村の広場の激闘
ストーン村に到着したカムシスは、まず情報収集のため教会を訪れた。
「こんにちは、シスターさん。俺、カムシスってんだけど、ちょっと聞きたいことがあるんだけどいいか?」
「こんにちは、カムシスさま。本日はどのようなご用件でしょうか?」
「イヴァンスって子を探してるんだ。どうやら剣技がめっちゃすごいらしいんだよ」
「ああ、イヴァンス君ですね。今ならたぶん村長のお宅にいると思いますよ。
ヘルミス村長のお家は、教会の横の道を上ったところです。ご案内いたしましょうか?」
「ああ、よろしく頼むよ」
カムシスはレイカシスターに案内され、村長のお宅を訪れた。
「村長さま、お客様がお越しです。カムシスという方ですが」
村長はレイカにお礼を言うとカムシスを家の中に迎え入れた。
「カムシスさん、本日はどういうご用件ですかな?」
「ああ、イヴァンスって子を見に帝都から来たんだ。
なんでも剣技がすごいって聞いてね。
今この家にいるって聞いて案内してもらったんだけど?」
「イヴァンス君はクラリスと今しがた出かけてしまいまして。
おそらく村の中心にある広場だと思います。
村の若者が集まって剣技や格闘の訓練をしているところでしょう」
その話を聞くとカムシスの目が輝いた。
「失礼ですが、カムシスさんは帝国騎士団のお方ですかな?」
「いや、俺は政府の者だ。軍務卿の部下ってところさ。
ちょっとイヴァンスの噂を聞いてな、その腕前を見に来たってわけだ。
広場で訓練してるなら、ちょうどいい機会だな。
悪いが、村長さん、そこまで案内してもらえるか?」
村の広場では、イヴァンスを中心とした剣技の模擬戦が行われていた。
そこへカムシスが、にやりと笑いながら近づいてきた。
「お、やってるね~。俺も混ぜてよ、その模擬戦!」
木刀を手に取り、一対一の模擬戦に軽々と割り込んできたのだ。
「ここで一番強いのは誰だ?」
ビソップが答えた。
「イヴァンスだよ。おっちゃん、負けても知らないぜ?」
「お? いいね~。帝都から来た甲斐があるってもんだ。
イヴァンス君、俺と一戦お願いできるかな?」
「おっちゃんと? いいよ。
クラリスにいいとこ見せられる絶好の機会だからな」
「なんかさっきからおっさん、おっさん言ってるけど、まだ二十歳だぜ」
そう笑いながらイヴァンスを見るカムシスの目は、
獲物を狙う猛獣のそれとなっていた。
「はじめ!」
ビソップの掛け声とともに、カムシスが勢いよく突撃する。
カムシスは剣を振り、前後に踏み込み、まるで嵐のような連打を仕掛けてきた。
しかしイヴァンスは、軽くステップを踏むだけで、
すべてをかわし、ほんのわずかに手を出すだけで反撃してしまう。
突きも斬りも、カムシスのスピードの割にわずかな隙をついては全てかわしてしまう。
「おおっ、こいつ……速いな!」
カムシスが思わず息を漏らす間にも、イヴァンスはにこやかに、しかし正確に反撃を返す。
木刀がカムシスの手をかすめると、思わず「おっと!」と声が出る。
その間にもイヴァンスは間合いを見極め、軽く足を動かすだけでカムシスの連打をすり抜ける。
やがてカムシスは木刀を肩に担ぎ、大きく息を吐いた。
「ははは! まいった、まいった! 坊や、強すぎるぜ!」
その顔には、悔しさではなく満面の笑みが浮かんでいた。
「クラリス~! 見てた!? この勝利をクラリスにささげるよ!」
広場にいた村人たちも、思わず吹き出す。
「も~、イヴァンス! そんなこと、大声で言わないでよ~」
クラリスは顔を真っ赤にしてうつむき、恥ずかしそうに身を縮めた。
ビソップは両脇に手を当て、苦笑しながら呟く。
「相変わらずだな、イヴァンス」
その様子を眺めながら、カムシスは息を整え、誰にも聞こえないほど小さく呟いた。
「ふっ、見つけたぞ……!」
予想をはるかに超える才能。
木刀を交えたからこそ分かる。
まだ粗削りではあるが、この少年には確かな実力がある。
――帝国へ連れて行く価値は十分だ。
カムシスは口元に笑みを浮かべた。
こうして帝国から訪れた一人の騎士は、一人の少年の秘められた才能を確信する。
この出会いが、後に帝国の運命を大きく動かすことになるとは、まだ誰も知る由もなかった。




