三分咲き 5
ハッハッハァ♪
バレてしまったか。
もう少し、話しを聞いてからにしたかったんだが。
ど、ど、どうして………
あの店の、新刊本のコーナーがお気に入りなのは本当だよ。
そうなんですか?
ああ、作家にとって作品は子供と同じだよ。
あそこに置いてある本は実に幸せそうだ。
見ているこちらまで、幸せな気分になってくる。
そんなに仰って頂く程のもんでは‥ないと……
いや、本当にそうなんだ。
前から一度あのコーナーを担当してる人間と、話がしてみたかったんだ。
お店には申し訳なかったが、わがままを言わせてもらうのに丁度良い機会だと思ってな。
そんなの、お気軽に聞いてもらえれば……
まあ、なかなかな。
こう見えて、シャイなもんでな。
はぁ〜〜♪
旦那様、一哉さんがお見えになりました。
おお、やっと来たか。
じいちゃん、おはよう。
一哉、遅かったじゃないか。
あっ!一哉さん!!!
あれ!?響子さん、どうしてここに?
なんだ、二人共知り合いか。
じいちゃん、僕に会わせたい人って……
そう、この神山さんだ。
本屋の店長に聞いたら、若い女の子だとか言っておったからな。
是非とも、一哉にも会って欲しいと思ったんだ。
それが、響子さんだったって訳。
そうだ!
このお嬢さん、なかなかの才能の持ち主だ。
残念だが一哉、お前よりよっぽどな。
じいちゃんがそんなに他人をほめるなんて珍しい
えらい惚れ込みようだね。
この人には、作品を見切る力がある。
数ある新刊本の中から、わしの作品を選ぶあたりも鋭い。
なんか、危なっかしくなってきたな♪
バカもん!
わしは、冗談なんかで言っておらんぞ。
わかったよ。
お前もいい年をして、今だに彼女の一人もおらんとは、情けない。
せめて、この神山さんのような才媛を紹介してやろうと思ってだな。
残念だけど、じいちゃんに紹介してもらう必要はなかったみたいだね。
ま、まあ、それはだな‥
響子さん、この頑固なじいちゃんの相手するの疲れただろう。
いいえ。全然♪
まさか、あのミステリーの作家の先生に会えるなんて。
だってさ、じいちゃん♪
な!わかったか一哉♪
あのぉ〜〜〜
あら、音無くん。
いたの?
ひでぇ〜〜!
俺はだなぁ、どうなることかと心配してさぁ。
響子さん、こちらの人は?
あっ!ごめんなさい。
本屋のバイト、新人の音無くん。
はじめまして。
はじめまして、沖田です。
よろしく。
あのぉ、沖田さんって大学の四回生で、出版社に就職が決まってたり?
は、はい。
ちょっと、音無く……
それから、もしかしてアボガドと納豆が好きだったりしますか?
アボガドはまあ、でも納豆は好きですけど……
それが、何か?
いや、いいんです。
ちょっと聞いただけですから……
はあ………
俺、負けませんから。
え?なに、なんの事。
響子ちゃんの彼氏って、さっきの沖田さんでしょ。
あ、え、う、うん………
でも、俺の見たところでは、まだ付き合ってるって感じじゃぁ……
それなら、俺にもまだチャンスはあるかなぁって。
どうかな?
ホント、冷たいですよね響子ちゃんって。
でも、そこがまた闘志をかきたてられるって言うか。
俺、絶対に負けませんからね。
はぁ………………




