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皇太子の婚約者候補から外されたので、完璧令嬢は本性隠すのやめました~捨てられた者たちがもう一度、意味を見つける物語~   作者: 春月もこ
第1部「決められた人生」

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第1話「解放」

お知らせ:文章表現を大幅に改変しました。(内容は変わっていません)

 ───1年前。

 レティシアは、皇太子妃候補から外された。

 泣いた。

 食事も喉を通らなかった。

 眠れなかった。

 人生が終わったと思った。

 けれど今なら分かる。

 あの日、失ったのは人生ではなかった。




「レティシア!危ない!後ろだ!」

 え?後ろ?今、前の男を倒したところなのに?

  ルシアンの叫び声に後ろを振り向く。

  ほんとにいた、しかも真後ろに......!

 ギラついた目。

 男の剣が凄まじい速さで振り下ろされる。


(見えた!)


 身をひねってかわす。

 そのまま男の手首へ蹴りを放った。


「うわっ!...くそ!」

  私の動きについて来れないはず。

 素早い動きは剣の師匠のお墨付きよ。

 ...滅多に褒めてくれない師匠の...ね!


「えいっ!」

 男の剣を蹴り上げ。男の剣を蹴り上げる。


 あれ?剣が私の方に落ちてくる…。危ない!とっさに身をひるがえす。


 ―――ハラリ。

自分の方へ落ちて来た剣をまさに紙一重で避けた。しかし、服と一緒に胸を締めつけていたさらしが切り裂かれてしまう。


 危なかった。もう少しで怪我をするところだった。

 あら、でも...!む、胸を...隠さなきゃ。


「うおおぉ!」

  ―――キン!


 危なかった……。胸を隠してる隙に打ち込まれてしまった…。

 ほんのわずかに身体をひねって避けられたけど。


「あぁ......」

  今度は顔と頭を隠すために巻いていたバンダナが、切られてしまったみたい……。


 ―――サラッと、レティシアの絹のような銀髪と美しい顔立ちがバンダナの下から現れる。レティシアの容姿に一瞬、男が見惚れる。

 

「......っ!」

  いまだ!

 ───キン!!

 ───キィィン!!


 よし!今度こそ剣を弾いた!


「くそ!」


 はぁ、逃げ足の速い人。

 剣をはじいただけでもうあんなに遠くへ逃げて行ってしまった。


「はぁ…危なかった……」


 はっ!そういえば、み、見られたのでは?

 どうか二人がこっちを見てませんように...!


 ……こっちを見てる。

「見られたのね」

 しっかり見られていたみたい。

 でも、あら、二人とも固まっている。


 ルシアンは…もうすでに賊の一人を拘束している。

 でも、彼は驚きというよりもむしろ...。

(ヤバ...!どーする!?)

 って顔をしている。

 まぁ、ルシアンはひとまずいい。幼なじみだから。

 私が剣を使えるってことも、この性格も全て知っている。

 で、問題はアルフォンス殿下のほうだけど...。

 

 ああ、彼もしっかりこちらを見てるわ。

 賊の上に剣を突きつけて立ちながら、固まっている。

 見られたのね。殿下には隠していたのに...。

 ついに知られてしまった。

 もう、開き直るしかない。

 

 皇后候補の完璧令嬢。

 レティシア・ヴァレンティーヌ。

 私は、かつてそう呼ばれていた。

 皇后候補として失敗を許されない日々。

 常に優雅で、常に美しく。

 そして常に、完璧でなければならなかった。

 

 彼は、ルーヴェル帝国第一皇子。

 アルフォンス・ルーヴェル。

 十年以上想い続けた憧れの人。

 一年前に失った初恋の相手。


 彼にはあまりにも衝撃的すぎたのかしら。

 信じられないものを見るような顔をしている。


 ……まずはこの服よ!

「ルシアン、あなたのその上着を貸して」

 ルシアンにいつものように話しかける。

 偶然とはいえ、服もさらしも切られるなんて。恥ずかしすぎる。 


「い、いいよ」

 ルシアンは言われる通りに自分の上着を脱ぎ、貸してくれた。

 気を遣って、はだけた服を見ないようにしながら……。


「それよりご挨拶は?良いの?」

 ルシアンに挨拶を促されてしまう。

 そうよね、ご挨拶をしなければ。


 はぁ、と小さく息を吐き、覚悟を決める。

 殿下に抑えられた賊は、すでに気を失っているようだった。


 殿下、いつまで固まっているんでしょうか。

 そんなに衝撃的でしたか、私の姿が。


 ゆっくりと殿下に近づき、そして帝国式の丁寧なお辞儀をする。  


 ───磨き抜かれたカーテシー。


 着ているドレスはボロボロで血がついている。

 かつての豪華なドレスとは全く違う。

 自分でも苦笑いがでそうになる。滑稽な姿でしょうね。


 それでも見事な上級貴族のお辞儀をして見せるわ。

 飛び切りの笑顔で。


「殿下、ご無事でしょうか」

 

 ……変わらない。

 あの頃と同じ金色の髪。

 アイスグレーの瞳。

 会いたくないと思ったことなんて、一度もなかった。

 

 ───沈黙が落ちる。


「今の剣術...」

 剣術?

 顔を上げると、殿下は私をじっと見つめている。


「……誰だ」

 ……え? 誰だって、ですって?まさかお忘れですか?殿下!


「そなたは誰だ」

【主要登場人物です】

■ レティシア・ヴァレンティーヌ

  この物語の主人公。絹糸のような淡い銀髪で紫色の大きな瞳をもつ公爵令嬢。 

  未来の皇后候補として厳しく育てられ全てに秀でた“完璧令嬢”・・・だったが?


■ アルフォンス・ルーヴェル

  ルーヴェル帝国の第一皇子で次代の皇帝として期待される存在。

  金髪でアイスグレーの瞳をもつ端正な顔立ちをしている。


■ ルシアン・エヴラール

  隣国であり友好国であるラヴィエール公国の小公爵。レティシアの幼なじみ。

  軽薄そうで何を考えているかわからない。黒髪の危険な色気があり女性からもてる。 

  レティシアの本性を知る数少ない人物。

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