第六十話※サブタイトルは話の最後
まずは閲覧ありがとうございます!
このお話は初心者による物語です、プロフィールに書いた通りのまるで台本の様な小説とは程遠い拙い文章、少ない表現力、明らかな描写不足、当然の様な誤字脱字など正直問題だらけです、それでも読んで頂けるのならば幸いです。
一部の「」『』の説明
「」は主に人間のセリフ
『』は人間以外や大体の主観の人以外の電話や通信越しなどによる人間の音声のセリフのイメージとなっております。
【この話での未知の生命体ドラーベ内の用語集】
【アハッド】
異星の者達から伝えられた技術によって、対ドラーベを想定して造られた人型兵器、大きさはおよそ8m程
【アフィア】
地球に存在する反異種族連合軍の通称
主に多くの地球人が集まった者達で結成されたそれは、ここ数十年で規模を広げ今ではフォースデルタに次いで地球を二分に分ける程力を持った組織、度々フォースデルタと衝突を起こすも、あくまで自分達は地球の為に行っていると正当化している、異星から来た彼らの技術を盗み、アハッドまで造り出していた(但し、違いは殆ど無い)
【カッド】
アハッドと同様に異星から伝えられた技術によって造られた戦艦、アハッドを格納な上にある程度の戦闘も可能、海上、空中、宇宙への航行も可能としている
【サフィア】
反異種族連合軍…アフィアの中の特殊部隊の通称
アフィアのロヴェルが統率している組織
【サンダーボルト】
万が一アハッドが特殊な状況でエネルギー切れを起こした時に使う、フォースデルタのカッドに最近搭載された人工雷発生装置の名前
アハッドに向けて発射させる事で急速にエネルギーをチャージする事ができる
特別国家イールフ
世界に広まっているアハッド、開発当時の研究者の一人が地球に作ったと言われている小さな国
他の国が最先端を目指して高層ビルや交通などを発展させていく中、この国は地球由来の豊かな自然が多い、そして中央には大きな噴水があるのが特徴的
【フォースデルタ】
地球連合軍の通称
異星との交流によりアハッドなどを得た地球で、対ドラーベを想定され発足された国を越えた人々が集う軍
【プレデシャン】
ミレイ達の乗るカッド…戦艦の名前
【緊急襲来警報】
ドラーベが襲来するようになってから作られた警報で、国によって決められた独自のシェルターに避難するように求められる世界共通の警報
【ドラーベ】
地球や異星などに突然現れた未知の生命体、意思疎通が出来ず、人間を襲うものの明確な目的などが分かっていない為、侵略者として扱われる事が多い
現在軍に三種類確認されているドラーベだが、共通しているのは頭部が伝説上のドラゴンの様な形をしている事のみで、身体はそれぞれ違いがある
【オールドドラーベ】
ドラゴンの様な頭部を起点に、上半身は竜人を思わせる身体、下半身は蛇の様にやや長い身体、全体的に靭やかで身体の灰色部分は硬い、赤黒い部分は比較的硬くないが、それでも銃弾や刃物を通さないほどの硬さはある、人で言う肩の辺りからは、形状を鎌や触手の様に変化させる特殊な腕の様な物がある、大きさはおよそ1m超え
上記の通り足は無く、浮いてはいるがスピードは余り速くない(小学高学年位なら逃げ切れる)
【パワードラーベ】
同じくドラゴンの様な頭部を起点に怪獣の様な大きな身体、かなり筋肉質でやや猫背、手足がありしっかり二足で立っている
大きさは高さおよそ8〜12m程
手先はさながら大きな鉤爪になっていて、こちらは腕を変化させない
こちらは巨体ではあるが上記のオールドタイプとスピードは余り変わらない(歩幅でカバー)
しかしその分腕を活かした強烈な叩きつけや切り裂きは恐ろしい威力を誇り、戦車なども簡単に破壊するパワーの持ち主
