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闘え!ひょっとこ仮面!  作者: 椎家 友妻
エピローグ
40/40

1 そして新たな三角関係?

 あの事件があってから、数日経()ったある日の日曜日。

俺は近所にある小さな公園のベンチに座り、ウキウキとした気分で空を見上げていた。

空は何処(どこ)までも青く晴れ渡っていて、まるで今の俺の心の中のよう。

俺は今、ある人と待ち合わせをしていた。

ちなみにそのある人とは、守菜ちゃんやった。

今日の午前十一時に、この公園で待ち合わせをしているのや。

すなわちこれは、


 でえと


 なのや。

 聞きましたか皆さん!

デートでっせデート!

(つい)にこの俺が!

あの守菜ちゃんと!

デート出来る日がやってきたのや!

 あの事件があって以来、守菜ちゃんと俺は一気に仲良くなった。

エリックのアホのおかげで、ちゃんとした告白は出来へんかったけど、守菜ちゃんの俺に対する態度(たいど)一変(いっぺん)した。以前の様に俺を叩いたり叱ったりする事は(あんまり)なくなったし、何より俺に対して優しくしてくれるようになった。

そんなある日、守菜ちゃんは俺にこう言った。

 『この前助けてくれたお礼をしたいんやけど、何かして欲しい事とかある?』

 なので俺は間髪(かんぱつ)入れずにこう答えた。

 『じゃ、じゃあ今度、俺と・・・・・・デートして!』

 すると守菜ちゃんは(こころよ)くオーケーしてくれた!

オーケーでっせオーケー!

オーケー牧場!

 という訳で、今日デートする事になったのや。

 待ち合わせの時間は午前十一時なんやけど、実は午前九時からここで待っている。

そして頭の中で、今日のデートの予行演習をしているのや。

今日のデートは何としても成功させんとあかん。

そしてデートの終わりに、守菜ちゃんにこう言うんや。

 『俺の、子供を生んでくれ!』

 違う違う。

早い早い。

それは早い。

そうやなくて、こう言うんや。

 『俺の、恋人になってください!』

 そうこれ!

これですがな!

俺の気持ちは守菜ちゃんに伝えられたんやけど、俺達は正式に恋人同士という訳ではない。

それに、守菜ちゃんが俺の事をどう思っているのかも、ちゃんと聞いてないし。

 だから今日のデートで確実に守菜ちゃんのハートを引き寄せ、晴れて正式な恋人同士になる!

これが今日の俺の目標や!

よっしゃ!やったるでぇっ!

 と、意気込んでいた、その時やった。

俺の目の前に、ひとりの女の子が現れた。

(つい)に来ましたか守菜ちゃん!

そう確信した俺は、彼女がまだ何も言っていないのに、

 「いや、今来たばっかりやで?全然待ってないで?」

 と口走り、その子の顔を見上げた。

するとそこに、何と。


 黒ドレスのレラが居た。


 「あへ?」

 目が点になる俺。

何故彼女がここに?

ていうか無事やったんやな。

今日の彼女の服装は、あの時の黒いドレスではなく、一転して白のワンピース。

これはこれでよく似合うなぁ。

 あ、いや、そんな事に感心してる場合とちゃう。

予期せぬ人物の登場に、俺は驚きの声を上げた。

 「レ、レラ!お前、無事やったんか!」

 それに対してレラは、妖しい笑みを浮かべて言った。

 「おかげ様でね。誰かさんは私の事を助けるとか言いながら、そのまま帰っちゃったけど」

 「あ・・・・・・」

 痛いところを突かれてたじろぐ俺。

とりあえず、苦しい言い訳を(こころ)みる。

 「い、いやぁ、あの時はホラ、俺らも壮絶(そうぜつ)な戦いの後でボロボロやったから、そこまで気が回れへんかったんや」

 するとレラは、特に気を悪くした様子もなく、

 「ふ~ん、ま、別に気にしてないけどね」

 と言い、その後にとんでもない事を(おっしゃ)った。

 「とりあえず、今日から私、あなたの家に一緒に住む事にしたから」

 「あへ?」

 再び目を点にする俺。

え?どういう事?レラが俺の家に住む?

え?え?

 「どええええっ⁉」

 しこたまぶったまげる俺。

しかしレラは構わず続けた。

 「まあそういう訳だから、今日からよろしくね」

 「いやいやいや!何を言うとんのやお前は⁉何でいきなりそんな事になんねん⁉」

 「だって私、住む所がなくなったんだもの」

 「そやからって何故に俺の家⁉」

 「それはあなたが、これから私の主人(マスター)になるからよ」

 「何ぃいいいいっ⁉何で俺がお前のマスターにならんとあかんねん⁉」

 「私の前のマスターを、あなたが倒したから」

 「それでも俺がお前のマスターにならなあかん理屈はないやろ!」

 「だったらあの時私にトドメを刺しておけばよかったのよ。なのにあなたはそうしなかった。それはつまり、『命を助けてやる代わりに、俺のモノになれ』という事でしょ?」

 「そんな事ないやろ⁉とにかく俺の家には絶対住まさんからな!」

 「そんな事言っても、あなたの両親にはもう許可ももらったし」

 「何を勝手な事をしとんねん⁉しかも何でウチの両親もそれを許可すんねん⁉」

 「それに明日から、あなたが通う学校に転校する手続きも済ませたし」

 「うぉおいっ⁉何処(どこ)まで勝手やねん⁉そもそも若い男女がひとつ屋根の下で暮らすっちゅう事が、どういう事が分かってんのか⁉」

 「勿論(もちろん)分かってるわ。あなたはこれから私のマスター。だから私の心と体は、あなたに(ささ)げるつもりよ」

 「ええええっ⁉どええええっ⁉」

 「これからよろしくマスター。いえ、鏡助」

 そう言ってレラは、何と俺に抱きついてきた!

