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第10話
転送門が開いた。
白い仮面を顔に装着したCL3-SC4が、一歩踏み出す。
身体を構成する金属が軋んだ。
光。
激しいノイズ。
上下左右という概念が一瞬消える。
複数の時間が同時に流れる。
都市。
森。
戦場。
知らない人々。
見たことのない機械。
見たことのない服。
無数の映像が高速で過ぎ去った。
その中に、またあの女性がいた。
夕暮れ。
草原。
自分の手。
違う。
これは金属の手ではない。
人間の手だ。
女性がその手を握っている。
「――」
何かを呼んだ。
名前。
聞き取れない。
「――ファス」
ノイズ。
しっかり声を聴こうとして女性を抱き寄せようとした瞬間。
映像が消えた。
――
CL3-SC4は地面へ落ちた。
衝撃。
診断開始。
右腕損傷率三パーセント。
脚部正常。
動力正常。
仮面機能正常。
現在座標――不明。
空を見上げる。
青かった。
彼の知る空より薄い。
建物が並んでいる。
知らない様式。
人間が歩いている。
誰も女神の戦いなど知らない顔をしていた。
ここが過去なのか。
異世界なのか。
その両方なのか。
CL3-SC4には判別できない。
だが任務は明確だった。
メンディアを探す。
彼は立ち上がった。
白い仮面を装着したまま、
街へ歩き出す。