溜めるのに時間はかかるが熱線を吐く事が出来る
【飛行ドラーベ】
形状は他に比べてドラゴンっぽさが強い、というのもその姿は伝説などに出てくるワイバーンに近いものとなっている
まずドラゴンの様な頭部を起点にやや細身の引き締まった身体、そこに人で言う本来腕が生えてる位置から長く発達した腕の様な翼が生えているのが特徴
翼の爪で切り裂いたり、特殊な雄叫びによる音波の攻撃をしてくる
大きさは翼を広げると全長およそ8〜10mほど高さはおよそ3〜5m
飛行する為上記二種よりスピードは速く通常は速めの自動車を追い越す程、速い時は新幹線を超える速度を出せるらしいが、制御出来ないのかぶつかる光景も目にされた事も
ロヴェルからの指示により、観光島であるワグアリゾートへと訪れたヒュウ達、辿り着いた後に目的が休暇である事を知らされて驚いた
理由としては、サフィアからの報告によれば周辺のドラーベ達の襲来が沈静化しているとの事、もちろん近場で襲来があれば出撃してもらう可能性もある為、せめて僅かな時間でも出来る時に休息してもらう為、今回の目的地となったらしい
改めて与えてもらった休暇を満喫する為、ヒュウ達で必要な物の買い出しに向かってから、崖からエクレール運んでもらい、やや特殊な場所にある人目につかないビーチへと辿り着いた
各々が休暇を満喫した後、アライブが何かを感じ取る、それは…レダルの気配、レダルはヒュウ達に思考を通じて話しかけ、レミ達を人質の様な言い回しで脅しながら再戦を望んだ
ヒュウは不安を、アライブは実力の劣勢を感じながらも、仲間達に黙って、レダルに呼び出された火山へと向かっていったのだった…
レダルに呼び出されて火山へとやって来たエヴァルドラーベへと変化したヒュウ達、頂上まで来たものの肝心の火口が見当たらず困っていた
見兼ねたレダルに火口への入り方を教わり、頂上付近の穴から中へと入り込んで進むと、かなり拓けた空洞に出た、空洞の壁は僅かに赤く光を帯びている事で、微かに周りを見渡せる、そして空洞は底の方へと続いていて…下を覗き込むと、黒コートに身を包んだレダルと思われる姿の者が僅かに見えた、エヴァルドラーベは一呼吸の間を置いてから一気に地上まで飛び降りて着地し、ゆっくりと立ち上がり、レダルに向き合う
レダル
「ようこそ、お待ちしていましたよ、アライブ、ヒュウ」
「…レダルさん」
『ワレラハ…マッテナドイナイガナ』
レダルは軽く肩を竦め
レダル
「私は待っていましたよ、戦いももちろんですが…ここまで来ていただく事も」
「う…そ…それはごめんなさい」
『ハジメテノバショダ、シカタアルマイ』
レダル
「まぁ、この後の戦いもありますから、あまりいじるのは止めましょうか、…おや?その布切れ…またつけたのですか?わざわざ長くまでして」
「…また?」
『……』
レダル
「ええ、私がバラバラに引き千切ってあげた筈ですが…」
「スカーフを…バラバラ…に…?」
レダル
「うん?覚えてらっしゃらない…?あぁ…!そういえばあなたは私の話で意識を無くしていましたねぇ!」
「…っ!」
レダル
「…我々に比べて人間は脆い、少し突くだけで簡単に壊れてしまう、…身体も…心もね…」
再び言葉で気圧されない様に、ヒュウは気を引き締め
「…確かに、俺はあの時…レダルさんに壊されました、でも人間全てに当て嵌めるのは違うと思います、…あの後アライブから…レダルさんが話をした喰らった人間の…最期を聞きました…」
レダル
「…?急に何ですか?」
「…その話で気になる事がありました、その人間の名前…多分言ってなかったですよね、…その名前はもしかして…今の名前と同じでそのままなんじゃないですか?」
