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事件

久々の更新となります。

長らくお待たせしました。

1986年6月6日金曜日、この日は何か特別な事もなく、俺は淡々と授業をこなしていた。


四時間目は社会の授業である。担任の板垣先生が日本の農業についての授業をしている。俺は教科書を見ながら、あまりにも簡単な内容に退屈していた。


とりあえず、ノートに授業の要点を箇条書きするのだが、退屈していて集中していなかったのか簡単な漢字を書き損じていた。


「くそっ!」


俺は単純なミスをした自分に腹を立てながら書き損じてしまった漢字を消しゴムで消した。消しゴムがずいぶん小さくなってしまい、そろそろ新しいのを買わなければならないなと思った。


自分の席が最前列の中央なので、居眠りやマンガを出して読んだりは出来ない。結局は真面目に授業を受けるしかないのである。


退屈しながらも、どうにか授業を乗り切ってようやく昼休憩となった。


給食の献立はコッペパンにマーガリン、煮込みうどん、グリーンサラダである。


こんな給食だから、すぐに食べ終わり誰かと遊ぼうかと思ったが、仲の良いジュンこと山口淳平は給食当番で後片付けがあり遊べない。それならばとイケこと小池伸二を探したが、既に誰かと遊びに出たようである。ちなみに、フジダイこと藤井大介は風邪をひいたらしく今日は欠席していた。


「アンケートの提出期限は今日までです。まだの人は今すぐ書いて出して下さい。出せる人は先生の机の上に置いて下さい。用紙を家に忘れた人は先生の机に予備の用紙があります」


学級委員の船場哲之助がクラス全員に聞こえるように声を張り上げた。船場が言うアンケートとは、先に行われた運動会についてのアンケートで、良かった点、改善してほしい点などの意見を述べるというもので、児童の声を聞いて来年以降の参考にするつもりらしい。


俺はアンケートは書いていたが、用紙がまだ机の中にあったので、教室の窓際の隅にある先生の机に用紙を持って行った。


先生の机に用紙を置いてから、教室内を見渡すと窓際から二列目の一番後ろにある、スターこと渡裕次郎の席の回りに、荒木知博、西豊治、三宅秀一、吉岡大の四人が集まって何かお喋りしている。荒木達四人は教室の後ろの壁にある児童用ロッカーの上に腰掛けている。


スターが何やら熱心に話しているが、後ろにいる四人とお喋りしているので、向こうを向いている。だから、何を話しているかはわからないが、俺もその会話に加わろうとした。


スターの席は教室の一番後ろである。歩いてスター達に近付いて行くと会話が聞こえて来た。どうやら、週刊の漫画雑誌に連載されている人気漫画の今後の展開について色々と予測しているようである。


(何だ漫画の話題か、俺はその漫画は完結まで全部知ってるけど、それを話してはいけないな)


俺はその会話には加わらない方が良いと考え、スター達の横をすり抜けてロッカーに行き、ランドセルから今日は使う予定が無かった漢字ドリルを出して席に戻った。


漢字ドリルは宿題として出されていたので、暇があれば学校でやろうとランドセルに入れておいたのだが、ちょうどよい時間が空いているので、この休憩時間に宿題をやってしまう事にした。


小学校で習う漢字など、今更書き取りなどしなくても間違える事などないが、大人になって書き流す癖がついてしまっているので、細かい部分まで正確に書くのは案外めんどくさい。


