第五十四章
グロッソの剣がサイモンへと伸びる。
がちん、とだがそれを寸前で、サイモンの背後で気配を殺していた、デイミアンの大剣が遮った。
「おっ?」とデイミアンは少し感心する。
フィリッポの護衛のグロッソについては調べていたが、思った以上に手練れだったのだ。
「何ものだ! てめえら」
グロッソが誰何するが、聞く必要がない。
デイミアンは真鍮線でフィリッポの喉を捉えたサイモンから、グロッソを引き離すように、剣を振るう。
「くっ!」
グロッソは慌てたように後方へ跳び退いた。
「ああん?」
デイミアンは看破する。
「お前、光を見てたな? 俺たちみたいな闇の中でしか生きられない穢れたものが、光を見つめていたな?」
輝く馬車ランプを見つめていたグロッソとは違い、デイミアンは夜の闇を見つめ続け、目を慣らしておいたのだ。
「おおっ!」
視界不良で焦ったのか、グロッソが大振りをした。
次の瞬間、デイミアンの大剣がグロッソの首に入った。
ざっくりと頸部を切り裂き、一瞬でグロッソの命脈を断つ。
まき散る血から身を翻し、デイミアンはフィリッポに視線を移した。
丁度、サイモンの真鍮線で絞め殺された所だった。
「終わったな」
サイモンが、まだ血濡れた剣を持つデイミアンに話しかける。
「ああ、これで問題ないはずだ」
デイミアンは目を剥いたまま事切れているグロッソを、見下ろす。
「悪いな、あんたらは知らないが、始末しないと俺たちの『武器』が機能しなくなるのでな」
ルナ……小柄で華奢な彼女を紹介されたとき、デイミアンは正直不安を覚えた。
この娘が刺客として通用するのか。
だが外国人衛兵として潜り込んだデイミアンや、音楽教師に扮するサイモンよりも早く、ルナは王族に接近した。
後は王太子ウィルフレッドやらの重要人物の居場所を、彼女が突き止めれば良い。
──頼んだぞ、ルナ。
デイミアンとサイモンは、その場から離れて闇に紛れた。