嘲笑っていたレダルの表情が、不服そうな表情へと変わっていく
レダル
「…そうですよ、だからどうだと言うのですか」
「それって…本当はあなたが人間のレダルさんを…忘れたくないから…じゃないんですか?」
レダル
「……」
「レダルさんの話したその姿に変わる前…アライブも最初は怒りの感情が強かったです…でも…共に過ごしていく内に人間に興味を持ってくれた、だんだんと感情も豊かになって…時にはちょっと怪しい笑いをしたり」
少しずつ言葉を重ねるにつれて、どんどん声量に気持ちが乗って増していく
「お風呂や海を心地良く感じたり、美味しい物を美味しいと感じたり、そして…落ち込む時は落ち込んだり!一緒に考え!一緒に悩んで!……俺にとって失いたくない、大事な相棒にまでなった…!」
『ヒュウ…』
「あなたも本当は!人間のレダルさんの名を自分で名乗るほどに…大事だったんじゃないんですか…!?」
レダル
「……」
レダルは少し俯いて何も言わない、ヒュウ達は警戒しつつその様子をしっかりと見つめる、すると…レダルの身体がプルプルと震えだす
『…ナンダ?…マサカトハオモウガ…ナイテイルノカ?』
「…えっ?」
アライブの発言にヒュウは驚き、エヴァルドラーベは徐々にワタワタし始め
「…あっ…そ…そこまで!?…言い過ぎた…!?」
『…ベツニアワテンデモヨイダロウ』
レダル
「……フ…フフ…フッフッフッフッ…!」
『…オカシクナッタカ?』
「あっ…良かった…泣いてなかった…」
『オイ』
レダル
「アッハハハハハハッ!…ハァ…アライブ…以前あなたは言いましたね?『ワレラトキサマハチガウ』…と」
『…アァ、ソノカンガエハイマモカワラン』
レダル
「アライブ…私はまだあなたを同じ境遇の同胞だと考えています、しかしその考え…今私も使い時だと思いますよ…!ヒュウ!あなたと私では根本的に考え方が違う!」
「っ!」
レダルはエヴァルドラーベへと指を向け
レダル
「あなたは考えが甘すぎる!大事なら手放さなければいいだけですよ!私がこの姿や名前を使ってるのは!ただ「便利」だからですよ!勝手に大事などと決めつけないでいただきたい!」
「…っ!」
レダル
「本能で強く生きるドラーベにそんな甘ったれた感情は不要!簡単に感情に流されるあなたの存在がアライブの成長を妨げるとなぜ分からない!!」
「…俺が…妨げる…」
レダルの言葉は、エヴァルドラーベとして戦う事が増えた中…ヒュウ自身も薄々感じていた事、気を引き締めたつもりでいたヒュウだが、的確に指摘された事で自分の存在意義の意味を意識させられた
レダル
「当然でしょう…?アライブがあなたを完全に吸収すれば、私のように強い存在になっていた!…それなのに!情に絆されてしまったが故に…私に似た姿になりながらも…あっさり負けてしまったのですよ!」
「俺の…せいで…」
『チガウ!!』
「…アライブ?」
『コノスガタハワレトヒュウダカラコソヘンカシタショウチョウダ!ソウソウニニンゲンヲクラッタキサマナドトハチガウ!…マケタノハタダノチカラブソクダ』
レダル
「…その不足しているという力…本当はあなたはもっと欲しているのでは?」
『…タシカニキサマヲコロスタメノチカラハモトメル、ダカラドウホウヲクライ、ジュンチョウニツヨクナッテキテイル』
レダル
「いえいえ、そんなちまちまとした力ではなく!もっと側の…力の根源を…あなたは欲しているはずです…!」
『…ナンノコトダ?』
レダル
「例えばそう…突然、呆然…としたり…」
「…!」
『ソンナコトガオキタコトハナイガ?』
