第42話 Aランク誕生
再びギルドへ戻り、今日はどんな依頼を受けるか考えていると、受付嬢から声を掛けられた。
何でも、昨日話していた、格安マイホームの件。
……すっかり忘れていた。
応接室へ招かれ入ると、ギルド員とは違う服装の中年男性が椅子に腰かけていた。
俺を見るなり立ち上がると、早速話しかけてきた。
そして、実際にどういう現地へ行く事となった。
現地に向かう途中、どういうものが家が良いか、予算はどのぐらいか等と聞かれたが、正直この人が思っている以上に俺の予算はないだろう。
だからどういう家が良いかという問いにも、マイホームなら何でも良いと答えておいた。
「この通りを真っ直ぐ行くと、領主の館へ続きまして――」
今度は、道案内までしてくれるが、流石に街の事は知っている。
男はそんな案内をしながら、通りに面した建物をひとつ指し、今空いているものの内のひとつだと教えてくれた。
「表通りで騒がしですが、冒険者の方々でしたら、直ぐに出られる、このような場所の方が――」
と、強く勧めて来た。
見るからに高そうな建物である。
以前見つけた中古物件の2倍ちょいの横幅があるし、見た目も豪華だ。
それに表通りに面していると、高いイメージがある。
「それで、この建物はいくらぐらい?」
「そうですねぇ~、フリート様の場合ですと、100万Gと言ったところでしょうか」
100万G!?
前の中古物件より遥かに安く、しかも立地も良く、建物も豪華!!
ついでに、普通の人が買うといくらかも聞いてみたところ、
「普通の方、富豪とかですと、まぁ~そうですね~、安くても3000万Gと言ったところでしょうか?」
ゴールド勲章の効果絶大!!
ただまあ、100万G無いんだけどね。
俺がどうするか悩んでいると、一般の人と違い、俺たちがこの家を使う時は、あくまでも借りるという形になるらしい。
何が違うのかを聞くと、俺たちがこの建物に住んでいても所有権は領主にあるため、他の人に贈与も売買も出来ないということ。
ふむ、確かに100万Gで買ったものを富豪に3000万Gで売りつけたら、それだけで儲かってしまう。
じゃあ、この100万Gって何なのか?
「補修料です」
補修料って何?
って聞くと、住んでいると建物のは多少傷付いたりするため、それを直すための金ってことらしい。
それでも、こんなでかい屋敷のようなところに、追加家賃もなく100万Gで住めるなら、住みたい!
だが、金が足りない!
ギルド長に相談しよう。
そこまで考え、一旦ギルドへ戻る事にした。
リリーにゲートを使わせると、
「ほぉ~、これが噂のゲートですか」
どうやら、初めて見るようだ。
俺が先に入ると、続いて案内人が出てきた。
まあ、宿屋の前なんだけどね。
ギルドへ戻り、受付嬢に頼んで、ギルド長を呼んでもらう。
ギルド長に事情を伝えると、任せろと言ってくれた。
彼と案内人が何か話しているが、上手く話がまとまったのか、お互い礼を言った後、案内人は帰って行った。
一体何を話したのか聞くと、俺たちの金はギルドが預かっているため、直ぐに金を用意できるか分からないから、数日待って欲しいという事だった。
もちろん手形なんかで支払いも出来るが、俺が手形を嫌い、現金で渡したいという男だという事で相手も納得したらしい。
「そういう訳だ、俺は今日から手形嫌い、現金な男って事でよろしく」
「隊長!かっこいいです!」
「フリート様、とっても現金ですっ!」
「リリーも現金欲しいです~」
みんなノリはいいが、ちゃんと理解出来てるのだろうか?
