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ある男

この世の中には冒険者と呼ばれる小汚い連中がいる。

一攫千金を夢見て洞窟や廃墟、果ては墓などを漁るネズミのような…いや、まさしくネズミ人間どもだ。

そんな社会のダニどもに仕事を斡旋してやるのがアドベンチャーギルドの役割だ。

依頼は大別してギルドからの依頼、スポンサーからの依頼、王国からの依頼、民間業者からの依頼だ。

ギルドの依頼とは言うまでもなくアドベンチャーギルドが独自に収集した情報を元に宝が眠るとされる場所にダニどもを向かわせ取って来させる。


「またしくじりやがったか、ナスド」


俺は机を叩いた。

ナスドパーティーの数度のしくじり。

一度なら別にキレはしない。

問題はこのクソカス共が何度もヘマをやらかすので頭にきている。

特に難しい仕事じゃない。

ちょっとそこからそこまでモノを動かして移動させるだけの誰でも出来るガキの使いだ。

そんなガキでも出来る事をこのカス共はいい年をして出来ない。

呆れを通り越すとはこの事だ。

本当に怒る事そのものが馬鹿らしくなる。

とにかく俺は深呼吸し落ち着きを取り戻して話を進めた。


「冒険者辞めろお前ら」

「いや、それは…」

「それは何だ?、失敗ばかりするお前らなんぞ雇ってても意味ねーわ」

「頼む、バールさん」


カスに頭を下げられても価値はない。

頭を下げるにも価値があるか無いかは分かれる。

上流の人間達の謝罪は重く、底辺になっていく度に価値は下がる。

最底辺のドブネズミ共に頭を下げられたとしても何の値打ちも意味もない。

そんな事も分からないからドブネズミはドブネズミのままなのだが。


「お前らはクビだクビ、荷物まとめて宿から出て行け」

「それはあんまりだ」

「何があんまりだ、仕事もマトモに出来ないクズがガタガタ言ってんじゃねーぞ」


もちろん荷物を持って出て行くのは当然。

問題はコイツらに貸している金額を回収しないとならない事だ。

武具備品のレンタル寮、宿代、食事代、その他諸々のマイナス分だ。


「今度はしくじらない、頼む」

「ダメだ」


突き放さなければいつまで経っても同じ事の繰り返しだ。

コイツらが居ようが居まいがどうでもいい事だ。

そもそもこれが最後のチャンスだった。

その最後のチャンスすらしくじったバカなど消えて当然だ。


「労働者としてなら仕事を斡旋してやる」

「体を潰してしまうって話だ」

「知るか、冒険者でも同じだろ」

「頼む」

「駄目だ」


いつもこれの繰り返しだ。

役に立たない冒険者にクビを言い渡せば待っているのはこの応酬。

あっさりと引き下がるゴミどもは稀だ。

しかしいくらカス共が粘ってみたトコロで戦力外にタダ飯を食わせておく訳にはいかない。


「失せろカス共」


強制的に事務所から追い出す。

後はそれ専門のスタッフが引きずっていって処理をする。

男だけのクソパーティーだ。

全員過酷な肉体労働行き。

その業者に売り飛ばした金で今までのマイナス分を回収し残りをプラス分に変える。


「クビか?」

「お、ゼクスか」


いつの間にか冒険者ゼクスが立っていた。

そう、いつの間に事務所に入ってきたのか。

薄気味悪い野郎だが腕は立つ。

普通は仲間を連れてパーティーで行動するがコイツは独りで仕事をし魔獣退治にも向かう。

見張り役の話では剣の腕前が凄く一瞬で魔獣を倒すバケモンらしい。

今の時代のクソゴミ冒険者ばかりの中にあって異質であり異彩を放っている男。

ギルドとしては腕が立ち仕事をこなして帰ってくるのだから文句はない。

俺もまたコイツにはある程度優遇をしている。

しかし不気味な男である事に違いない。

俺の勘がコイツはヤバいと言っている。

何がどうヤバいのか?、それはハッキリとは分からない。

別に性格も荒れている訳ではなく粗暴な訳でもない。

カス冒険者の中にあっては実に理性的とでも言おうか知的とでも言おうか。

読み書きもある程度できる。

どこで習ったのかは知らないが。

それだけでも驚く事だ。

そして腕が立つから稼いでいるし借金もないし武具も自前で調達している。

そう、不思議なのはコイツは何で最底辺の冒険者なんぞやっているのか?。

それだけの剣の腕と頭があるなら王国の兵士にもなれるだろう。

だから俺は感じる。

コイツは何かヤバいと。

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