↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/26

8話① 行き先変更☆

 


「豊穣の聖女には私がついて行きましょう。ルード神官と、サドラ勅使。ここの指揮はお願いします」



「もちろんです。どうか……お気を付けて」


「で、でも護衛の一人も連れていかなくていいのでしょうか……?」


 私に付いてくる頼りない眼鏡の勅使が、ビクつきながら神官に聞く。そりゃそうだ。救援物資の為とはいえ、戦地に向かうんだし怖いよね。


 神官は優しく微笑みながら首を振った。


「……豊穣の聖女と共に行くのです。敵意は感じないでしょう。実りを与えるのみなのですから」



 遠回しだが

 豊穣の私に価値はないから誰も襲いはしないさ

 という意味だな。


 相変わらず言い方が酷い。


 だが神官の判断は聡い。

 あの傭兵? 達がどの程度の手練(てだれ)なのか分からないのに、ここで分断し下手に戦力を削ぐのは良くない。


 しかも私の育ての父であるこの神官は、元近衛騎士団長。下手なそこら辺の騎士より未だに強いだろう。


 それにまぁ

 天候名レベルの豊穣も草生やす範囲が地域単位になり、気候を操る程度と聞く。


 欲しがる国は限られるだろうねぇ。

 そしてそれはルオスじゃない。


 あと人攫いとしての価値もない。


 残念だがセレナやエルシアのような美少女じゃない。どちらかと言えば……そうだなぁ。

 平安時代のマドンナ的存在というか。

 歩くコケシというか。

 コケシ擬人化というか。


「テレサ」


「は、はぃい?」


 思考の旅に出ていたせいでビックリしすぎた私は思わず声が裏返った。


 神官と勅使を見ると……死を覚悟した顔をしていた。

 まぁ、そうなるか。


「避難所に向かう道すがらで……万が一、戦いになったら私達を捨てて、直ぐにテレサだけは逃げなさい。いいね?」


 慈しみの笑みを浮かべる神官に私は首を振った。


「いや、その時は一緒に戦いますよ。栗の木たくさん生やして投げつけます。後で食べれますしね!」


 そう言い放ち颯爽と私が御者に話を伝える。物凄く嫌そうな顔をされたが、今回の遠征で相当お金を貰っているのだろう、渋々受けてくれた。


 私はにっこりと微笑んで付いてきてくれる二人に微笑みかける。



「話はつきました! さぁ参りましょう!!」



「あぁ……女神様お慈悲を」


 勅使が情けなく天を仰いだ。



 ***


 馬車が走り始めて20分。


 ソワソワしている勅使の気を紛らわせるように会話をする神官。


「避難所は比較的安全地区らしいですよ。戦場はルオスの国境付近まで南下していますから。今から行くのは既に兵士たちが通過した後の村。不思議なことに建物の中に居たもの達は物音を立てなければ無傷だったみたいですよ」


「自分から確認には来なかったという事でしょうか」


「はい。まぁ……戦うために自ら外に出た者や、物音を立てて騒いだ者は皆、殺害されたそうですが」


「え、でも大規模治癒と」


「……疫病です。何故か通り過ぎた村や街で得体の知れない疫病が流行り、混乱に陥ってしまってるんですよ」


「ど、どんな疫病なので……?」


「高熱の末、全身が内出血のように赤黒く染まり、死に至ったり……皮膚に黒い穴が空き、数日後死ぬ者。軽い風邪だった者が何故か数日後に吐血して死ぬことも」


「ひぃぃぃぃ」


 ものすごい顔で仰け反る勅使を見て、怪訝な表情を浮かべ、神官が口を開く。



「というか、勅使様、報告書と依頼書読んでおられないので?」


「い、依頼内容は読みましたが報告書は……まさかこんなことになるとは思っておらず……」


「……はあ」



 ガタガタと震える勅使に向かって呆れたようにため息をつく神官。


 いつかの記憶にある会社の上司と部下のようなやり取り。

 勅使の方が圧倒的に立場は上だろうに……。

 頼りないメガネ野郎に私も哀れみの目を向けた。


 ふと窓の外の景色を見た勅使がすんごい勢いで私の方へ振り返る。


「…………あのこれ、何処に向かってます!?御者は行く時国境から20分程度で村や街がいくつか点在してると言ってましたが!?」


 その言葉に神官も外を見やる。


「……たしかに……こんな平原、地図にはなかったですね」


 私はじっとりと睨みつける二人の視線から逃げるように、反対側の窓から外を眺めた。



「テレサ……まさかこの馬車は……」



 答えに気付いてしまった神官。

 そしてその意味が分かり、泣きそうな顔でメガネを曇らせ首を振る勅使。


 私は観念したようにゆっくり振り返り

 なるべく明るい雰囲気でいられるようにてへぺろをかました。


「さすが神官様、ご明察☆ ……ただいま当馬車は戦場のど真ん中に向かっていまぁす」


 ウインクが出来ず目が痙攣し、白目になる。

 バスツアーガイドの真似、失敗。



 沈黙。



「嘘だろォォォォォォォ!!!!!!」



 馬車の中で勅使の素の叫びが轟いた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
内戦だけでなく、疫病まで…… 状況はかなり過酷ですね(・_・; そんな中、まさか戦地に向かうことになるとは! 勅使さんが哀れになってきました(笑)
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。