第二十一話
威圧されるマキシムと、警告するアルダム。
その姿を見ながら、私は理解する。
アルダムは私のために、わざわざ警告に来てくれたことを。
アルダムがマキシムに恩を抱いていない。
むしろ、恨みを抱いている事を私はしっていた。
けれど、アルダムは公爵家の社交を悪化さえないために、その全てを抑えマキシムも恩人として対外的には扱っていた。
しかし今、アルダムはその思惑を無に返してまで私を助ける為にこの場に来てくれていた。
その覚悟を理解してもなお、私の胸にあるのは来てほしくなかったという感情だった。
……この人に、この日を今の私を見られたくなかったという。
そんな自分がさらに私自身の嫌悪を煽る。
「ライラ嬢。このめでたい式の中、騒ぎ立ててしまい申し分けありません」
そんな私の感情を知る由もないのか、アルダムは膝を折りいつも通り私の手の甲にキスを行う。
「お綺麗ですよ。まるで本物の女神のようだ」
「……っ!」
どうしようもない胸の痛みに私が襲われたのはその時だった。
その瞬間、泣き出してしまいそうな衝動を私は必死にこらえる。
先ほどアルダムにしかられたことがあり、マキシムはおとなしくしている。
それがなければ私は確実に泣き出していただろう。
しかし、その幸運があっても涙をこらえられるかどうかは怪しかった。
でも、私はここでなく訳には行かなかった。
おそらく、アルダムはマリアからこちらの事情について聞いているだろう。
その上で私を少しでも助けようとしてくれたほどに、この人は優しい。
……ここで泣いてしまえば、そんな優しい彼を無駄に心配させてしまう。
だから私は涙を必死にこらえようとして。
アルダムが私の耳元に口を寄せたのはその時だった。
「相変わらず貴女は甘えるのが下手ですね。私だって少し位貴女に頼られたいのですが」
「……え?」
「私は貴女の危機に駆けつけない訳がないでしょうに」
アルダムはそう言って優しく笑う。
それに私はさらに何事かを聞こうとして。
「私の妻に何をしている……!」
それを遮るマキシムの怒声が響いたのはその時だった。
その言葉に名残惜しげにアルダムが身体を離す。
しかし、もう問題はなかった。
「……少し、化粧直しをしてきます」
私はそう言葉少なにそう告げてその場に背を向ける。
「ライラ! 何を勝手に……」
「おっと、ドリュード伯爵家当主殿、まだ話は終わってませんが?」
「……っ!」
そんな私を呼び止めようとしたマキシムを、アルダムがじゃましてくれる。
その助成に内心感謝しながら、私は部屋を後にする。
──その私の手には、アルダムから渡された紙切れが握られていた。




