1 伝説の天魔使いの誕生
老齢に近い女が自分の腕に抱いていた赤子を祭壇に寝かせる。
赤子は先ほど生まれたばかりだ。
「まさか、伝説の赤子を生きている間に目にすることがあるとは……」
女は赤子の額を確認する。
額には四つの色の違う痣のようなものがあった。
それこそがこの赤子が特別な天魔を宿している証。
本来なら一族としてはこの赤子を抹殺するのが当たり前。
いくら一族の血を引いた赤子でも四体の特別な天魔を自分の意のままにするのはかなり難しい。
それよりも天魔を制御できずに赤子の方が天魔と同化してしまう可能性が高い。
天魔と同化した存在は人間にとって脅威にしかならないと一族の文献には残っている。
しかし女には赤子を殺すことはできなかった。
自分の孫を殺すことなどしたくはない。
それ故に自分は一か八かの賭けをしようとしている。
四体の特別な天魔は赤子に宿って産まれてきたのでまだ自分の力を制御できるほど覚醒していない。
今のうちに天魔だけを排除できれば赤子は普通の人間として生きられるはず。
「灯火。この天魔を始末できるか?」
女の背後にユラリと姿を現した女が使役する天魔は僅かに目を細める。
「やってみなければ分かりません。彼らは特別な天魔ですので」
「ならばやってみてくれ」
「承知しました」
灯火の身体が仄かに光った瞬間、赤子の身体が強烈な光を放ち激しい風の渦が巻き起こる。
「なっ!」
眩しさに思わず目を瞑った女が再び目を開けるとそこには赤子の姿はあったがその額に四つの痣はなかった。
「排除できたのか? 灯火」
「いえ、四体とも覚醒して赤子の身体から逃げ出しました。しかし、赤子が生きている限りあの天魔たちはどこかで生きることでしょう。最悪『はぐれ天魔』になる可能性も。この赤子を始末しますか?」
灯火と呼ばれた天魔にとってはこの赤子が自分の主の孫ということは関係ない。
女に命令されれば赤子の命を奪うことに何のためらいもないだろう。
「いや……私はこの子に運命を託してみようと思う。将来、この子が自分の天魔を制御できれば問題はない。もし制御できずに天魔に取り込まれた時は……私がこの子を処分する……」
女は赤子を抱き上げた。
赤子は自分の運命など知らずにすやすやと眠っていた。




