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HELIOSはおひとり様  作者: HELIOS
12/24

第十二話 美術館

 薄暗い寒空の下。私は猫の彫刻を見上げていた。シップス・キャットという。ここだけではなく他県にもいるらしい。

 この猫に導かれ、ここにやってきたようなもの。


 始まりは仕事のお客様のSNS投稿である。オレンジ色の宇宙服を着た、宇宙人のような白猫の彫刻。「なんだこれ」と調べたら美術館の前にあるアートらしい。

 そのとき、ついでに美術館のホームページを見た。気になる展示が予告されていた。心が洗われるような美しい絵画展。

 せっかく目に止まったのだから足を運ぼうかと考えていた頃、友人から美術館に行きたいと言われた。なんと同じ展示に興味を持っていたらしい。

 正直、意外だった。

 クラスは違えど高校からの付き合いで、シリアルキラーの本を満面の笑みで渡してくる子である。私はちょっと気持ち悪くなりながら読破した。授業中に。

 また、大分県には変わった本屋がある。奇病の写真集、世界の奇習、佐川一政の人肉レポなどの本。焼夷弾の残骸、踏み絵、人皮装丁本などの骨董も見れる。

「HELIOSが好きそう!」

 星を飛ばしながら教えてくれた。行きました。情報量に溺れます。是非。

 

 一緒に見に行こうと話が進む中、嬉しい出来事が起こる。

「美術館のチケット二枚もらった。招待券だって。入場券か分からないけどね」

 親が職場で、まさにその展示のチケットを貰ってきた。

「こ、これぇ!!」

 貰いました。

 導かれているようだと友人に報告してキャッキャしていた。


 なのに、私は一人で猫を眺めている。

 インフルエンザめ……。

 展示期間中に一緒に行ける日がなく、仕方なく一人で来た。

 猫と写真撮影をしていた女の子達が去ったので、近くで猫を見る。思ったより大きい。

 写真を撮って仕事用アカウントに投稿した。きっかけをくださったお客様に届け。

「行きますか」

 四角く大きい黒い建物に入った。有名らしいが初めましてである。

「おお」

 まず広さに驚く。受付どこだ?

 一階はショップらしい。二階のようだ。

 二階に着くと券売機に並ぶ人々。しかし、手元には招待券がある。受付のお姉さん方に見せてみることにした。分からなければ悩むより聞くべし。

「これってどうしたらいいんでしょう?」

「そのままエスカレーターの方へお進み下さい」

 ということは! 無料! わーい!

 頭を下げ、エスカレーターに乗った。


 上がると入場前にお目当てを探した。音声ガイドだ。芸術詳しくないからな!

「ガイド借りたいです」

 スタッフに頼んでお支払いした。入場券が無料なので痛くない出費。それに、このガイド。なんと知っている声優さんが担当している。借りるしかない。半分これ目当てなんだな。友人も楽しみにしていたのに。

 入場前からガイドがあるとのことなので再生する。声優さんの低い声を待っていると可愛らしい声が聞こえた。ん?

 どうやら、声優さんオンリーではないらしい。まぁいいか。待っていると声優さんの響く声が流れた。良きぃ。

 低くて、適度に渋くて、男らしくもあり、温かみのある優しい声。好きぃ……。演じられてきたアニメキャラが浮かぶのに、それとは違う声。ふぁー! もう乗ってきたぞ!!


 チケットを渡して入場する。いざ、芸術!

 中に入ると静かであった。平日の昼過ぎなのに人が多い。なのに、ガイドをつけている人が見当たらない。え、もしかして恥ずかしい?? 皆さんは無くても理解できるんですか!?