つい、細かい部分を続け書きしてしまい、消しゴムで消してやり直しをする。漢字の書き取りは漢字を覚えるのと同時に集中力を養う訓練にもなるだろう。


「珍しい、何事もギリギリにならないとやらない人が、家に帰る前に宿題をやるなんて」


隣の席で家から持って来た文庫本を読んでいた杉山京子が、珍しい物でも見るかの如く目を丸くしていた。


「する事がないからな」


俺は漢字ドリルに集中していたので手短に言った。京子も宿題の邪魔をしてはいけないと思ったのか、俺の言葉に返事はせず、読んでいた文庫本に視線を戻した。


俺は黙々と漢字ドリルの宿題を続け、休憩時間内に全部終わらせる事が出来た。昼休憩の後の掃除時間まではまだ20分くらいある。


「あぁ、終わった終わった。思ったより早く終わってしまったから、時間が余ってしまったな」


俺は宿題を家に帰る前に終わらせたので上機嫌だった。


「時間あるから算数の宿題でもやれば?」


隣の席の京子が読んでいる文庫本から目を離さずに言った。


「あぁ、そうか。算数も宿題が出ていたな」


算数の宿題の事を忘れていた俺は、宿題が漢字ドリルだけだと思っていたので、漢字ドリルを済ませたら宿題はもう何もないと思い上機嫌だったのだが、まだ算数の宿題があると判明し落胆してしまった。


今から算数の宿題を始める気分ではなかったが、せっかく漢字ドリルの宿題をやり終えたのだから、全部やり切ってしまいたい気もあった。


算数の宿題をしようかどうしようか迷っていると、隣の席で文庫本を読んでいた京子が本から俺の方に視線を移した。


「田村君、宿題やらないの?」


「どうしようかなぁ……」


「暇でボーッとするくらいなら宿題でもしておけば?」


京子に言われ、俺はしかたなく宿題をやる事にして、算数のノートに挟んだプリントを出した。そして、いよいよ問題に取りかかろうかという時になって教室の後ろから大きな声が聞こえてきた。


「俺の消しゴムを盗んだのは誰だ?」


教室の一番後ろの席でスターが叫んでいる。自分の消しゴムが無くなったようである。


スターは自分の机の周りを一緒に雑談していた連中に手伝ってもらいながら探し回っている。


「昨日買ったばかりなのに……」


普段な陽気なスターが泣きそうなくらいショボくれている。それを見た友人達が消しゴムがどこかに落ちていないか一生懸命探していた。


「見つからないか?」


スターが友人達に尋ねるが、消しゴムはどこにも見当たらないようで、皆で床に這いつくばって消しゴムを探し続けていた。


「あぁ、せっかくの新品の消しゴムだったのに、ついてないな」


結局、消しゴムは見つからずスターはガッカリして椅子に座り込んでいた。


俺と京子は教室の最前列の席から一連の騒動をを見ていた。


「渡君かわいそうよ」


京子が俺の方を見ながら言った。俺はやれやれと言いながら席を立ってスターの席の方に向かった。


「おい、名探偵ヒデキが消しゴムのありかを教えてやろう」


俺はスターに言った。


「本当か?」


スターが目を丸くして言った。スターはキツネ目でほっそりした顔だが、その時は本当に目が真ん丸になっていた。


「消しゴムはどこにあったんだ?」


「机の上に置いていたよ。後ろを向いてお喋りしてたから、ずっと見ていたわけじゃないが、お喋りする前は算数のプリントをやってたから、その時消しゴムを使ったんだから間違いない。その時使った鉛筆がここにあるだろ」


スターは状況を説明した。机の上には筆箱があり、筆箱から出された鉛筆が机の上に転がっていた。


スターは算数のプリントをやっていて、その時消しゴムを使って、消しゴムを机の上にそのまま鉛筆と一緒に置いたまま後ろを向いてお喋りを始めた。ふと気付くと鉛筆はあるが消しゴムは消えていた。床に落ちたのかと探したが、どこにも見つからない。


「俺がアンケート用紙を先生の机に出した後、お前らの方に行ってみたが、漢字ドリルをやらなければと思い自分の席に戻ったんだ。その時スターの席の横を通ったが、消しゴムはあったはずだ。鉛筆と一緒に机から落ちそうになっていたのを覚えてるぞ」


俺が自分の記憶をスターに披露した。


「やっぱり、どこかに落ちてるんじゃないか?」


スターの席の後ろにたむろしていたメンバーの一人である荒木が言った。


「知らないうちに落ちた消しゴムを蹴飛ばして遠くに転がってるのかも」


今度は西が言った。


「よし、離れた所を探してみよう」


三宅が床を這いながら消しゴムを探し始めた。


「お前は探さんでいい。女子の席の下しか探さないつもりだろ」



スターがツッコミを入れた。三宅の事だから、消しゴムを探す振りをして床を這いながら女子が座っている席に近付き、座っている両足の間からスカートの中を覗き見する魂胆がミエミエだからである。


