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第1話

夜空を覆っていた雲が裂けた。


その向こうにあるはずの月は見えない。


代わりに、黒い空を縫うように幾筋もの光が走っていた。


大地には巨大な亀裂が刻まれ、かつて神殿だった建物はほとんど原形を失っている。


倒れた柱。


砕けた女神像。


煤けた白い石畳。


そして、その中央に二人の女神が立っていた。


アムネリス。


メンディア。


百年に一度行われるゾンビゴッデスバトル、その最後の二人だった。


八人いた女神のうち、六人はすでに姿を消している。


敗者は消え、勝者だけが残る。


それがこの世界の掟。


だから誰も疑わなかった。


女神でさえ。


少なくとも、少し前までのアムネリスならば。




メンディアの剣が石畳を掠めた。


轟音とともに地面が抉れる。


アムネリスは半歩身を引き、その軌道から逃れた。


遅れて舞い上がった砂塵が二人の間を覆う。


「避けてばかりね」


メンディアが言った。


肩で息をしている。


顔にも腕にも傷がある。


しかし、その目はまだ死んでいなかった。


「いつからそんな臆病になったの?」


アムネリスは答えなかった。


「それとも」


メンディアが薄く笑う。


「私を殺したくない?」


その言葉に、アムネリスの指先がわずかに動いた。


メンディアは見逃さなかった。


「図星?」


「黙りなさい」


「昔からそう。都合が悪くなると急に女王みたいな顔をする」


「まだ女王ではないわ」


「あと一人殺すまではね」


メンディアは剣を持ち直した。


二人は長い間、敵だった。


同じくらい長い間、味方でもあった。


ゾンビゴッデスバトルが始まった直後、他の女神たちに包囲されたときには背中を預けた。


共に巨大な獣を倒したこともある。


互いの命を救ったこともある。


そして翌日には、何事もなかったかのように殺し合った。


メンディアはいつもアムネリスの計算を狂わせた。


無謀で、気まぐれで、勝手で。


それでいて決して愚かではない。


アムネリスが最も警戒する相手であり、


最も信頼できる相手でもあった。


だからこそ、この結末だけは避けたかった。


二人のうち、どちらかが死ぬ。


それがゾンビゴッデスバトルの決勝。


以前のアムネリスならば、それを疑いもしなかっただろう。


だが彼女は知ってしまった。


敗者は死んでいない。




正確には――


戦いでは死んでいない。

挿絵(By みてみん)

アムネリス(通常時) / アムネリス(ゾンビゴッデス覚醒時)

・絶滅しかけているルミナイト族の王女

・支配欲が抑えられない

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