落花盛ん 2
明日のあたしへ
もうすぐ桜が咲きます。
今年の桜は、多分ムリだね。
だって、もうすぐ3ヶ月が来るもん。
最近、前みたいに痛みがないのは、あたしの身体に最後が近づいているから‥そんな気がします。
ダメダメ、明日のあたしにはこんな事伝えたいんじゃない。
どうしよ?
なに書こうかな。
考えたら、あたしの人生ってあんまりなにもないんだよね。
幼稚園から高校卒業するまで‥
特にこれといって、何にもなかったなぁ。
そりゃあ、少しは楽しかった事、嬉しかった事、悲しかった事あったよ。
でもさ、あんまり記憶にない………
もしかして、ガンのせいで忘れちゃったのかな。
今のあたしに残ってるのは、所さんと出会ってからの四年間と………
一哉さんを初めて見かけてからの1年弱の気持ちだけかな‥
あとは、お父さんとお母さんの事故の時の事‥‥
書こうかなって思ったけど、思い出すと悲し過ぎて書けない。
おかしいよね、涙は出ないのにすごく悲しい気持ちは溢れるんだ。
ちょっと照れるけど、一哉さんの事書こうかな。
あたしの初恋は、小学五年生の時……
同級生の橋元真介くん♪
サッカーが得意で、頭も良くてクラスの人気者。
結局、見てるだけでなにもなかったけどね。
そして、二度目が一哉さん。
蘭ちゃんと散歩してるとこ見かけて、いいなぁって。
ただ散歩してるだけなのに、優しい空気が流れててなんだか素敵だった。
時々目があったような気がするだけで、心臓が飛び出しそうなほどドキドキしたなぁ。
それが、初めてお話しする事ができて……
やっぱり、素敵な人だった。
一哉さんに、どんどん惹かれていく自分がよくわかった。
もうすぐ死んじゃうって事も、忘れるくらい。
最後の最後に、あたしに思い出をくれた一哉さんに「ありがと」だね。
もう会えないって思うと、切なくてたまらなくなるけど………
会っちゃいけないんだ。
これ以上一哉さんに会うと、あたし死にたくなくなっちゃうから。
もう会うのはよそうって 、決めたんだ。
一哉さんが言ってくれた、桜を一緒に見ようって言葉‥嬉しかった。
でも、約束できない自分が悲しかった………
あっ!所さん!
起きてきたんだ。
おはよう、寝坊助の所さん♪