三宅を床から立たせたスターは俺の方を向いた。


「という事は、ヒデが席に戻ってから俺が気付くまでの間に無くなったわけだな」


スターが首をひねりながら言った。


「誰かヒデの後にこのへんを通ったかな?」


お喋りしていたメンバーが互いに記憶を引っ張り出しているが、誰も思い出せなかった。


「山岸さん、間田さん、誰かこのあたりを通ったか覚えてる?」


間田育美の席の横で間田が山岸愛子とお喋りしていたので、三宅が二人に何か覚えてないか尋ねた。間田の席はスターの席の左斜め前の方にある。


「さぁ……」


「覚えてないわ」


二人とも何も気付いていなかったようである。


「全然わかんねえな」


荒木が腕を組んで考え込む。スターや一緒にお喋りしていた三宅、吉岡、西も首をひねる。


「何でヒデは消しゴムがどこに行ってしまったかわかるんだ? 適当に言ってるんじゃないのか?」


スターが俺に言った。


「お前ら、少し考えればわかるだろ。よし、正解を教えてやる。もし、消しゴムが見つかったら丸ガムを奢れよな」


俺がスターに言った。スターは俺が自信満々なので、びっくりした表情になった。


「いいぞ。消しゴム見つけたら丸ガム一個だな。もし見つからなかったら、ヒデが俺に丸ガム一個奢れよな」


「おう、いいぞ」


俺は丸ガム一個ゲットが確定してニヤリとした。ちなみに、丸ガムとは駄菓子やで売られている小さな紙のパッケージに入った球体状のフーセンガムの事である。丸いガムなので俺達は丸ガムと呼んでいた。一つ10円で売られているので、誰でも気軽に買う事が出来るので、何かを賭けて遊ぶ時のチップとなる事も多かった。


「さて、消しゴムがどこにあるか教えてやろう」


俺はスター達の方に一歩踏み出しながら自らの推理の披露を始めた。


「俺は確かにスターの机の上に消しゴムがあるのを見た。これは間違いない。ところが、その後消しゴムは消えてしまったんだよな?」


俺は一度言葉を切ってスター達を見渡した。スター達は一様にうんうんとうなずいている。


「床を探してみたが見つからなかったのだから、床には落ちていないだろう」


「そうだな」


俺の言葉にスターが相槌を打った。


「それなら、誰かが持ち去ったという事になる」


俺は再び言葉を切って俺の推理に聞き入っている連中に不適な笑みを見せた。


「だから、誰が消しゴムを持って行ったか、もったいぶらずに教えろよ」


三宅がしびれを切らして叫んだ。


「まぁ、待て三宅。まずは確認しておくが、スターが無意識に消しゴムを机の中にしまい込んだり、ポケットに入れたりしてないよな?」


俺はスターが無意識に消しゴムをどこかに動かした可能性を指摘した。スターはちょっと驚いた顔をしたが、机の中やポケット、さらに机の横に掛けてある体操着を入れる手提げ袋の中を調べ始めた。


「まぁ、見つからないだろう」


俺はニヤニヤしながらスターに言った。


「どこにも見当たらないぞ」


スターが一通り探してから俺に言った。


「やはり、お前ら以外の誰かが消しゴムを持って行ったのは間違いない。しかし、誰がこの席のそばを通ったのか覚えてないんだよな?」


「あぁ、そうだよ。でも、ヒデも自分の席にいたのだから、俺の席のそばを誰が通ったか見てないだろ?」


俺の推理に西が疑問を呈した。他の連中もそうだそうだとうなずいていた。


「俺もそれは見ていないが、消しゴムがどうなったかはわかるんだよ」


俺が相変わらず自信満々なので、スター達はどういう事かと顔に疑問をあらわにしている。


「あぁ、じれったい。さっさと真相を明かしなさいよ」


後ろからの突然の声に俺は驚いて振り返った。


「あっ、杉山さん……」


三宅が驚いた顔でポツリと言った。スター達もみんな驚きを隠せない。


「あなた達、まだわからないの?」


京子はため息を吐きながら言った。無意識にこのような上から目線の態度で誰にでも接するうえに、誰よりも頭が良いので誰からも一目置かれ過ぎる傾向があった。


(やれやれ、とんだ邪魔が入ったな)


