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プロローグ~エリートの僕が死んだ日~

どーもー初投稿でーすあたたかい目で見守ってください。

僕は同年代の誰よりも将来を有望視された人間だった。だが、大人たちが夢想していたエリートとしての僕はその日崩れ去った。


その日。僕は精霊契約の儀に望んでいた。僕の前の皆が一人、また一人と契約の儀を済ませていった。


契約の義。それは、選ばれし貴族の子女や大商人の子息のみが集う学園における、最初の授業であり、今後の学園生活におけるカーストを決定するものだった。


小さい頃からエリートとして育て上げられ僕は最強の精霊と契約することを期待されていたし、僕もそれを当然のことだと信じていた。


周りからは、貴族のバカ息子どもの賞賛と喜びの声が聞こえてくる。

やれ、「炎の第三精霊と契約した」やれ、「水の第二精霊と契約した」

だがしかし、悔しくはなかった。

やつら程度で、第二、第三精霊と契約できるのならば、俺はどんなすごい精霊と契約できるのだろうか。


第一精霊。はたまた古の精霊を呼び寄せることもありえる。



魔法陣の上に立った僕は契約の言葉をつぶやいた。今までの生徒より一層眩い光にギャラリーは慄いた。


光はやがて収束し、僕の目の前には、いつか思い描いた最強の精霊ではなく・・・・・・エプロンドレスを身にまとった、髪の長い女が現れた。

腰まで届くかというほどの白銀の髪は可愛らしいピンクのリボンと共に柔らかくたなびき、その真っ白な肌は、汚れのない新雪のよう。長いまつげにパッチリ開いた双眼は、どこまでも突き抜ける夏の青空を思わせる透き通った青色。目尻が少し垂れていておっとりした雰囲気の女性だった。


「契約の儀は成立した。汝の力をここに示せ」

僕は意識して厳かな口調で問いかける。

「分かりましたご主人様。私の力、ご覧下さい」

精霊がそう言うと、周囲の大気が震える。目に見えない力が肌で感じられ僕は珍しく高揚していた。

やがて精霊の手のひらで小さな爆発が起こり、あとにはおよそこの場には似つかわしくないものが乗っていた。

それは、僕たちのよく知る、お子様にも大人気、ほかほか、揚げたて、ジューシー、各種スパイスにこだわった・・・・・唐揚げがそこにあった。


「これは、これはまさか?」

僕は訝しむように目の前の精霊を見つめた。

「はい、私、唐揚げの精霊です。」


「一緒に唐揚げを極めましょう。ご主人様。」


少女。少女というには少し大人びているが、目の前にいる精霊は微笑んだ。

可愛い。いや、違う。可愛いけど違う。


俺が目指しているのはほかほか亭の店主ではない。

世界最強の精霊使いであり、断じて唐揚げ使いなどではない。


なんだか頭が痛くなってきた。僕はこれからどうなるのだろう。目の前にはきょとんと佇む自称唐揚げの精霊。僕は愕然としながら、無意識のうちに呟いた。


「チェンジで」


「ふぇえええ!?」


――――――――


机に突っ伏していた僕は呻いていた。

少し前のことが鮮明に思い出せる。自信満々に精霊を召喚した僕。出てきたのは愛らしい唐揚げを持った女の子。とてもじゃないが他人に自慢なんてできなかった。


あっと驚くような美貌に、周囲の皆は言葉を失ったが、その能力を使った瞬間。皆の視線は手のひらを返したように冷たいものとなった。


あるものは僕に哀れみの言葉を向けた。

「かわいそうに・・・あれではお家に合わせる顔もないでしょうに」


あるものは嘲笑しながら僕を見た。

「からあげ。唐揚げか。はっはっはっ。いいザマだ」


「これで料理長も夢じゃないな。俺たちが戦場に出ている間せいぜい俺たちの腹の足しになるものでも作ってくれないか」


違う。こんなのは僕じゃない。こんなはずじゃない。こんなはずじゃない。こんなはずじゃ、なかったんだ。


僕は、嘲笑いと失笑と哀れみの視線から耐えられず、その場から逃げ出した。


ことっと僕の目の前に唐揚げが置かれた。


「唐揚げ。食べますか?」


からあげの精霊は不安そうに僕を覗き込んでくる。鬱陶しい。そもそもなんで唐揚げなんだ。食べ物じゃないか。


「あのっ!唐揚げ!食べますか?」


僕が聞こえていないと思ったのか、精霊はさらに声を張り上げ、耳元で怒鳴った。

もう我慢の限界だった。


ガシャンッ


目の前の唐揚げを手で振り落とす。

床にはまだ湯気が出ている唐揚げが散らばる。


ぎゅるるる~


不意に僕のお腹がなった。

こんな時でもお腹は減った。子供みたいに拗ねて人の好意を突っぱねた挙句、お腹がなってしまったことが恥ずかしくて仕方がなかった。


僕は顔が真っ赤になったことと引き換えに冷静さを取り戻した。


ウル目で唐揚げを拾っている精霊を見て決心した。


「僕が君を最強にして見せる。だから君も力を貸してくれ」


すると、彼女は唐揚げを拾う手を止めた。方がピクピク震えている。怒っているのだろうか。当たり前だ。僕は彼女にひどいことをしたんだ。最悪契約破棄もあり得る。


精霊が契約を破棄した場合、僕たち人間は一生精霊と契約を結ぶことができなくなる。


そんな不安が脳裏をよぎった瞬間。僕はそんな不安を一瞬にして打ち消されることになる。

そう。彼女は振り向いたんだ。泣きながら微笑んで。


そんな時僕は思った。

唐揚げを出す能力。いいじゃないか。少ない手札で僕は最強に上り詰める。

今まで努力したことなんてなかった。今ならしてもいいと思った。


「君名前は?」


「アリシア」




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