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闘え!ひょっとこ仮面!  作者: 椎家 友妻
第六話 ひょっとこ仮面よ、永遠に
39/40

1 闘いが終わり・・・・・・

 目を開けると、そこに雲ひとつない真っ青な空が広がった。

そして心地よい風が、俺の前髪を揺らす。

どうやら俺は眠ってしまっていたようや。

というか、俺は生きてるんやろうか?

それとも結局守菜ちゃんの爆発を(おさ)えきれず、そのまま死んでしもうたんやろうか?

とりあえず、ムクッと上半身を起こしてみる。

そしてグルッと周りを見渡してみると、俺を中心にした半径五十メートル程の地面が、見事なまでに焼け野原になっていた。

しかしここは昨日と同じ奈良の山奥。

どうやら俺は、まだ生きてるみたいや。

自分の体に目をやると、ワイシャツやもんぺ(・・・)はボロボロの血だらけになってはいるものの、変身腹巻きのおかげで、体の傷はすっかり治っていた。

そして俺はその(かたわ)らに目をやった。

そこには守菜ちゃんが目を閉じたまま横たわっていて、静かな寝息を立てていた。

良かった。

守菜ちゃんも無事やったんや。

そう思って心の底からホッとした俺は、守菜ちゃんの頭をそっと撫でた。

すると守菜ちゃんが、

 「ん・・・・・・」

 と声を上げたので、俺は(あわ)ててその手を引っ込めた。

そしてそれを誤魔化(ごまか)すように、笑みを浮かべて言った。

 「お、おはよう」

 それに対して守菜ちゃんも、寝ぼけ(まなこ)をこすりながら言った。

 「おはよう・・・・・・」

 無防備な守菜ちゃんの寝起き姿。

かわゆい。

 とか思っていると、守菜ちゃんはムクッと身を起こし、自分の体をあちこちペタペタ触ってから、俺に(たず)ねた。

 「ウチ、生きてんの?」

 「うん、生きてるよ」

 笑顔で答える俺。

すると守菜ちゃんは、続けてこう訊いてきた。

 「鏡助が、助けてくれたん?」

 「うん、そう」

 「そう、なんや・・・・・・」

 守菜ちゃんはぼんやりとした声色でそう言うと、そのまま俺にピトッと身を寄せてきた。

 「わわわっ⁉す、守菜ちゃん⁉」

 突然の出来事に慌てふためく俺!

しかし守菜ちゃんは相変わらずぼんやりした調子で、俺に言った。

 「爆発、(すご)かったんやね」

 「え?ああ、そうやね」

 「『逃げて』って言うたのに」

 「そんな、守菜ちゃんを置いて逃げれる訳ないやんか!」

 「十年前は、一目散(いちもくさん)に逃げたのに?」

 「う、それは、返す言葉もございません・・・・・・」

 「ふふっ、冗談(じょうだん)やよ。逃げずに助けてくれて、ありがとう」

 「守菜ちゃん・・・・・・」

 守菜ちゃんの言葉に、じ~んときた俺。

あかん、ちょっと泣きそう。

 すると守菜ちゃんは真剣な顔になって俺を見詰(みつ)め、こう言った。

 「なあ、鏡助は何で、こんなに必死にウチの事を助けてくれたん?」

 「えっ?」

 「やっぱり、地球を守る為?」

 「ええっ⁉」

 守菜ちゃんの問いかけに、言葉を詰まらせる俺。

その答えは考えるまでもないんやけど、この状況でそれを言うてしもうてええんやろうか?

いやむしろ、こういう状況やからこそ、言うべきなのかもしれん。

 よし!言うぞ!

今までずっと募らせてきた、守菜ちゃんへの想いを!

