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幼馴染と婚約したけど聖女も好きになったので頑張って爵位を取り、二人の女の子と結婚したい件  作者: ふくみどり
少年期

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少年期/村の大儲けの計画書

ニコラ会長は、ストーン村を訪れていた。

マルティア王女の報告書で概要は把握していたが、これはあくまで現地調査である。


村の外れから歩き、畑の様子、家屋の傷み具合、人の往来――

彼は無言のまま、村全体を観察していった。

一通り見回った後、最後に向かったのは村長の家だった。


「村長はん、まいど。

 ちょっと、お時間よろしいかな?」


「どちらさまで……ああ、ニコラ会長さん。

 帝都では大変お世話になりました」


帝都滞在中、イヴァンスとクラリスは何かとニコラ会長に世話になっていた。

村長はそれを思い出し、すぐに家の中へ招き入れる。


「まあ、立ち話もなんです。どうぞ中へ。

 ちょうどイヴァンス君も来ています」


「ほな、お邪魔しますわ」


居間に入ると、イヴァンスとクラリスが並んでいた。


「おお、イヴァンス君。クラリスちゃんも。

 元気にしとったか?」


「ニコラ会長、本日はどのようなご用件で?」


「ああ、実はこの村に、

 うちの商会の店を一つ出店しよう思いましてな。

 まずは、きちんと許可を頂こうかと」


「……許可、ですか?

 いえ、ニコラ会長のお好きにしていただいて構いませんが」


「ん?

 まさかとは思いますけど――

 この村、行政の仕組みが無いんでっか?」


「あきまへんで。

 ……ひょっとして、税の類も納めとらんのやないでしょうな?」


「ははは……お恥ずかしい話です。

 帝都とのつながりも薄く、指示を受けることもなく……

 農耕と狩りで、皆が生活している村でしてな。

 私も昔からの成り行きで、村長をしているだけです」


「あきまへん、あきまへんで。

 税いうんは国民の義務でおます。

 これがあるさかい、人は平和に暮らせるんや」


そう言うや否や、ニコラは懐からそろばんを取り出し、

ぱちぱちと音を立てて弾き始めた。


「ええ匂いがするで。

 銭の匂いや!

 銭の匂いがぷんぷんしよるで!」


「まず、うちの商会の支店を置く。

 宿屋と酒場を併設。

 人が集まる場所には、金も集まる」


「そこに行政窓口を作る。

 家賃は……いや、最初は恩を売っとこ。

 行政が軌道に乗るまで無料や」


「村人を雇って、観光向けの整備もする。

 外から人が来れば、税も自然に回る」


そろばんを伏せる。


「……できた。

 大儲けの計画書や!!」


「村長はん、まずは戸籍や。

 この村に何人おるか把握せな始まりまへん」


「次は会計。

 税が入ったら帳簿で管理せなあきまへん。

 ……で、計算できる人は?」


「それなら、クラリスが算数は得意だが……」


「あきまへん!」


突然、ニコラの声が張り上がった。


「金の管理は第三者がせなあきまへんで。

 身内でやると、不正の温床になります」


一拍置いて、

ニコラの口調がすっと落ち着く。


「疑われた時点でアウトですわ。

 一家まとめて路頭に迷います」


そして、念を押すように、

ゆっくりと言い切った。


「せやから――

 あ・き・ま・へ・ん・で」


「あと一番大事な仕事が残っとります」


「なんで税を払わなあかんのか。

 それを村の皆に説明せな、誰も納得しません」


「ちょうど帝国から学校事業が始まりますやろ。

 税を払えば、皆が学べる。

 暮らしが豊かになる」


「そういう理由付けが必要なんでっせ。

 まあ、その辺は後で詰めましょか」


「とりあえず初仕事しときましょ。

 当商会に出店許可書を出す。

 行政仕事第一号でっせ」


「行政窓口併設、当面の賃貸料は無料。

 税収が安定した暁に再協議……

 これでいきまひょ」


「本来なら、

 コンサル料めっちゃ高い案件ですで?」


「そ、そんな、村には払える金が……」


「今回は無料や」


ニコラはあっさりと言った。


「その代わり――

 今後もごひいきによろしおます」


そう言って、

にこっと笑い、指で小さな丸を描く。


そして、悪戯っぽくウインクを一つ。


イヴァンスとクラリスは、ただ呆然と見守っていた。


「ニコラさん、すげー商売人だね。

 正直よく分からなかったけど、

 村がめちゃくちゃ発展しそうな気がする」


目を輝かせてそう言うイヴァンスに、

ニコラは満足そうに口の端をつり上げた。


「マルティア王女にも頼まれとりますさかいな」


「そういえばニコラさんって貴族なの?」


イヴァンスは首をかしげ、

思いついたままを口にする。


「ああ、こう見えて子爵やで」


「それって……お金で買ったの?」


一瞬だけ、

クラリスと村長がひやりとした顔でイヴァンスを見る。


次の瞬間――


「ははははは!」


ニコラは腹を抱える勢いで大笑いした。


「いやあ、ええとこ突くなぁ、イヴァンス君」


ニコラは目尻に浮かんだ笑い皺を指で押さえ、

ふっと息を整える。


「イヴァンス君に、クラリスちゃん。

 帝国で一番税金を納めとるのが誰か、知っとるか?」


イヴァンスとクラリスが首を横に振る。


「このニコラが、帝国で一番税金を払っとんのや。

 ……税金って、なんで払うか分かるか?」


再び首を横に振る二人。

面白がって、レックも首を横に振った。


「税金はな――

 皇帝や王族、貴族の生活を支え、

 国民の平和を守り、生活の向上のために使われとんのや」


「騎士団の給料も、税金や。

 騎士団がおるから、街の治安もようなる」


ニコラは指を一本立てて続けた。


「それにな、

 国同士の戦争いうんも、

 騎士団が強かったら起こりにくいもんや」


「『あそこに手ぇ出したら痛い目見る』

 そう思わせた時点で、勝負はついとる」


にやりと笑う。


「せやから金出して、

 強い人間を集めるんや。

 この税金が、帝国の平和を守っとるんやで」


「でな、イヴァンス君――

 その税金を一番いっぱい払っとる人がおったら、

 君ならどうする?」


「もっと払ってほしいから、

 いろいろ気を使うと思う」


「せやろ。

 せやから陛下が、ワシに子爵をくれはったんや」


「まあ、言い換えたら――

 金で買うたようなもんやけどな」


「はっはっはっ!」


ニコラはイヴァンスの背中をぽんぽんと叩き、

笑いを続けた。

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