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16.UFOの噂

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氏馬市(しばし)観願山町(かんがんざんちょう)の定点よりX64Y9の地点に「UFO」の目撃情報あり


調査を開始せよ


神谷とは年齢は違うが、この組織の同期だった。

今では随分差が生まれてしまったが…しかし俺を哀れに思っているのか、何かと「餌」を分けてくれている。

「この調査を成功させれば上層部も君のことを無視するわけにはいかないだろう。なにせこれにて、組織とNASAは21対20で半年ぶりに勝ち越せるのだから」

「…俺は欲がないんだよ。もう何もかも、失っちまったからな」

露骨に言葉に窮している神谷を無視し、俺は電話を切った。


UFOは観願山の弗谷(ふったに)という場所で目撃されている。

情報によればそれは飛行どころか着陸さえしているとのことだった。

俺は最低限の装備を携えて、山道を登って行った。

弗谷に到着したところで仮眠を取り、UFOを待つ。

上級調査員に昇格になったのも、そういえばUFOの編隊の一機を狙撃で捕獲した功績だった。

そのご褒美は貯金と薙慧(ちさと)の動物屋敷の玩具に消えてしまったが―――

闇より黒い無の重空に、娘が浮かんで消えた。

「…」

こういう時、周りにあるものを手あたり次第ぶっ壊して回れないというのが、任務のつらいところだ。

一時間後、弗谷の上空は奇妙な黄緑色の淡い光に染められた。

(来たな)

光はやがて木々の隙間に落ちていく。

俺はUFO観測用の望遠鏡を覗き込んだ。


逆さまの人間。

一言でいえばそれだった。

頭頂を下に滑るように移動する「それ」は、普通の制服を着た女子学生のように見える。

ただそれは吊り下げられているような状態ではなく、ポスターを上下反転して貼ったような不自然な「逆さま」だった。


yンfhmw(tムウッメsm5ミオ)pyツfm、;・¥(jィク、myfdm)

人間の声と金属音を混ぜたような奇怪な音が、ここまで聞こえてくる。

俺は望遠鏡に内蔵されているカメラを起動し、録画を開始する。

。ィウfdスs、7イ(yl、イイl。オイh)

オトガクウキヲツタワルデモナク、デンパヲジュシンスルヨウニ「キャッチ」シテイル。

(ッ!?)

kjfystmy、(fhオマエnガウg)

y;lf。。5オフ;(ンczオtrチロ!)

オトガイミヲトモナイハジメテイル!

yfオマh、エガ(オマytエ76ガ)

オチロォォォオォォ(8dオチlhロォォオ)!」


「初対面でいきなり『お前』か。いかにも侵略者らしい」

俺の耳にはもう、何も聞こえない。

異常を感知したセンサーが端末に指示を送り、イヤホンから消音モスキートを流したようだ。

「だが…残念だな、道具と権限さえありゃこの場でブチ殺してやれるってのに」

気がつくと彼女の微笑を浮かべた横顔に、4つほどの黒々とした穴が蠢いていた。



***********************************************************



「ふ、それだけではないよ。あのモスキートは精神汚染に対しても強力な耐性を与えられる組織の発明品さ」

神谷は俺の女房に火をくれてやろうとして、しかし俺に遮られてジッポをポケットに入れた。

「アレはどうした?」

「問題なく確保した。まあ聞いた話じゃ、随分暴れたようだが」

興味もなかったが、それくらいしかこの男と話すことはなかった。

俺は溜息を吐いてから、しかしもう一つ聞いた。

「…なあ、『落ちる』って」

「宮久」

神谷は強く言葉を制した。

「組織の裏ルール、だ」

…俺は何も言わず、席を立った。


組織の裏ルール。

「宇宙絡みの件に、必要以上に首を突っ込んではいけない」。



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