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けじめ


 明け方、太陽が眩しくて海斗は目を覚ました。

 見慣れない部屋にいて、太一の家に泊めてもらった事に気付く。


「おはよう」


 太一が隣の部屋から歩いてきて、ベッドに腰かけた。


「お、おはようございます」


 ベッドの中にいた海斗は少し頬を染めた。


「あの……」


 何か言おうとすると、太一はぎしっとベッドを軋ませて立ち上がった。


「朝食の用意をしたから、食べたら学校へ行こう」

「はい…」


 恥かしい事に夕べの記憶がない。


 キスをした事は覚えている。

 太一に押し倒されて、体をまさぐられた事も。しかし、それ以上の記憶はなかった。

 下肢を見てもそれらしい形跡は残っていないし、自分はいつの間にかパジャマを着ていた。

 何もなかったのだろうか。

 それとも太一は、記憶の彼方に飛ばしてしまうほどの高度な技で、海斗をおいしく食べてしまったのだろうか。

 起き上がると、頭がすっきりしていた。

 ゆっくりと朝食を取り、二人で駅に向かった。

 太一は夕べの事は何も触れてこなかったし、海斗も話をするキッカケをつかめないまま学校に着いてしまった。


「引越しはどうするんだ?」

「あ、はい」


 考えていなかった。早く家を探さなくてはいけない。


「手伝ってやるから遠慮なく言え」

「ありがとうございます」

「じゃあな」


 太一と分かれて海斗は大きく息を吸い込んだ。

 けじめをつけなくてはいけない。

 転勤の事も伊吹の事も、なあなあで済ませているから自分が苦しいのだ。

 朝日を眺め清々しい空を見ていると、やがて心も晴れてきた。

 海斗は大きく息を吐いた。

 時間はもうない。校長に頼んで有給をもらい、家探しをさっさと決めて引越しの準備をしてしまおう。

 心を新たにして、四月からもう一度自分らしく生きよう。

 海斗は意気揚々と歩き出した。





 休みをもらった事を太一に言うと、彼もうれしそうに一緒に探してやるよと言ってくれた。

 その日、伊吹と会う事はなかった。

 そもそも一年生を教えていない海斗は、伊吹とばったり出会うという事はほとんどない。

 家に帰ると部屋に明かりがついていた。

 伊吹が来ている。


「ただいま」

 玄関には伊吹の靴が揃えてあった。

 海斗はきゅっと唇を結んだ。

 階段を上がりながら、胸を押さえた。

 緊張している。

 自分の部屋に行くだけなのに。

 海斗は部屋の前で立ち止まり、ぎゅっと目を閉じてからドアを開けた。





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