えええっ⁉

何なのこの展開⁉

メッチャ嬉しい!

あ、いや、そうやなくて、メッチャマズイやないか!

レラが俺と同じ家に住む⁉

しかも同じ学校に転校してくる⁉

おまけにこいつは俺に身も心も捧げる所存(しょぞん)

マズイやろそれは!

そもそも俺には守菜ちゃんという大本命の女の子が居る!

その守菜ちゃんと最近やっとこさ仲良くなれてきたのに、レラが入ってきたら話がややこしくなるやないか!

ていうか今その守菜ちゃんと待ち合わせをしてるんや!

もしこんな所に守菜ちゃんが現れたら、マズイどころじゃ済まへんぞ!

そう思って慌てていた、その時やった。

 「あんた、一体何をやってるんよ?」

 背筋が(こお)って砕けそうな程に冷え切った声が、俺の背後から聞こえた。

 「ひぃっ⁉」

 その声に心臓が止まりそうになった俺は、恐る恐る後ろに振り向く。

するとそこに、もう何人か人を()ってきたんやないかという程の殺意を放つ守菜ちゃんが、それはそれは恐ろしい目つきで俺を見下ろしていた。

その恐ろしさは、彼女が地球破壊人間になった時よりも上やった。

こ、怖すぎる!

 その守菜ちゃんが、俺に抱きつくレラの肩をガシッと(つか)んで言った。

 「ちょっとあんた!何鏡助に抱きついてんねん!離れぇや!」

 するとレラは、顔を上げて守菜ちゃんにこう返した。

 「うるさいわね、邪魔(じゃま)しないでよ」

 そのレラの顔を見た守菜ちゃんは、大きく目を見開いて驚きの声を上げた。

 「あーっ⁉あんたはこの前、鏡助に告白した女!まだつきまとってたんか!」

 そうか、守菜ちゃんはレラがワルダーの部下やった事は知らんのやな。

この状況ではどうでもええ事やけど。そんな中レラは、守菜ちゃんにキッパリと言い放った。

 「私は今日から、鏡助と同じ家に住むのよ」

 最悪や。もう何もかもが最悪や。

 それに対して守菜ちゃん。

 「な!な!何やってぇっ⁉それどういう事よ⁉」

 「どうもこうもそのままの意味よ。だから今から、鏡助と一緒に家に帰るの」

 「何を勝手な事を言うてんねん⁉鏡助は今からウチと遊びに行くんや!あんたなんかお呼びやないねん!」

 「それはこっちのセリフよ。私と鏡助の邪魔をしないで」

 「邪魔してんのはあんたの方やろ!そもそも鏡助は、ウチの事が好きなんやで⁉」

 「それは昔の話。今は私に夢中なんだから」

 あれ?そうやったっけ?

 「それはあんたが勝手に言うてるだけやろ!」

 この修羅場、どうすれば丸く収まるの?

 「それなら本人に直接訊()いてみればいいじゃないの」

 ん?

 「上等や!それが一番手っ取り早いわ!」

 おや?いつの間にやら守菜ちゃんとレラが、凄く怖い顔で俺を(にら)んでいますよ?

そして二人ほぼ同時に、俺に向かってこう叫んだ。

 「鏡助!あんたが好きなのはウチやろ⁉」

 「鏡助!あなたが好きなのは私よね⁉」

 そして俺にズズイッと()め寄る二人。

ハッキリ言って、死ぬほど怖い。

 えーと、こういう場合、どう答えれば俺は助かるのやろう?

そりゃあ俺の本命は守菜ちゃんなんやから、守菜ちゃんと答えるべきなんやろうけど、そう答えると、レラにどんな目に()わされるか分かれへん。

かと言うてレラが好きやと答える訳にもいかんし、両方好きと答えるのも、勿論(もちろん)あかんやろうし・・・・・・。

 その間にも守菜ちゃんとレラはズイズイ俺に詰め寄り、

 「さあ答えぇや鏡助!」

 「鏡助!答えて!」

 と迫ってくる。

一体どうすればええんや⁉

ていうか何でエピローグでこんな厳しい選択を迫られんとあかんねん⁉

もう最後なんやから、ハッピーエンドで終わらしてくれや!

 「鏡助!」

「鏡助!」

 更に迫ってくる二人。

顔が近い!

そして怖い!

 だああっ!

もうこうなったらしょうがない!

逃げよう!

 そう考えた俺はベンチから立ち上がり、そのまま一目散(いちもくさん)に逃げ出した!

すると、

 「あ⁉何処に行くんや鏡助!」

 「鏡助!待ちなさい!」

 と声を上げながら、守菜ちゃんとレラが追いかけてきた!

 (つか)まれば、殺される!

 そう直感した俺は、とにかく逃げた。

 ひょっとこ仮面の活躍で、地球に平和は戻ったけど、俺の日常は、平和とは程遠いものになったのでした。

 (著者注※めでたしめでたし)

 いやめでたくねぇよ!

       

闘え!ひょっとこ仮面! 完



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