アライブはあっさり否定するものの、エヴァルドラーベの表情は曇る、その様子にレダルの口角は上がり
レダル
「…ヒュウ、あなたは心当たりがあるようですねぇ…?」
『…ソウナノカ?』
「…以前ドラーベを喰らった後とか、それ以前も…合わせて何度か…呆然としていた事があったんだ…」
『…タシカニソンナコトヲイッテイタカ、ダガソレガナニニツナガル?』
レダル
「それは他ならぬ力への渇望…近くに力の源があるが故に、あなたは求めてしまうのです…自身を超える力を…」
「自身を超える…力の源?…まさか…レダルさんの腕?」
レダルは妖しく笑い
レダル
「…ヒュウ、あなたの多少賢い所は嫌いじゃないですよ?本来ならすぐに私の腕を食べて強くなって欲しかったのですが…食べなかった事で思わぬ効果を生んだ…!一度目の当たりにした強さに…少しずつ少しずつ惹かれていった…!…力への欲が強く出てきたんですよ」
『チカラ…』
レダル
「喰らってはいない筈の腕の気配が…今はどういう訳か、あなた達の身体から感じるのが気になりますが…今はいいでしょう…さぁ…もう戦いましょうか…!」
「…!」
レダルは光を放って変化を解き、黒い竜の頭部を持つ人型ドラーベに戻った、エヴァルドラーベは身構えて攻撃に備える
レダルがヒュウ達の視界から消えた次の瞬間、エヴァルドラーベのスカーフが背後に突き出し何かに当たる
レダル
『!?』
「…!アライブ!?」
『…ハヤイガ…ウマクフセゲタナ』
エヴァルドラーベの背後から襲いかかったレダルはスカーフに強く弾かれ、その勢いを踏ん張りながら耐える
レダル
『なるほど…この布の攻撃はアライブと、ただ不必要に伸びた訳では無いようですね…威力も中々のもの…!』
エヴァルドラーベが振り返ってレダルを確認すると、腕に傷が出来ていた、しかしその傷はすぐに再生していく
「ありがとうアライブ、お陰で助かったよ、スカーフでは初めてだけど…一応…攻撃が効く様にはなった?…すぐ再生してるみたいだけど…」
『ツヨクナッタアカシダナ、リソウトシテハ、セツダンシテヤリタカッタガ』
レダル
『アライブ…いい攻撃でしたよ、嬉しいです…!』
『…ハァ、ホントニヒュウハガンチュウニナイナ…』
「今のは完全にアライブのお陰だから…でも…俺も負けてられない、ここからだ…!」
レダル
『ドンドンいきますよ!』
今度は正面から突っ込むレダルに対し、エヴァルドラーベは両腕を横向きに前に突き出し、刃を横に伸ばしつつ構えて受け止め、レダルの拳とエヴァルドラーベの腕の刃がぶつかる、受け止めたエヴァルドラーベは足で踏ん張りつつも、突撃された勢いで後ろに後退させられていく
レダル
『…ほう、先程のやり取りで思いましたが…今はヒュウが主体なんですね?それでいて私の拳を受け止めるとは…非力な人間にしてはやりますね』
『ソレダケデハナイ!』
レダル
『…!』
エヴァルドラーベの瞳の色が一瞬光り、色と意識が入れ替わる、その直後エヴァルドラーベは一瞬力を抜いてバランスを崩し、深く潜り込んでレダルの腹部を強く蹴り飛ばし、レダルは勢い良く後退していく
レダル
『ぐぅ…!…なるほど、今度はアライブ…!…良い力ですよ!』
『マダダ!!』
エヴァルドラーベは素早く詰め寄り、鋭い爪を持つ手で胸部を貫こうと試みた、レダルも素早く反応してしっかりとエヴァルドラーベの両手を掴み、組み合う形になった
『…グゥゥゥ!!』
レダル
『フフフ…』
互いに力の押し合いになり力は拮抗…ではなく、徐々にエヴァルドラーベが押し返され始める、アライブは足にも力を込めて踏みしめ何とか競り勝とうと耐える、そんな様子を見てレダルは妖しく、嬉しそうにニヤける
…ドスッ!