 覚悟を決めた俺は、一度大きく深呼吸をし、改めて守菜ちゃんの方に向き直った。

そして若干(じゃっかん)声を震わせながら、口を開いた。

 「す、す、守菜ちゃん・・・・・・」

 「ん?何?」

 「お、俺、前々からずっと、その、守菜ちゃんの事が・・・・・・」

 「ウチの事が?」

 「好───────」

 その時やった。

 「ぶはぁっ!死ぬかと思いました!」

 という声とともに、近くの地面の中から、エリックが()い出してきた。

そして俺と守菜ちゃんの姿に気づくなり、(さわ)やかな笑みを浮かべながらこう言った。

 「良かった!鏡助君も小中さんも無事だったんですね!鏡助君が小中さんを愛する気持ちが、地球を救ったんです!」

 「なぁっ⁉」

 その言葉に俺は目ん玉が飛び出しそうになったが、エリックは構う事なく続けた。

 「いや~、それにしても鏡助君は本当に小中さんの事が好きなんですね!そうでないとあの時の小中さんのばく大なエネルギーを抑え込めなかったですからね!本当に愛の力は凄い!」

 「お~い・・・・・・」

 「それじゃあ僕、国道の所まで行って、帰りの車をヒッチハイクして来ますね!鏡助君は小中さんをつれて後から来てください!僕は先に行きます!」

 言いたい事を一通り言い終えたエリックは、軽快な足取りで国道のある方へ走って行った。

その後姿を俺は、ただただ呆然(ぼうぜん)と眺める事しか出来へんかった。

何やろう、この展開。

今の言葉で俺の気持ちが守菜ちゃんに伝わったのは確かやけど、何という、この消化不良感。

おまけに死ぬほど気まずいやないか。

チクショウエリック!

俺の人生最大の決めゼリフを台無しにしやがって!

この落とし前どうつけてくれるんじゃああっ!

 と、遠ざかっていくエリックに怒り狂っていた、その時やった。

 「ぷっ、くっ・・・・・・あっははははは!」

 やにわに守菜ちゃんが吹き出し、無邪気(むじゃき)な笑い声を上げた。

 「あー、えーと、あはは・・・・・・」

 どうしてええのか分からんので、俺もとりあえず笑った。

何かもう、笑うしかないです。

 「はははは!」

 尚も笑い続ける守菜ちゃん。

ちょっと笑いすぎやないですかい?

でもまあ、その笑顔はホンマに無邪気で可愛らしく、それを見ていたら、俺の怒りもたちまちしぼんでしもうた。

そんな中ひとしきり笑った守菜ちゃんは、改めてニコッと微笑んでこう言った。

 「帰ろっか」

 それに対して俺もニコッと笑い、

 「そうやね、帰ろっか」

 と言って立ち上がった。

すると守菜ちゃんは俺に両手を差し出し、甘えるような声でこう言った。

 「おんぶ」

 「え?おんぶ?俺が?」

 「うん」

 目を丸くする俺に、守菜ちゃんはコクリと頷いた。

まあ断る理由もないので、俺はその場でしゃがんで守菜ちゃんをおんぶした。

普段から鍛えているだけあって、守菜ちゃんの体重は・・・・・・あ、いや、何でもないです。

ともかく俺は守菜ちゃんをおぶって、エリックが走っていった方に歩いた。

そして(しばら)く歩いたところで、守菜ちゃんが真剣な口調で言った。

 「鏡助、ウチを助けてくれて、ホンマにありがとうね」

 「そんな、お礼なんかええよ」

 「ウチ、ホンマに嬉しかった」

 「そ、そう?」

 「これはそのお礼」

 「え?」

 その時やった。

俺の右の頬に、やけに柔らかい何かが触れた。

全く前しか見てなかった俺は、咄嗟(とっさ)に守菜ちゃんの方に振り向いた。

すると守菜ちゃんはいたずらっぽくペロッと舌を出し、それ以上は何も言わへんかった。

一体何が起こったのか全く分かれへん俺は、首をかしげながらまた前を向いて歩き出した。

結局、守菜ちゃんは俺の事をどう思っているのやろう?

それが物凄く気になるんやけど、今ここでそれを()く勇気はない。

 ま、二人でこうして無事に家に帰れるんやし、それはまた今度でええか。

 国道が見える所まで歩いて行くと、その道端(みちばた)にトラックが一台停まっていて、そこでエリックが大きく手を振っていた。

それを見た俺は、

 「今行くわい!」

 と叫び、守菜ちゃんをおぶったままトラックの所まで走った。

 まるで、夕べの出来事が全て嘘やったかの様な、清々(すがすが)しい朝やった。


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