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第二十話

 私が止めるまもなく、あけ開かれた扉。

 ……その中にいたのは、よく見覚えのある茶髪の長身だった。


 それを目にし、私は固まる。

 もう逃げられないことを理解してしまって。

 そんな私と対照的に、マキシムの顔に浮かぶ笑みがどんどんと深くなっていく。


「いつ私が扉を開いていい、そう許可しました?」


「っ!」


 ……しかし、その笑顔が浮かんでいたのは一瞬のことだった。


 冷ややかな第一声に、笑みのままマキシムの顔が固まる。

 次の瞬間、こちらに振り返ったその長身の男性、アルダムの顔に浮かんでいたのは丁寧な笑みだった。

 しかし、そこには冷ややかな色が浮かんでいた。


「爵位の立場も理解できていない頭しか持っていないのですか、貴方は」


 そのアルダムの姿を見たマキシムは信じられないといった様子で固まる。

 それもそうだろう。

 何せ、かつてのアルダムはもっと低姿勢だったとのだから。


「私の態度が想像と違う、そう言いたげですね。当たり前でしょう」


 その疑問に答えたのは、等のアルダムだった。


「以前私はドリュード伯爵家に対して恩人としての対応を行いました。──だが、厳密には私の恩人は豊穣の女神たるライラ嬢です」


「な……! 私がどれだけ公爵家の為……」


「おや、伯爵家当主殿は先日我が公爵家に要請した巨額の融資を覚えておられないのですか? あれだけの融資を行った我らにまだ大きな顔ができるとでも?」


「なっ!」


 その言葉には私も思わず反応してしまう。

 なぜなら、その話を私は聞いていなかった故に。

 その私の反応に、焦ったような表情をしたマキシムはあわてて話を変える。


「我らを祝福する気もないのか、貴様……!」


「誰に口を聞いている?」


 アルダムの纏う雰囲気が変わったのはその時だった。

 丁寧な口調がはがれ、荒々しい語気でアルダムは続ける。


「貴様の前にいるのが公爵家当主アルダム・バルタリアだと知っての発言か?」


 その言葉に、マキシムは何も言えない。

 社交界も行かず、修羅場を経験したことのないマキシムでは、そのアルダムの威圧に真っ向から迎え撃つことなどできはしなかった。

 何せ、アルダムは公爵家の英雄。


 ──十代前半から、ガズリアに代わり獣の森と戦ってきたのがアルダムという人間なのだから。


「ここに来たのは警告だ」


 何も言えないマキシムに、アルダムは刻みつけるように告げる。


「我ら公爵家の恩人は豊穣の女神、ライラ嬢ただ一人。その彼女を初夜式という悪習で傷つける貴様を公爵家は許さない」


 その言葉にマキシムの顔に恐怖と屈辱が宿る。

 マキシムがアルダムを初夜式に招待したのは、私に好意的な彼に嫉妬し、見せつける為だったのだろう。

 その目論見を全てつぶされた形となったマキシムは悔しさを隠せない。


 その全ての目論見を真っ向から潰し、アルダムは吐き捨てる。


「次に彼女を傷つけるような事をすれば、その時は公爵家が敵に回る。それを頭に刻みつけておけ」


「……はい。閣下」


 そしてそれにマキシムが返せたのは小さなその返事だけだった。

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