8話《クール?》
「ルミー」
「…………」
「ルミさーん」
「…………」
「もう、いつまでも拗ねないでよ」
着替えを済ませ、歌恋の水着を選んでいるルミは、先ほどのことに怒っているのか、ムッとした表情を浮かべながら 並べられた商品を物色している。
「別に拗ねてないです」
「じゃあ笑ってくださいな。ムッとしないで」
「……ばか」
「なぜ!?」
突然の罵倒に驚く歌恋。ルミは気にすることなく、彼女に似合いそうな水着を悩みながら探していく。
「先輩、前はどんなの着てたんですか?」
「あー……私、夏は海とかプール行かないから、学校指定しか着た事ないな」
「……私と一緒ですね」
「まぁそんなところです」
「でも、困りました。参考例があればいいなと思ったんですが……」
いろんな水着を手にしては戻す。それをルミは何度も繰り返し、何度目かの商品を戻す行為で、ルミは振り返り、じっと歌恋の胸を見つめた。
「どうした?」
「因みに、せ、先輩の胸のサイズって……」
「えっ、えっと……」
そのまま口にしようとしたが、歌恋はあたりを見渡し、ルミに耳打ちをしながらサイズを答える。
それを聞いたルミは指折り数え始める、歌恋は慌ててそれを静止する。だが、ルミの表情は徐々に絶望的な顔をする。
「私はもう、手遅れ……」
「ちょっ、ルミ!そんな顔しないで!」
「何が、何が違うんだ?牛乳?それとも、運動か?」
ブツブツと呟きながら、まるで自分の心を抉るように、デザインと同時にサイズも確認し始める。
「あのさ、ルミ」
「はい……」
「ルミが着て欲しいのでいいよ。私が選んだのも、結果的にルミに着て欲しいのだし」
「……じゃあ、これで」
ルミは水着を歌恋に渡すと、更衣室に行くように背中を押す。
「じゃあ待っててね」
苦笑いを浮かべながらカーテンを閉め、歌恋は着替え始める。
ルミはボーッと歌恋が出てくるのを待つが、中から聞こえる音に、徐々に顔が赤くなり、思わず背を向けてしまった。
「着替えたよ」
歌恋の声とカーテンの開く音が聞こえ、ルミは振り返った。
「ちょっと胸きついかも」
しかし、視界に入った瞬間にルミは両手で顔を覆って目を隠した。
「えっ、る、ルミ!?」
「め、目に……」
「ん?」
「目に、毒です……」
目を覆ったまま、顔を真っ赤にして俯くルミ。
ルミが歌恋に選んであげたのは、黒のデザインフリル・リングバンドュー・ビキニ。
露出度はルミよりも高く、胸の膨らみがかなり強調されてる。
「ルミが選んだのに」
恥ずかしそうにしているルミにクスクスと笑いながら、歌恋はカーテンを閉め、着替え始める。
「ふぅ……。さて、お会計行きますか」
「え、あれでいいんですか?」
「うん。ちょっと恥ずかしいけど、せっかくルミが選んでくれたものだし、着ないわけにはいかないよ」
そう言いながら、歌恋はレジへと向かい会計を行う。その様子を少し離れた場所から見つめているルミは、先ほどのセリフと水着姿を思い出し、顔を真っ赤にしながら俯いた。




