表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
幼馴染と婚約したけど聖女も好きになったので頑張って爵位を取り、二人の女の子と結婚したい件  作者: ふくみどり


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

4/18

帝国討伐隊派遣の決定

執務室に、カイル宰相とパーサブ民生卿が呼び出された。


二人が揃って姿を現すと、ランジール皇帝は書類から目を離し、静かに口を開く。


「宰相よ。

東の国境都市アーカットの冒険者ギルトより提出されていたドラゴン討伐の依頼だが――

帝国として、正式に受理することを決定した」


簡潔な言葉に、宰相は一瞬だけ眉を動かす。


「速やかに手続きを進めよ。

これは帝国騎士団を派遣する正式任務である」


「……承知いたしました、陛下」


皇帝は続けて、視線を民生卿へと向けた。


「民生卿よ。

討伐隊の準備と周辺への根回しは、そなたに任せる。

場所から考えれば、野営地の設営はストーン村が妥当であろう。

詳細は軍務卿と詰めるが――」


一拍置き、言葉に力が込められる。


「今回はドラゴン討伐だ。

失敗は、そのまま騎士団の損失に直結する」


皇帝は視線を宰相へ戻し、断言した。


「故に、帝都近衛騎士団である第一騎士団より、精鋭部隊の中枢を動員する。

帝国騎士団長グレッグ将軍を筆頭に、

マルティア参謀、第一騎士団部隊長シルフィス――

この者たちは必ず部隊に組み込め」


そして、はっきりと告げる。


「これは皇帝命令である」


宰相の顔がわずかに青ざめる。

あまりに豪華な布陣だけではない。

(グレッグとマルティアを……もしこれが婚姻に発展すれば、

我が家の計画――院政の布石――が狂う……)


咄嗟のことで言葉が出ず、しばし沈黙する宰相。

やっと発せられた声は、震えるようだった。

「……帝国近衛騎士団の中枢を、そこまで派遣されるのですか……」


(単なる討伐任務とは思えぬ。陛下は、一体何を見据えておられるのか……)


皇帝の真意を測りかね、沈黙する宰相の目の前で――

助け舟を出したのは、民生卿であった。


「陛下。

これほどの兵力を動かせば、ドワーフ国に不要な疑念を抱かせるやもしれません。

ドワーフ国は帝国と友好関係にあり、

騎士団の武具の重要な供給先でもございます」


慎重に言葉を選び、続ける。


「討伐隊の編成については、今一度ご再考を――」


だが、皇帝の返答は即座だった。


「問題ない」


その声は低く、淡々としている。


「出立に先立ち、領主であるロルフィン辺境伯より、

ドワーフ国へ正式に連絡を入れさせよ。

討伐の趣旨、規模、進路――

すべて事前に伝える」


命令は、すでに結論として下されていた。


「宰相よ。

細部の調整は任せる。

帝国として、抜かりなく進めよ」


皇帝はそれ以上、口を出さなかった。

対立があろうとも、そこは帝国評議会の一員としての信頼――

“任せた”という無言の圧が、執務室に残る。


宰相は深く一礼する。


「……御意。必ずや」


張り詰めた空気のまま、執務室での会談は終わった。


その後、宰相の指示により、帝都に設置された魔鏡が起動される。

帝国には各都市連絡用の魔鏡が五基存在する。

いずれも国宝級の魔道具であり、距離や地形を問わず、瞬時に相手と意思疎通が可能な代物であった。


淡く青白い光が鏡面に満ち、やがて一人の男の姿が映し出される。


「……こちら、ロルフィン辺境伯」


いきなり宰相と民生卿の呼び出しを受けた辺境伯は、背筋を正し、緊張した面持ちで魔鏡の前に立っていた。


「突然の呼び出し、失礼する。

アーカット近郊で発生しているドラゴン討伐の件だが――

帝国として、冒険者ギルドから提出されていた依頼を正式に受理することが決定した」


「……なるほど」


辺境伯は一瞬だけ安堵の息を漏らす。

あくまで発端は冒険者ギルド。

自領が独断で帝国を動かしたわけではない――その点は明確だった。


しかし、その安堵は長くは続かなかった。


「討伐隊には、帝国騎士団を派遣する。

その編成だが――」


宰相が淡々と告げたメンバーを聞いた瞬間、

辺境伯の顔色がさっと変わる。


「……せ、戦争でも始めるおつもりですか?」


思わず本音が口をついた。


帝国騎士団長グレッグ将軍。

第一騎士団中枢。

参謀としてマルティア王女まで含まれる布陣。


討伐隊というには、あまりにも重すぎる。


民生卿がすかさず言葉を継ぐ。


「その点についてだ。

この規模では、ドワーフ国を刺激しかねん。

そこで――お主に一つ、役目を任せたい」


「……私に、ですか?」


「ドワーフ国へ赴き、

今回の討伐があくまでドラゴン討伐のみであること、

軍事行動ではないことを、事前に説明してもらいたい。

討伐隊の規模と行動範囲も、包み隠さず伝える」


辺境伯は即座に理解した。


これは信頼の証であり、同時に重責でもある。


「……了解しました。

直ちにドワーフ国へ向かう準備を整えます」


宰相は一つ、確認するように問いかけた。


「なお、討伐隊はアーカット市内には入らぬ。

ドワーフ国を刺激せぬためにも、

ストーン村とアーカットの中間地点に野営地を設け、

そこを拠点に行動する予定だ」


「承知しました。

その点も含め、先方には丁寧に説明いたします」


魔鏡の光がゆっくりと薄れ、通信が終了する。


辺境伯は深く息をつき、すぐさま部下に命じた。


「ドワーフ国行きの準備だ。

一刻も早く出立する」


こうして、表向きは冒険者ギルド発のドラゴン討伐依頼は、

帝国の正式任務へと姿を変え――

その裏では、貴族派と皇帝派の思惑が静かに交錯し始めていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