何かが刺さる音が両者に聞こえた、両者の視線が音の出処を辿ると、レダルの腕にエヴァルドラーベのスカーフが突き刺さっていた
レダル
『つっ!これはっ!?』
『…ヒュウカ!?』
不意の攻撃により優勢だったレダルの力が緩み、エヴァルドラーベは一気に押し返し、回し蹴りを当てレダルを吹き飛ばした、レダルは壁まで吹き飛ばされて強く叩きつけられる
レダル
『ぐぅっ…!!』
『ヒュウ、タスカッタ、ワレモオドロイタゾ』
「何とかアライブ主体の時でも力になりたいって思って、そしたらアライブがスカーフを動かしてた事を思い出して、俺にも出来ないかって一か八か試してみたんだ、スカーフの感覚はよく分からないけど…なんとか動かせて良かったよ」
『ククッ…ミゴトニヤツガアナドッテイタスキヲツイタカ、ジョウデキダ』
レダル
『……なるほど、失念してましたよ…てっきりスカーフを動かせるのはアライブがサポートの時だけだと勝手に思い込んでました』
「…試したのはこれが初めてですけどね」
レダル
『せっかくアライブと殺し合いを楽しもうとしてるのに…邪魔なんですよ…ヒュウ…!』
「…っ!」
ヒュウに不意を突かれた事でレダルの圧が強まる
『ケオサレルナ、ココロダケデモツヨクモテ』
「う…うん…!」
レダル
『心を強く持ったところで…力の前には無意味っ!』
レダルが再び正面から向かっていく、エヴァルドラーベは一度後ろに跳び
『ヒュウ!!』
「分かった!!」
エヴァルドラーベの瞳が再び一瞬光り、意識を入れ替え、ヒュウ主体へと変わる
そしてその直後、腕の刃を横に伸ばしつつ、両腕を外から内へと高速で振った、さながら空気を切り裂くような行動によって、かまいたちのような攻撃が生まれて正面から向かうレダルに襲い掛かった
レダル
『ええいっ!小賢しいっ!!』
身体に傷を負いながらもレダルはエヴァルドラーベに突っ込む、そんな行動に驚きつつ迎撃しようと試みるもレダルはその前に両腕を掴む
「くっ!?」
レダル
『甘い!!脆弱な人間めっ!!』
「…そうだ、俺は弱い、…でもそんな弱い人間にアライブは力を貸してくれる!だからっ!!」
レダル
『っ!?うぐっ!!』
ヒュウは両腕を強く振り払ってレダルの顔を殴り、尻尾を振り回して追撃してレダルを後退させる
「今度は絶対に…レダルさんに勝ってみせる!みんなを…誰も失わせない為に…俺の大事な相棒…アライブと一緒に!!」
レダル
『…勝ってみせる?…アライブと一緒に?…人間如きが自惚れるなっ!!』
「…っ!?」
ゆらりと揺らめくレダルから見えない気のような何かが噴き出す、その気と共にレダルの強い負の感情が周囲に吹き荒れ、ヒュウ達にプレッシャーとして襲い掛かる
レダル
『確かに、あなた自身も少しは戦いの腕をあげたようだ…しかしその力は…元々アライブが培ったモノです…それを…!』
『…!アブナイッ!!』
レダルが喋る途中で、エヴァルドラーベの首のスカーフが前に庇うように広がる、その直後スカーフごと強い衝撃がエヴァルドラーベを襲い、吹き飛ばしていく
「がはっ…!?」
エヴァルドラーベは壁に強く打ち付けられて地面に落ちる、ボロボロではあるが、アライブがスカーフで攻撃を和らげたお陰でなんとか立ち上がる事は出来た、もし咄嗟にアライブが防がなければ…直撃していたら…そう思うとヒュウはゾッとした
「い…一体何が…」
『…ミエルカミエナイカノソクドデ…ウデヲフリ、ショウゲキハヲ…トバシテキタ…』
レダル
『…ほら…あなたは気付かず…またアライブに助けられている…、それで一緒に勝つ?無能な人間のあなたをアライブと対等だと思い込んだ…全くもって傲慢なセリフですよねぇ!!』
「…っ!それ…は…!」
レダル
『所詮あなた自身は無力、既に変化を遂げたアライブにとってもう不必要な存在だ、なんせアライブの力に縋らなければ何も出来ないのですから』
『ヒュウガイッタ…ハズダ、ワレラハ…アイボウ…ダト、タガイ…ナクシテ…イキルナド…アリエヌ…!』
レダル
『ならば!私が同胞としてあなたの目を覚まさせてあげましょう!!』
レダルが拳を振り上げエヴァルドラーベへと飛び掛って
いく、ヒュウ達は身体のダメージが酷く、受けるにも躱すにも力が入らない、せめてもの思いで両腕と尻尾を前に突き出し、可能な限り軽減しようとした、そしてレダルの拳が振り下ろされ…
バシュッ!
