3話:能力測定
それから数日後、私は孤児院で充実した生活を送っていた。朝起きたら他の子達とごはんを食べ、他の子達を学校に送り出す。午前中は孤児院の掃除の手伝い、午後は自由時間で他の子達が帰ってきたら一緒に遊ぶ。
うん、これぞ私の求めていた日常。平和最高、日常万歳。
「ただいまー、零ちゃん遊ぼー」
「いいよ」
「何する何する??俺なんでもいいよ!!」
「んー……」
数日孤児院に滞在して、遊びと言うものがどんなものか思い出してきていた。広場で何をしようか悩んでいたその時。
「零ちゃーん、ちょっと今いいかしら?」
真由美さんが広場にやってきた。真由美さんは私を広場から連れ出して私の部屋へ連れて行き、扉を閉める。
ん??何をするつもりなんだろう??
「ねえ零ちゃん、覚えてなかったら答えなくていいのだけれど……能力って持ってるかしら??」
「能力??持ってるよ」
「あら……そうなの??何ができるの??」
いずれくると思っていたこの質問。さて、どう答えたものか。宇宙の化身としての力は伏せるとして、固有能力だけ話せば大丈夫だろうか。
「えっと……感情をエネルギーに変換して、そのエネルギーでなんでもできるよ」
「なん、でも……??」
真由美さんはキョトンとしながら「なんでも」と言う言葉をまるで知らない外国語かのように繰り返し呟いている。
あれ、もしかして私バレるようなこと言っちゃった??
「……ま、まあ……なんでもっていっても、限度はあるから」
「そ、そうよね……じゃあ零ちゃん、戦えたりってする??まあでも、まだ10歳だもの、できなくたって別に——」
「戦えるよ」
「……え?」
「え?」
真由美さんは再びキョトンとして理解が追いつかない顔をしている。私は咄嗟に話を逸らそうとしたが、次の瞬間、真由美さんに肩をガシッと掴まれ完全にフリーズ。
あ、まずい。なんか普通じゃないこと言っちゃった気がする。
「あなた……もしかして……」
あ、うん、この流れは完全に終わった。地球に来て数日で人生終了のお知らせ。過去最短記録更新かもしれない、さてさて記憶を消して去る準備を……。
「もしかして……天才ね!?」
「……え??」
「あなたまだ10歳よ!?なのに能力も使えて、しかも戦える??最高よ!!」
「えぇ……??」
「普通の子供は制御もままならない子達がほとんどだけれど、あなたの顔を見る限り、制御もできるのよね!?ね!?」
「い、一応……」
なんか思ってた方向と全然違うベクトルの話になってきている気がする… …。
「こうしちゃいられないわ!!早速能力測定に行きましょ!!」
「え、ちょ……」
こうして私は真由美さんに半ば強制的に車に乗せられた。
車で30分揺られて着いた先は都心。私は能力行政局というところに連れていかれた。どうやらここで、能力のランクを測ってもらうらしい。
「お時間になりましたので、どうぞこちらへ」
建物に入り、試験監督の女性に連れられエレベーターで地下に降りると、そこには白い壁で覆われた広く丸い無機質な空間が。真由美さんはガラスの向こう側でこちらを見ている。なぜか目がキラキラしている気がするが、気のせいということにしておこう。
「では早速、これから能力の測定を開始します。零さん、よろしくお願いします」
「お願いしまーす」
「検査では全部で3項目、実際にレイヴンと戦ってもらい、ランクを測ります。見る部分は戦闘力、判断力、そして制御力です」
「へぇー、結構細かく見るんだね」
「はい、初めは最低ランクのレイヴンから始まり、徐々にランクを上げます。限界だったらギブアップもできますので、構わず全力をぶつけてくださいね」
レイヴンとは、宇宙内部を漂う”ダークマター”と呼ばれるエネルギーが変異して生まれる怪物。その攻撃性の高さから、どこでも敵認定されている。
にしても地球にもレイヴンがきていたなんて、明らか私の管理不足だな。
「ギブアップされた場合には、ギブアップされた前に倒せたレイヴンのランクが、あなたのランクとなります」
「ん、わかった」
「説明は以上となります。質問がなければ早速始めますが、どうしますか??」
まあ、フットワークって感じでやれば、大丈夫でしょ。
私はポケットから普段は小さくして持ち歩いている大鎌を取り出し、化身の力を注ぎ込んだ。すると大鎌は軽く光に包まれ、光が収まった頃には、私の身長ほどの大鎌が手元に。
「……質問は大丈夫そうですね。何かあれば私がいるので、遠慮なく声をかけてください」
試験監督の女性はタブレット端末を少し操作した後、後ろに下がった。そして。
「では、試験を開始します」
ピコンッ
次の瞬間、重い扉が開き奥から真っ黒な2体の人型レイヴンがのそのそとやってきた。そして私を見つけるなり、ヴォォォォンと低い唸り声を上げてこちらに突進してくる。
さっさと片付けよう。私は普通の日常を送るので忙しいんだから。
「それっ」
私は大鎌を高く振りかざし、空気を切るように振り下ろした。するとそこから斬撃が生まれ、迫り来る2体のレイヴンの核に命中。レイヴンはパラパラと崩れ、消滅した。
よし、まずは2体。まあ最初はね、余裕余裕。
ピーッ
電子音が鳴って次のレイヴンが奥の扉からやってくる。今度は人型レイヴンが5体、先ほどより少し大きめだ。だが私からすれば全く問題ない、倒されるレイヴンには変わりないから。
私は大鎌を構え、大きく横振り。横に広い斬撃が生まれ、5体のレイヴンを一掃した。
レイヴンは核さえ仕留めればどんなに強くても消滅するんだよね……まあ、その分核がある限り無限に再生できる化け物だけど。
「……余裕そうですね、少しランクを上げます」
試験監督の女性はタブレット端末を再び操作し始め、さらに距離を取った。
ピピピピッ
簡素な電子音が鳴り響き、奥から再びレイヴンが現れた。しかし先ほどとは違い、1体だが先ほどとは比にならないほど大きく、気配もそこそこある。
大型レイヴンは私の四方八方に分裂した。数はざっと20体くらいだろうか、各々迫ってくる。
おぉ、ここら辺のレイヴンはこんな闘い方をするんだ。面白い。
私は自分の足に意識を集中させ、重力を無視するように思いっきりジャンプをした。そして、自分の感情の蛇口を捻るように、外部にエネルギーとして放出。無数の槍が出現し、雨のように降り注ぎ、レイヴンたちをまたしても一掃する。
うーん……最近は書類を捌くことしかしてなかったから少し体が鈍ってる気がする。絶対に全盛期の自分に今の自分を見せられない。
「……あなた裏ボスか何かですか……??」
「え何急に」
それからも試験は続いた。短い電子音が鳴るたびに様々なレイヴンが現れ、私は狩る。私にとっては10分にも満たない単純作業だった。
「……お、お疲れ様、です……」
「ありがと。それで??ランクはどうだった??」
試験監督の女性は目が見開かれていて、空いた口が塞がっていない。ずっとタブレット端末を見て、私を見て、またタブレット端末を見て、と謎行動を繰り返している。
何をしているんだろう??何か誤作動でもあったのかな??
「れ、零さんの……ランクは……」
さあどうだ。結構手加減したし、きっと平均的な数値が——。
「SSプラス……です」
「……はい?」