ちなみに、受付嬢にこっそり、ギルドから金を借りるってのは出来るのかどうか聞いたところ、それは無理と断言されてしまった。
ギルド運営自体、結構な金がかかる上に、冒険者はいつ命を落とすか分からないため、金を貸せない。
仮にそれを認めてしまうと、他の冒険者にも金を貸す事になってしまう。
そんな訳で、普通に依頼をこなし、金を稼ぐ事にした。
「隊長、あとどのぐらいで100万Gに行きそうですか?」
討伐依頼を受け、目的地に向かう途中、そんな話が出た。
さっきギルドへ預けてある金を聞いたところ74万Gだった。
手持ちが2万ちょいだから、
「大体24万Gだな」
1日5万Gと考え、5日間で届かせる予定だ。
もちろん今の俺達なら、報酬額8万Gとかを受けても達成できるだろうが、なるべくギルドからお願いされた依頼を優先したいと考えていた。
だから1回あたりの依頼報酬を低く見積もって、5日間。
俺の説明を聞いて、みんなも納得し、着々と依頼をこなしていった。
――3日後。
今日もギルドからの依頼を受けようとしたところ、
「よう、フリート!」
いつものようにガロンが声を掛けて来た。
彼が声を掛けてくるときは、必ず何か新しい情報がある時が多い。
表情は明るいから、良い情報なのだろう。
一体何かと思って聞いてみると、
「オンカイム隊がAランクになったぜ!」
――なにぃ~!?
真っ先にギルド名簿で確かめると、確かに新しいページのところにAランクが追加され、オンカイム隊のメンバーが記載されていた。
ついに…いや、実力から考えれば当然か。
「おいおい、まだ話は終わってねぇぜ。あれを見ろ」
今度は、ギルドの窓口あたりを指すも、特に変わったところは無いように見えるが?
「序列が6位になってるだろ」
言われて気づく!やはりオンカイム隊がAランクになったからか?
いや、それなら、序列4位になるはずか?
確か国内のAランク持ちの都市が3つしかないはずだからだ。
等と考えていると、
「そしてこの俺様!ガロン隊は、今日!Bランク試験を受けるぜ!!」
他の冒険者たちもいる中、ギルド内で高々に宣言をした。
ついにガロン隊もBランク試験を受けるかっ!!
受かるといいな~。
アナライズで確認すると、数日前と同じLv38だったが、試験内容次第か。
「頑張れよ!」
「おう!きっと合格して戻ってくるぜ!」
それだけ言い残し、ギルド嬢のところへ行き、序列が上がった理由を聞いた。
どうにも、今までこなした依頼を提出し、やっと反映されたということだった。
防衛戦やオンカイム隊がAランクというのは関係なかったようだ。
「でも、オンカイム隊がAランクの依頼をこなすと、街としての実績になるので、もっと序列が上がると思いますよ」
へぇ~、ギルドの実績ではなく、街の実績なんだ。
取り合えず今日も依頼を受け、無難にこなし、余った時間をギルド2Fで過ごしていた。
「フリート様はどっちだと思いますか?」
「気持ち的には合格して欲しいが、正直きついだろうな~」
俺たちはここで、ガロン隊が戻って来るのを待っていた。
どうしても合否が気になるからだ。
気が付くと、周りの席にも、他冒険者達が集まってきていた。
意外とガロン隊は慕われていたんだろうか?
「フリート、君もガロン隊が気になるのか?」
「ああ」
リアギーが声を掛けてくるが、てっきりライバル意識が強いと思っていたが、そうでもないのだろうか?
気になって、リアギー隊はBランク試験を受けないのかと聞くと、
「Bランクにはなりたいが、Cランクの高報酬の依頼ですら、こなせないと判断するのも多いからな、まだ受からないと思っている」
なるほど、そういう考え方もあるのか。
一般的に、高報酬の依頼内容と、1つ上のランクの一番簡単な依頼内容は、大体同じぐらい。
彼の考え方は、とても理に適っている。
そして日が暮れようとした時、ギルドのドアがバンと開き、ガロン隊が入ってきた。
一同の視線がガロン達に向けられる。
そんな俺達に目もくれず、受付に向かって何か話をしているが、当然聞き取れない。
だが、受付嬢が一度下がった後、ガロン達は俺達の方を向き、
「うおおおおお!!受かったぞぉぉーーー!!」
と、大きな声で叫ぶ!!
それを皮切りに、ギルド内が歓喜に包まれた!!
よくあのレベルで受かったものだっ!!
いや、よく見ると、ガロンもその仲間もボロボロだったっ!!
どんな依頼内容だったか分からないが、ガロン隊が受かって本当に良かったと、心から思えた。
小説家になろうへの投稿は、この話で最後となります。
43話以降(第二章)は、カクヨムで引き続き投稿していきます。