俺は心の中で苦々しく思っていたが、それを顔には出さないようにしていた。


「うーん、わからないなぁ」


スターは本当にわかっていないので、難しい顔で首を振った。


「消しゴムの所在が田村君によって最後に確認されて、渡君が消しゴムが無くなった事に気付くまでの間に、消しゴムを持ち去る事が出来た人物として、最も可能性の高い人物を忘れてない?」


京子はスター達に問いかけた。俺もその事をこれから指摘するつもりだったのだが、京子に先を越されてしまい俺の出る幕がなくなってしまった。


「そうか、誰がスターの席の横を通ったか見ていないが、通る可能性のあるやつは限られるだろ」


吉岡が何やらひらめいたようで、得意満面で自分の推理を話し始めた。


「スターの席は教室の窓側寄りの一番後ろだ。正確には一番窓側はスターの隣の山岸さんだけど、とにかく窓側寄りだ。言ってみれば、教室の奥の後ろの方だから……」


「はいはい、吉岡君ありがとう。じれったいから私が言うけど、つまり、渡君の席の横を通る可能性があるのは、男女並んで配置されている縦三列のうち、一番窓側の列の誰か、それも、男子の誰かよね?」


京子が吉岡の発言を遮って早口に言った。京子自身は気付いていないようだが、周りから見れば吉岡をバカにしているようにも見える。俺が中身が大人だと知ってから、他の児童に対して明らかに上から目線で接するようになったようにも見える。


(京子にそれとなく注意しとかないといけないな)


俺は他人に嫌われても構わないという態度の京子を見ながら、一度たしなめておく必要性を感じた。


「そうそう、その通りだよ」


吉岡が京子の発言に同意した。


「なるほど、俺と同じ列のやつら誰か通ったか?」


スターが天井を見つめながら思い出そうとするが、どうやっても思い出せないようである。


「渡君、思い出す必要はないわよ」


「そうか、同じ列のやつら全員に聞き込みをすればいいのか」


スターは可能性のある全員に話を聞くのが一番と考えたようである。


(おいおい、小学生というのはここまでバカなのか……)


俺は心の中で苦笑いしていた。仮に、スターと同じ列の誰かが悪意をもって消しゴムを持ち去ったのなら、スターが消しゴムを知らないかと尋ねても知らないフリをするだろう。そんな事もわからないのかと俺は呆れていた。


「渡君も吉岡君も他のみんなも、すごく重要な事を忘れてない?」


京子が苦笑いしながら首を振って言った。京子もスター達の推理力の無さに呆れているようである。


「いやぁ、わからないな」


「うーん、何かを見落としてるのかな?」


「まさか、消しゴムがある事自体、スターの思い込みで実は消しゴムは家に忘れていたとか」


「誰かに貸して忘れているのかもしれないな」


スター達は消しゴム盗難事件の真相がわからないだけではあきたらず、突拍子もない推理を始めるに至ってしまった。


「はい、注目」


京子が無茶苦茶な推理合戦を始めたスター達を静まらせるために、手をパンと叩いた。


「渡君達は全員ハズレ。私が正解を言うわよ」


京子が自身満々に言った。


(ほう、京子は真相に辿り着いていたのか)


自分の席に座って本を読んでいたため、スター達の方を一度も見ていないにもかかわらず、犯人がわかっているかのようである。


「この事件の犯人は……」


京子は犯人を指差すために、左手の人差し指を立てた。


「田村君よ」


京子は俺を指差しながら言った。俺はポケットからスターの消しゴムを出して、それをスターの机の上に置いた。


「俺の消しゴムは使い切ってしまったから、お前の席の横を通った時に消しゴムが見えたので、昼休憩に宿題をやる時だけ借りようと黙って持って行ったんだよ。スター悪かったな」


