第五十五章
「とっとと出て行け、この酔っぱらいが」
コリーは酒場の店主に、乱暴に外に蹴り出された。
彼は階段を転げ落ち、地面に顔から突っ込む。
「何をしやがるっ!」
だが店主はもう店の中に引っ込み、彼の前には誰もいなかった。
「くそっ」
コリーは唾を吐く。
「少しくらい客に絡んだから何だっててんだ! こっちだって客だ」
コリーは服の右のポケットを確認する。
確かな重みが、そこにはあった。
『彼が稼いだ、彼の金』だ。
最近はそれを使って、コリーは酒を浴びるように呑んでいた。
「へっ」と彼の唇が歪む。
まだまだ金はある。今日はこれで終わりだろうが、明日また来れば良い。
「いや……」
ふとコリーは今更、大事なことに気づく。
酒を出す店はここだけではない。
この店から叩き出されても、他を回ればいいのだ。
「けっ」地面を蹴りつけ、歩き出す。
エンディミオンの街は、時間帯故にか、墓場のように静かだった。
そこをコリーはふらふらと進む。
「バカが! オレには金があるのに……損をするのはてめえらだ」
コリーは唾棄する。
酒場の店主だけではなく、彼を『名誉なきもの』に貶める人々を、だ。
ふと、脳裏にダンが浮かぶが、すぐにかき消した。
ダン、彼の息子も周りから蔑ろにされ、生きるのだろう。
処刑人、罪人の首を斬る仕事は、それだけ軽蔑される。
「……あいつも、そうだったんだろうか……?」




