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4─後半

 


 ──定祐と上市に手渡されたのは、赤と黄と青と……どこかの国旗を模したようなパッケージの、外国産のチョコレートのようであった。


「へ? 何すか? これ……?」


「うむ……? 何だね? チョコレート……か?」 


 定祐と上市はまじまじと見た。

 

 パッケージにはさらに、『ROM』などと表記されている。


「ROM……?」


「ルー……マニアとな? いったい、どうしたのだ? これは?」


 定祐が製造国名のルーマニア確認して意外に思い感じながらも、妖狐に尋ねた。


 その妖狐は自分の分のコーヒーを入れながら答える。


「ああ、駅前で揚げを売っていた時にな、妙な二人組からもらったのだ」


「妙な二人組だと?」


「へ? どゆこと、すか?」


 定祐と上市は怪訝な顔をしながらも続きを聞く。


「さあ、私も詳しくは分らんな。――ただ、何か、ハロウィンの仮装のような格好をしていた。一人はカボチャ頭の男に、もう一人は魔女の格好をしたJCかJSか分からん女だったな」


「「は……? 何それ?」」


「だから知らんと言っておるだろ、低級動物ども。まあ、何者か目的は知らんが、何か挨拶感覚でくれたのだろう。“これから起こることを愉しみにしてくれ”とのメッセージとともにな――」

 

「「め、メッセージだって……?」」


 定祐、上市はなかなか理解が追いつかない話の中、どんどん吊り上げられるように驚愕させられる。




 意味深なメッセージ――


 それも、映画や何かにありそうな、事件や犯行を予告する系のベタなもののように聞こえるのは気のせいであろうか? この調査事務所で過去扱ってきた案件にそのようなこともないわけではないが……


 そのように気になっていると、


「まあ、それは置いておき、だ……。何か依頼はないかどうか確認せぬか、低級動物ども」


「「置いておくんかい! 若干、典型的なフラグ系のヤツでないかい? それは」」


「やかましいぞ、低級動物ども。いいから依頼を確認するのだ。でないと、“こいつ”で貴様たちを仕置きする……」


 妖狐はマイペースにも話題をへし折りつつ、妖力を用いて自分の両腕を兵器に――それも直方体ミサイルパッケージへと変化させて定祐と上市のダメ人間に向け、仕事をするよう催促する。


 対人としてはオーバーキルものの兵器を突き付けられ、二人は「「――ひっ!? ひぃぃ!」」と震え上がる。


「さあ、仕置きをする前に仕事をする気になったか? この低級動物ども」


「「わ、わ、分かたて……! てか、仕置きするってレベルじゃねぇぞ!!」」


 二人はビビりながらもつっこみながらも、言われたとおりおとなしく仕事にとりかかることにした。


 そんなこんなで、この傍若無人にして強引でドSな妖狐・神楽坂文が加わり、この神楽坂怪奇調査コンサルタント事務所の一日がようやく回りだすことになる。



   ***



 ――というわけで、綾羅木定祐と上市理可は依頼をチェックしてかかる。


 ただ、普段であればそれなりに届く依頼――封蝋付きの封筒などの昔ながらの紙媒体や、その他、異世界のアイテムや、呪術のかかった札といったワケのわからない媒体で届くこともあるが――が、ここ数日はご無沙汰であった。


「依頼のチェックといってもな……、今週は、これといった依頼がないぞ」


「そうですよね」


 やれやれとの定祐に、上市も頷く。


 そのように、緩慢な様子でいやいやと仕事をしていると、


「あん……?」


 定祐は“とあるメール”に目がとまった。


 その差出人のこと、『怪奇調査機関 室長――』などと、所属組織の肩書と名前そこまで目に入ったところで、


「――ほう。これは、これは! 貴様の嫁にして、便秘に悩む、ラノベヒロインにも負けない更年期のBBAびー・びー・えー、……松本清水子まつもと・すみこからではないか……!」


 と、妖狐・神楽坂文が煽ってきた。


「元だよ。わざとらしく言いおって、ムカつくやつだな」


 定祐は苦虫を潰したような、嫌そうな顔をした。


 そうである。この定祐はバツイチであり、その元嫁はメールの主――『怪奇調査機関』なる組織の調査室の室長であった。


 なお、この怪奇調査機関なる機関はその名のとおり、怪奇的なる案件を扱っており、ここ神楽坂怪奇調査コンサルタント事務所とは、いちおう互いに協力関係にある。


「まあ、とりあえず内容を見てみるが、どれどれ――」


 定祐はめんどくさそうにメールを確認しながらも、「……やっぱりな」と、その内容は案の定、予想したものであった。


 すなわち、先日の異常ハッキング騒動――『月に棍棒を投げる会』について調査協力をしてほしいとのことであった。




──続く

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