俺はスターに無断拝借を謝罪した。


「なぁんだ、そんな事だったのか」


スターは実に下らない事件の真相に力が抜けたように椅子にへたり込んだ。


俺達の間では、仲の良い者同士は必要な物を黙って借りるのはよくある事だった。借りても後でちゃんと返せば問題はなかったのである。


「まぁ、消しゴムは俺が見つけたも同然だから、丸ガムはいただきだな」


俺は笑顔でスターに言った。


「確かにヒデが消しゴムを見付けたも同然だけど、何か釈然としないぞ」


スターが席に座り、腕を組みながら言った。全ては俺の自作自演なのだから、スターが納得出来ないのも同然だ。


「あら、犯人を見つけて消しゴムを戻させたのは私だから、田村君にはガムを奢ってもらう資格はないわ」



「そうだそうだ」


「ヒデ、それでガムを奢ってもらうのはセコいぞ」


「見付けたのは杉山さんという事になるもんな」


スター達が口々に言うので俺はガムを奢ってもらうのは諦める事にした。


「わかったわかった、ガムはいいよ」


俺は苦笑いしながらその場を離れた。そろそろ昼休憩が終わり掃除時間が始まる頃である。


掃除の担当区域は俺も京子も校庭の隅や体育館周辺である。うちのクラスの掃除の担当区域は、教室、階段、廊下、外の四つであり、それぞれ10人くらいに分かれて行う。わざわざ外に出るのがめんどくさいので、外掃除は嫌がられる傾向にある。


俺と京子は一階に降りてから、下駄箱で靴を履き外に出た。ごみの集積場の横にある掃除道具置場から、ほうきとちり取り、更に集めたゴミを入れるビニール袋を持ってうちのクラスの担当区域である体育館に向かった。


うちのクラスな他の外掃除担当者は校舎裏や体育館の表側を掃除していて、俺と京子は体育館裏が担当となっていた。


体育館裏は児童が来る事は少ないので、ゴミが落ちている事は少なく、体育館と高い塀に挟まれている空間のため他人の目が届かない。そのため、わりとサボりやすいというメリットもある。


そのため、ゴミがあまり落ちてない時は二人でお喋りしたり、たまには他人が来ないか何度も確認したうえでイチャイチャする事もあった。


今日はこの体育館裏にはゴミが見当たらないので、俺も京子もサボる事が出来そうだ。


「しかしさぁ、さっきは俺が推理してたのに、割り込んで来るなよ」


俺は京子に先ほどの件を抗議した。


「だって、大人げなく小学生を騙してガムを巻き上げようとしてるからよ」


京子が両手を腰に当てながら俺を叱りつけるように言った。


「よくスターの消しゴムを俺が持ってるとわかったな」


「午前の授業で小さな消しゴムでイライラしてたでしょ。そしたら、昼休憩には消しゴムが新品同様のに変わってるじゃない。そして、渡君の消しゴムが消えた……それでピンと来たのよ」


「わかってても黙っててくれよな」


俺としては、いくら京子が真相に気付いても、そこは黙って見逃してほしかったところである。


「40過ぎたオッサンが小学生を騙そうなんて、どう見ても大人げないもの。いくら見た目は子供でも、大人のズル賢さで子供を騙してよいという事にはならないわ」


京子は自分の正当性を頑として譲らないつもりのようである。


「じゃあ、大人らしくふるまうよ」


「そうしなさい」


俺の言葉に京子は大きくうなずいた。だが、俺もこのまま引き下がるわけではない。


「じゃあ、大人らしく。大人の男としての欲求をぶつけさせてもらおうか」


俺は少し意地悪に微笑みながら京子に言った。京子は一瞬驚いた表情を見せたが、すぐに不適な笑みを浮かべた。


「どうぞ、いつが空いてる?」


「今度の日曜なら空いてるけど」


「じゃあ、昼ごはんを食べたらすぐ来なさい」


「よし、わかった」


俺と京子は日が経つにつれ、互いに依存度を深めていた。それは、大人でありながら小学生として生活する事で発生するストレスを解消出来る相手は他にいないからである。


「少しは掃除しなきゃね」


「そうだな」


京子の言葉を境に俺達は小学生に戻り掃除を始めるのだった。

次回は主人公が友人のイケとソフトボールで対戦する話です。

お楽しみに

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