レダル
『…ッ!?』
レダルの背に何かが当たり、攻撃を中断してエヴァルドラーベとは反対の壁まで後退する
???
「…ヒュウーーーッ!!!」
「…ゴホッ…え?この…声は…」
エヴァルドラーベは防御体勢を解くと、何かが目の前に着地する、それはヒュウ達の見覚えのある姿だった
『キサマラ…!』
「レ…レミさん…?それに…エクレールも?」
現れたのはスペアボディのエクレールと、そのパイロットのレミだった、背中にはヒュウが使うアライブ用のリュックを背負っている
エクレール
『無事か!?って…あんまり無事じゃなさそうだな…』
レミ
「見ればわかるでしょ!…ヒュウ…アライブ、しっかりして!」
レダル
『…こっそり連れてきたんですか…人間は汚いですね…』
「ち…違う!そんな事してない!!」
エクレールは肩を竦め
エクレール
『そーそー、オレ達は勝手に来ただけ、いやぁこんな所で会うなんてビックリだぜ、すげーぐうぜんだなー』
「…えっと、棒読みだし、流石に偶然にしては不自然じゃ……ってそうじゃなくて、どうして二人がここに…」
レミ
「…どうしてって、泳いで疲れたから休む、なんて言ってたけど、明らかに何かがある…って顔に出てたのよ、気になったからこっそりエクレールと一緒にプレデシャンまで追い掛けてみたら、休むどころか真剣に二人で何かを話した後、エヴァルドラーベに変化して何処か向かったじゃない」
エクレール
『周りに知らせようとも思ったけど、速くてそんな事してる余裕ねぇわ途中で見失うわ、入った形跡のあった穴は本体ボディじゃ入れないわ中は通信出来ないわで、めちゃくちゃ苦労したんだぜ?…まさかこんなヤベー事になってるとは思わなかったけどな…!』
「…そんなに…顔に出てました?」
エクレール
『じゃなきゃ、オレ達はここにいねーって』
「…は…はは…」
レダル
『なるほど…本当に勝手に来たのは分かりました、…それならせめて戦いの邪魔はしないでいただきたいですねぇ』
エクレール
『するに決まってんだろ!?ヒュウ!アライブ!わざわざアイツなんかまともに相手しなくていい!なんとかして逃げるぞ!』
「…駄目だ、レダルさんからは逃げ切れない…例えここで逃げ切れたとしても、この先絶対に危ない…なんとか勝たないと!…エクレール、せめてレミさんだけでも連れてプレデシャンまで逃げて!」
エクレール
『はぁ!?せっかく助けに来たってのに何を……!』
言葉を遮るように、エクレールは何かに吹き飛ばされ壁に打ち付けられる
レミ
「…えっ?」
「…っ!…エクレールッ!」
エヴァルドラーベとレミはエクレールの側に駆け寄っていく、レミが抱え上げ呼び掛けるが反応が無い、損傷が激しく、停止してしまっていた
レミ
「エクレールッ!…返事をして!エクレールッ!!」
レダル
『…これで、ここからは逃げられませんね…』
エヴァルドラーベはレダルの方へ振り向くと、何かがレダルの元に戻っていく、エクレールを吹き飛ばした原因は…レダルの尻尾だった
『アソコカラコノイチマデ…』
「…なんでこんな事を!」
レダル
『ヒュウ…あなたは逃げて…と言いましたよね?助けを呼ばれても面倒でしょう?だからまずは逃走手段を塞いだ…それだけですよ、あぁ安心してください、彼女には見物人としての役割があります、手出しはしません…邪魔さえしなければね』
「っ…また…また俺のせいで…?…レミさん、エクレールと…下がっててください…」
レミ
「…でも!」
「…お願いします…あの様子じゃ…送り届けさせてもくれなさそうですし…エクレールもきっと…レミさんが危険な目に遭うのは…嫌だと思いますから」
『タタカエルノハ…ワレラダケダカラナ、…セッカクダ、ソノワレノスニ…エクレールヲイレテヤレ』