 はわわわと順路に従って作品を見る。おおー。

 最初に気に入ったのは火山の絵だ。力強く描かれている。神秘的ともいえよう。

 今回の展示テーマは【光】だ。作者芸術には疎いですが、挿絵をチマチマ描きますので「すげー」なります。あ、挿絵は期待しないでどうぞ。初期なんて酷いもんです。

 あ、この絵好きだなぁ。パンフレットに載っていたやつ。

 広大な海とチンダル現象の光。チンダル現象……うらみちお兄さんで知ったんだよな。漫画のシーンが浮かぶ。いかんいかん、芸術に集中しよう。

 撮影禁止マークがなければ、写真撮影可らしい。撮っておこう。インフルの友人に送るのだ。他のお客さんも撮る。ここは撮影率高めだな。

 海のキラメキ。光の筋の美しさ。たとえ芸術に詳しくなくても凄いと分かる絵。こんな風に広大な海の美しさをカンヴァスに表現できたらどれだけ楽しいだろうか。んー、描けん。


 一人で歩いていると他人の様子も目に入る。美大生なのか、若いながらに一人で見て回る人。その道の人なのか相手に説明する一人。同じように音声ガイドと一緒に楽しむおひとり様。ホッ。

 一点、一点じっくり見る人。合間に寄ったらしく早足で見る人。楽しみ方はそれぞれだ。HELIOSは人が多い所が苦手なので、絵をいい場所で見るのに時間がかかりそうであれば遠目でじっと見て先に行くことにした。


 今回の展示は絵だけではない。光を使ったアートもある。

 これがアート?

 分かるようで分からない物もあった。音声ガイドを聞いても響かない。いつか分かるだろうか。

 逆に音声ガイドのおかげで分かるものもあった。「俺でも書ける!」「子供でも書ける!」と言われるタイプの絵。

(この作品をジッと見ていると……)

 ああ、なるほど。それほど価値があるのかは分からないが、評価された点は分かった。この人が描かねば生まれなかった作品なのだろう。それにしても声優さんいい声だな。


 すべて鑑賞し終わり、音声ガイドを返却する。返却されたカゴを見ると機械が沢山あった。同士達よ。

 すぐそこにはショップがあった。せっかくだから見て回ろう。

 絵画のレプリカが壁に飾られている。モネ作の絵。好きだったな。値段を見る。まぁまぁ悪くない値段だ。

 今回の絵画をまとめた本。捲ってみるが、実物とは違う。筆の質感が分からないだけで、感じるものがここまで違うとは知らなかった。

 そうなると、世界の有名絵画を手当り次第に鑑賞したいものだ。

 絵画のトートバッグ。服まである。

 ハッ! あの常連さんが着ている絵画服。こういう場所で手に入れるのか!? まさかの気付きである。


 ショップを抜けると今後の展示予告のパンフレットが置いてあった。

 これは!

 モネの絵が展示されるらしい。ちょっと気になるぅ。映画と同じ。広告を見て次も来たくなる現象だ。


 帰るためエスカレーターで下っていると、また別のアートが展示されていた。銀色の……宇宙服を着た宇宙人か? お腹の辺りに呪いの人形のような物がいる。後に調べて腹話術人形だと判明するが、その見た目から「怖っ」と素直に思った。


 ふかふかな椅子を見つけた。歩き回って疲れたので、建物を出る前に休憩することにした。

「ふー」

 意外と楽しめた。夏休みの宿題、美術館へ行こう。当時は面倒だと思ったが、今なら感想文が書けるぞ。なんならエッセイ書いちゃうぞ。

 こういう芸術を楽しめる歳になったのだなと思う。

「あ。そうだ」

 寝込んでいる友人に感想を送らねば。猫の彫刻写真、気に入った絵画の写真を送る。そして、音声ガイド感想。

 すぐに返事が来た。


(行きたかった。にしても、こういうの楽しめる歳になったんだとシミジミ)


「あはは」

 同じこと思ったらしい。すでに十分生きた気でいるが、これからも好みが変わって行くのだろうか。

 もう少し芸術が分かる人間になりたいものだ。

 お読みいただきありがとうございました!

 今回お邪魔したのは「大阪中之島美術館」でした。

 夏休みの宿題、どこの美術館行ったのやら思い出せません。


 楽しかったのは徳島県の大塚国際美術館。一度は行くべきという声に納得でした。


 行きたいのは石川県の金沢21世紀美術館。プールのアートがある所です。去年行きたかったのですが連休とれず断念。せっかくならお茶の美味しい季節に行きたいものです。寄付も兼ねて沢山観光したい。


次話、ビールイベント初参加。

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