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千文字小説百物騙  作者: 凪司工房
第八乃段
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レプリカントの死

 寝室のベッドの上で、女性が倒れたまま動かなくなっていた。よく見れば首を切断しようとした痕が見える。ただ使用した包丁の刃は人工皮膚を突破したものの、その下の保護樹脂を五センチほど切ったところで止まっていた。

 調査官のルークはそれを見て家主の男性に尋ねる。

「これはあなたのレプリカントですか?」

「目覚めたらこのザマだよ。本当にどうかしてる。おたくの商品は一体どうなってるんだ?」

 ルークは「すみません」とひとまず謝罪の言葉を述べ、作業スタッフに彼女を部屋から運び出させる。

「買ってまだ三ヶ月だぞ。保証期間だから当然新品に替えてくれるんだろうな?」

「確認したところ確かに保証期間内ですので、調査が終わり次第新しいレプリカントを派遣するという手順になると思います。ただ調査でお客様の方に原因があると分かった場合には、商品を故意に破損したということで、保証は無効となりますので、その点だけご注意下さい」


 レプリカントは人間そっくりの外見で、思考AIにその人のデータを用いれば言動もよく似せられるというので、特に亡くなった恋人の代用品としての需要が高かった。

 だが最近、そのレプリカントが謎の死をげるという事件が頻発ひんぱつしていて、今回も調査官のルークはその一連の事件との関連を疑っていた。

「蒔島博士。回収したデータはどうでしたか?」

「今までと同じだ。何もおかしなデータは見つからない。彼女は彼女として正しい行動をしたという結果しか出てこなかった」

 当然男性の方の素行調査も行われていた。調査書には、男はコンピュータエンジニアとして会社では真面目な勤務態度だったと書かれている。レプリカントを購入したのは彼女が亡くなって半年経った頃だった。

 机の上にはもう一つ封筒が置かれていた。それは博士の助手である鈴木という女性研究者が五分ほど前に置いていったものだ。どうやら男の亡くなった彼女について調べたもののようで、報告の冒頭から目を惹かれる内容だった。

 報告によれば彼女は警察に男性からのDV被害を訴えていた。彼女の死は自殺として処理されていたものの、前日に彼女は病院で酷い鬱病うつびょうだと診断を受けていた。

 更に後日、男性が別の会社のレプリカントでも同じ事件を起こしていたことが分かった。

 ルークは会社への報告書の最後にこう書き記した。

『何度やっても彼は彼女を上手く愛せなかった。それは彼が愛だと思っていたものが愛ではなかったからと推測される』


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