本当だったらヒュウ達を助けに来たはずのレミ、それが一瞬の出来事によって覆った事に悔しさが溢れてくる
レミ
「……ごめん、助けに来たはずなのに…こんな事なら…時間を掛けてでもみんなを呼んで…たった二人で追い掛けなかったら…」
「…あのタイミングで来てくれなかったら、俺達はさっきの一撃で終わってた、…だから自分達を追い詰めないでください、…助けに来てくれてありがとうございます」
『(…ソレニ、オカゲデスコシハサイセイモデキタシナ)』
エヴァルドラーベはレダルに警戒しつつ、レミに軽く頭を下げる
レミ
「…うん、…ヒュウ…アライブ、絶対にレダルに勝って…じゃないとあとでエクレールに…ぶっ飛ばされるからね…!?」
レミからの一言にヒュウ達は顔を上げて一瞬面食らい
『…ククッ…ソモソモマケレバタダデハスマナイダロウニ、ダガソウイワレタラゼカヒデモ、カタネバナルマイナ』
「…そうだね、エクレールのパンチは…とんでもないからね」
レミとエヴァルドラーベは互いに頷き合い、レミは出来るだけ巻き込まれない位置へエクレールを抱えて移動し、元々はアライブを入れる為のリュックにエクレールを入れて抱えた
ヒュウ達は気持ちを落ち着けて改めてレダルに向き合う、レダルは退屈そうに大欠伸をしていた
レダル
『フワアァ……ハァ…、終わりましたぁ?』
「…はい、…絶対にレミさん達に…手は出さないでください」
レダル
『私が今興味があるのはアライブだけです、それ以外は眼中にないですよ…』
「……それじゃあ…」
レダル
『…えぇ、再開といきましょう!!』
レダルが飛びかかると同時にエヴァルドラーベは腕の刃を横に伸ばし、一度違う方向に跳ねてフェイントを掛けてから詰め寄って何度も切りかかる、レダルは難なく躱すが 、アライブがスカーフによる追撃も行う、その追撃を全ては躱しきれず、腕で攻撃をいなしていく
ヒュウの攻撃の合間にレダルは拳を入れ込もうとすると、エヴァルドラーベの瞳が光り、意識を入れ替え、素早く後退し距離を取る、結果レダルの攻撃は空振りになった、そこにアライブは素早く両腕を振り、先程のヒュウと同じようにかまいたちを起こし、レダルを攻撃する
レダル
『ちぃっ!(先程のやり取りで少し再生しましたか、それだけでなく…攻撃の際もアライブ達の意識が変わるタイミングが不規則で捉えづらい…!更に攻撃方法も複数織り交ぜられるせいでいなすのが難しい…!)』
翻弄されるレダルに対して、エヴァルドラーベは追撃として続けて二度三度かまいたちを起こすと、レダルを包み込むような小さな竜巻を起こして捕らえて足止めさせる
レダル
『っ!これは…足止めか…!』
その隙に地面を強く蹴り上げ空洞の天井まで一気に跳び上がり、手を突き刺し、次に尻尾を刺し、そして足を天井に付けて安定させてからヒュウに意識を渡し、修行で身についた…右腕の刃を手の甲に添わせるように移動させ身構える
『ヤツノサイセイハヤッカイダ、ナラバスルベキハヒトツ…!イチゲキデシトメロ!!』
「うん!今こそ修行の成果を!この刃と…全力のスピードで…!レダルさんに…一緒に勝つんだ!!」
エヴァルドラーベは強く天井を蹴って竜巻の目から飛び込み、竜巻に囚われているレダル目掛けて急降下する、降下しながら振りかぶって右腕の刃を前に突き出し、元々のスピードに落下速度の勢いを合わせ、一気に貫く為レダルの頭部目掛けて突っ込んでいく
「うおぉぉぉーーっ!!!」
『ウオォォォーーッ!!!』
レダル
『うぐぅっ!?』
エヴァルドラーベによる急降下攻撃が直撃する直前、レダルを中心に強い衝撃や音が周囲や地盤に襲い掛かる、先に起こした竜巻により砕けた地盤の細かい破片が舞い上がり、離れたレミにも僅かに襲い掛かる
レミ
「くぅっ…!…なんて衝撃なの…!?」
