの子なら構わず溺愛するぅっ!」


「ロシェったら」

「相変わらずリュカさまが大好きなんだから」

シェリルが苦笑する。


「溺愛が激しすぎたら……その、エレナに報告するか?」

とアッシュ。

「やめろ、おい。この後来るんだから」

リュカさまの降嫁に合わせてエレナさんとイルも同行した。

トーマスは老い先短い自分よりもイルの方がいいだろうとイルを推薦し、今は王宮で後輩たちの指導をしつつ半隠居。しかしリュカさまの子が生まれたら絶対来るな。きっとトーマスも孫溺愛型だ。


噂をすればなんとやら。エレナさんとイルも到着したようだ。


「シンジュさんから異国の珍しい菓子をもらった。お前たちも食べるか?」

同じエルフ仲間だからか、シンジュの面倒見のよさのお陰か。いつの間に仲良くなってんだ。


エレナさんとイルがお菓子を広げれば子どもたちが興味津々に見ている。


「子どもたちは可愛いな」

「……エレナさん?」

ふとエレナさんが呟く。


「でも暴走したらぶっ叩く」

「容赦ねえな」

「お前が言うか」

エレナさんの言葉にアッシュが意味深に頷く。お前な、今度の近衛騎士の指南でしごくぞ。


やがて料理が運ばれてきて、白いサイダーも入れてみんなで乾杯だ。こうしてみんなで乾杯できるのもなかなかいいなあ。


フィーとアルトも仲良くサイダーをちぴちぴと飲んでいて可愛すぎる。


料理を楽しみつつ、食後はシンジュの差し入れのお菓子を楽しむ。


「あれ……これってデゼルトの……」

まさかカヤハンも関わっている?


「お菓子が民衆に出回るくらいは落ち着いてきたようです」

イルが微笑む。もうデゼルトに戻ることはないそうだが、生国の安定は嬉しいことのようだ。


ヤタやアルヤもそろそろうちに訪国出きるほどには落ち着いてきた。

そうなればユラさまもきっと喜ぶだろうなあ。確実にあの国も変わりつつある。


変わらないものもあるが、それはそれでよきものだ。

例えば……。


「あの、今夜は久々にオメガ会はどう?」

リュカさまが告げる。

「いいですね!」

とシェリル。

「そうするか~~。あ、子どもたちはアルトがアルファでも来ていいぞ~~」

「うん!」

アルトがこくんと頷く。


「ちょ……それはそのっ」

アッシュが言いかけるがアーサーが止める。


「男には時に忍耐も必要だ」

「そうそう、酒でも飲みながらね」

「ええぇっ!?」

いいじゃんいいじゃん、久々にさあ。ローズナイト公爵家でやると団長が覗きに来るから追い返すの大変なの!そのあと団長が夫人に怒られるがな。


「イルも今日はおいで」

「しかし……」

「公爵家じゃないからへーき」

大公邸は自由な風潮なのだ。


「久々にオメガ話を語り合おう」

「分かりました。ロシェさまのお話聞きたいです」

「ならそうしよっか。エレナさんも来る?」


「いや私を巻き込むな。私は女子会をしてくるから」

エレナさんはエレナさんで後輩の女性騎士で女子会を催しているようだ。


「そっかぁ。でも、何だかんだで楽しいな」

「そうだな。あの頃頑張って良かったと思う」

とアーサー。それゆえに今に繋がっている平穏。今日はオメガ会として……明日は久々に夫夫の夜にしてやるのも悪くない。

そして建国祭も目一杯楽しむのだ。今度はリュカさまたちも一緒にな。



【完】



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