三分咲き 3
響子さぁ、ちょっと頼まれてくれないか。
うん。なに?
ほら、あそこ散歩してるチワワいるだろ。
あっ、あの白黒の子ね。
パーティカラーってんだよ。
あいつ、どうやらぎっくり腰みてぇだ。
ええ〜〜っ!
ぎっくり腰って……あの?
そうだ。
あいつ、ムリして散歩してるけど、ありゃあ随分辛そうだ。
そういえば、なんだか歩き方が変だよね。
どうも、飼い主気がついてないみたいだからさ、お前教えてやってくれよ。
いいけど、なんて言えばいいかなぁ……
なんか適当に、頼むわ。
あのぉ〜〜すいません。
ちょっといいですか?
は?なんでしょう。
お宅のチワワなんですけど、ぎっくり腰みたいですよ。
はあ?あなたは?
獣医さんですか。
いえ、ただの本屋さんなんですけど………
うちの所さんが、そう言ってるんで‥
なにそれ!
何か売りつけようとか、そういうのでしたら結構です。
いや、そういうのじゃあ。
とにかく、一度獣医さんに連れて行ってあげて下さい。
は、はぁ…わかりました‥‥
響子、お前さぁ‥
もう少し上手く言えないのかねぇ。
ダメだった?
まあ、かまわねぇけどよ。
だって、どう言っていいかわからなかったんだもん。
そうだな。お前に期待した俺が悪かったよ。
けど、ぎっくり腰ってさぁ。
犬にもあるんだ!
おう!
人間のかかる病気は、たいてい犬にもあるぞ。
さっきのチワワは、多分七歳位だからなぎっくり腰位なるさ。
そうなんだぁ〜!
ぎっくり腰かぁ。
所さんは大丈夫なの?
ばか野郎!
おれはまだ、ずっと若いっての。
そうだね。腰を使うことなんてないもんね♪
響子、お前下品!
そんな事言ってると、お嫁に行けないぞ。
えっ??
なんの事?なんで下品なの!
わからなきゃ、いいよ!
響子さぁ〜ん。
あっ!一哉さん。
蘭ちゃんも一緒だぁ!!!
やっと今日、退院の許可が出てね。
まだあんまり歩かしちゃいけないんで、抱いてなきゃならないけど。
蘭ちゃん、良かったね♪
うん、すごく元気でさ。
下りたがって大変なんだ。
[へっ!やっと退院かよ。まったくちっちぇえ体でムリしやがって。]
所さん‥良かったね。
憧れのマドンナが帰ってきて。
[お、俺は別に‥‥メス犬くらい他にいくらでも]
あ〜ぁ、ムリしちゃって。
響子さん‥‥あの……
あっ!ごめんなさい、
また、所さんとお話し中でしたか?
あっ、は、はい。
兄貴達も心配して、今日は早く帰ってくるらしいんで
今日はこれで。また明日!
はい、また明日ね♪
うっ……うぎぃ………
かっ……かはっ‥‥‥
響子!!
だ‥だ‥‥いじ……ょう……ぶ
つぅ………が‥がはっ‥
響子!ホントにお前!!
だ‥いじ‥‥ょうぶ‥‥だって………ば
あぁ〜〜!
俺はどうして犬なんだ!
俺の響子に、響子に何もしてやれない……
所さん……あり‥が‥と
ホントに……だい‥じょう……ぶ‥だから……
くそっ!
もう時間がなさそうだ!
なんとか、間に合ってくれよ!!