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最終話

 部屋から出てしばらく。

 私は部屋の前から動けなかった。


「……ライラ様、どういうことですの」


 そんな私にたいし、呆れたようにそう告げるマリアの声に私は無言で首を振る。


「い、一生分がんばったのよ!」


「ライラ様が諜報員に向かないことだけはよく理解できました……」


 そんな私の様子に、マリアが深々とため息をもらす。

 それに対し、私はただふるえることしかできない。


 ……わかっているのだ。

 自分が今、どうしようもなくチキンだった事に関しては。


「いえ、まずは謝罪ですわね……」


 そんな私に、マリアが声音を変えた。


「私は今回、アルダムが後ろ盾のするに当たって一つ条件を付けました。今回の件が契約結婚であるという条件を」


 ……申し訳なさそうな響きがそこに入ったのは、その時だった。


「もしかして、余計なまねだったでしょうか?」


「なにも聞かないで頂戴……」


 私のかすれた返答に、罪悪感と呆れを浮かべるという器用なまねをマリアは行ってみせる。

 ……そこ表情がなおさら、私の罪悪感を刺激する。


「それにしても、ライラ様はあのフードの殿方に気持ちを寄せていたのではないのですか?」


 その言葉に、私は無言で口を閉じる。

 私もきちんと理解していた。


 ……そのマリアの言葉をうやむやにしようとしたことが今回の事態を引き起こした理由だと。


 確かに私はあの人に感謝をしている。

 いつか恩返しをしたい、そうとも思っている。


 しかし、別にその人に思いを寄せているなどのことはなかった。

 なぜなら、私は別の人間に思いを寄せているのだから。


「いやでも、あの反応はなにも思っていないという訳ではないのでしょう……?」


 いつものようにからかっている訳ではないと思いながら、私は必死に黙秘を続ける。

 それが良くないと言うのは理解している。


 ……それでも恥ずかしすぎだろう。


 あのフードの人の話を聞いて照れていたのは、ただその人の話し方が思い人ににているからだけ。

 ないと知りながら、思い人に助けて貰ったのかもしれない、なんて妄想をしていただけだと言うのは。


「か、勘違いじゃない……?」


「そんな下手に隠しながらだまそうとするのやめてほしいのですけど……」


 その言葉に私は必死にマリアから目をそらす。


 ……どうにか、話を早く逸らさないと、そう思いながら。


 そうしてわちゃわちゃと話を続ける私達に、初夜式でも暗い雰囲気はもうなかった……。

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