【55】アーサーの帰還
――――王城の庭園に足を踏み入れる。そういや前にもここでアーサーと話をしたな。
「アーサー」
その後ろ姿を呼べば、待ち人がこちらを振り向く。
「ロシェ」
辺境の厳しい冬を越したアーサーはどこか一皮剥けたようにも見える。成長期ってのもあるだろうが。
「お帰り、アーサー」
「ああ、ただいま。ロシェ」
「遠征は無事に終わったようだな」
「そうだな。陛下にも帰還の報告を済ませた。辺境伯も今回の遠征は感謝してくれた。それから……シェリルのことも」
「……それは」
シェリルが辺境に向かったのはアーサーとの婚約解消がきっかけだ。そしてシェリルは王妃さまの紹介で母さんに師事することになったのだ。
「シェリルのこと、改めて礼を言う。原因を作った俺が言うのも変だが……シェリルは自分の夢を叶え番と幸せになれた」
「なら贖罪は果たされたんじゃないのか?」
「……そのっ」
「お前はシェリルの幸せを見届けた。そしてこれからも見守っていくつもりだろ?」
「もちろん。そのためにも俺はこの国のために王子として尽くしたい。これからは臣下に下ることになるが、臣下として陛下や跡を継ぐ兄上のために。俺はこの春に18になる。成人を迎えたら臣籍に下る。その時にロシェにもついてきてもらいたい」
「……」
「もちろんロシェは騎士を続けたければそれでいいし、成人して降嫁するリュカについて行ってもいい。俺はロシェの選ぶ道に反対をしない」
「甘いな、お前は。それならお前と番う必要もない」
「あなたの道を遮ることが番になることではないから」
「……」
「俺はあなたを愛している。だからロシェと番いたい」
愛……か。
「どうしてもか?」
「どうしてもだ」
アーサーはそのためにずっと努力した。迷いながらも失敗しながらも逞しくなった。
最初は破滅フラグが立ちまくっていてそれから逃れるためだったのに。アーサーは思ってもみなかった成長を遂げてくれた。
「分かったよ」
俺の完敗である。
「……ロシェ」
「番になろう、アーサー」
「ああ……ロシェ。ありがとう」
アーサーが幸せそうに俺を抱き締める。ふわりと舞うアルファの匂いはどのアルファといるよりも安心を運ぶもの。
それは運命だからかもしれない。けれど俺がアーサーを好きだと思うのは。番になろうと思ったのはアーサーだからだよ。
※※※
――――その春、成人を迎えた第2王子アーサーは国王陛下より大公の爵位を賜り臣籍に下った。
近衛騎士団に身を起きつつも国のために各地で多くの功績を残す。
彼が番に迎えたのはオメガの騎士である。
彼の番となったオメガの騎士は変わらず近衛騎士として第3王子に仕えながらも多くの後輩たちを育て上げ、第3王子の降嫁と共に現役を退き降嫁先に同行したと言う。
それでも彼らが夫夫であることは変わりなく、アーサーが王都に帰還すれば、城下でたまの夫夫の時間を楽しんでいる姿を見かけることあると言う。