辺りには土煙が舞い少しずつ晴れていく…
レミ
「あれは…?……っ!」
竜巻が消え…土煙が晴れ、レミが目にしたのは…
レダル
『………』
「…がっ……ぁ…!」
レダルが高く上へと掲げた刃の様に変化させた腕に、自身の特徴でもある模様のある胸を貫かれ、苦しみもがいてる…エヴァルドラーベの姿だった、刃に貫かれた胸やレダルの腕からは、エヴァルドラーベの足や身体を伝って体液がポタポタと音を立て、地面へ落ちる
あまりのショックにリュックを抱えた力が緩み、ガシャッ!と落ちた音が響き、膝から崩れ落ちるレミ、少しずつ状況が飲み込めてくると、受け止めたくない現実に、一気に感情が溢れだした
レミ
「…イヤァァァッ!!!!」
レダルは無言で刃の腕を振り払い、その勢いでエヴァルドラーベは壁に打ち付けられ、力無くうつ伏せに倒れる、穴を塞いでいた刃が無くなり、穴からはドクドクと体液が溢れだしていく
レダルが近づいていくと、エヴァルドラーベはビキビキと変化し、ヒュウとその頭の上に乗ったアライブへと変わった、どちらも左胸に穴があり、ヒュウからは血が、アライブからは体液が絶えず出てきていた、どちらも辛うじて息があるものの、いつ死んでもおかしくない状態だった
レダルはヒュウ達の頭側に近づき、足で二人を転がし仰向けにする、頭に乗っていたアライブは転げ落ちた勢いで少し多く転がり、ヒュウとは離れた位置に倒れる
「…ぐ…っ…!ア……ライ、ブ…!」
『…………』
死にかけの状態で微かに名を呼ぶヒュウと、応える事も出来ないほど弱ったアライブ
レダル
『…まだ生きているとは…しかし結局こうなるんですよ、…ヒュウ…あなたの弱さが、この事態を招いた…』
「…っ!……ゴホッ…ゴホッ…!(ぐ…油断…した、腕が刃に…変化するなんて…)」
ヒュウは先程の攻撃の時を思い浮かべた、エヴァルドラーベの攻撃が当たる瞬間、レダルの腕が刃に変化した、それにヒュウは虚を突かれてしまい…弾かれた所を一気に貫かれた
レダルが以前話したように、元々オールドドラーベだった事を考えれば、腕を刃に変化させる事自体は驚くべき事ではない、しかし…エヴァルドラーベは腕に刃が付いている事や、これまでの戦いでレダルは拳で戦い、その素振りを全く見せなかった為、その意識が回らなかったのだ
レダル
『…本当は刺すつもりなんてなかったんですよ?…もっと楽しませてもらうつもりでしたし…でもそれだけ…身体が思わず勝手に動いて殺したくなるほど、あなたという存在が嫌いなんですよ…』
「…ハァ……ハァ…うっ…ゴポォッ…!」
ヒュウは咳と共に多くの血を吹き出す、そして自身の身体が急速に冷えていくのを感じ始めていた
レダル
『安心しました、もう限界のようですね?…でももう少しだけ耐えてください?最期に…良いものを…見せてあげますから』
レダルは妖しく笑い、アライブの頭を掴んで拾いあげ、グッと握って力を込める、喋り出せなかったアライブから搾り出されるような声が漏れ出る
『…ガアッ…!?……ガアァッ…!!』
「ア…ゴホッ!…イブ……!…や…め…!」
アライブの悲鳴が途絶えて意識を失い、腕の触手が力無くダランと垂れると、ドサッと何かが落ちる
レミ
「アライブ!!……?…あれって…?」
遠くのレミにも見えたアライブが落としたそれは、以前ヒュウが敗れて運ばれた病院で見た異質な腕
レダル
『…ん?これは…あぁそうですか、触手や刃に変化する腕の中に隠してたんですね?大人しく隠してるとは…アライブは良い子ですね…今となっては…あくまで力への欲止まりで終わってしまい…これも無意味でしたね』
「ゲホッ!……アライブを……離…して……!」
レダル
『駄目ですよ…言ったでしょう…良いものを見せると、…あなた達を見てから私…試したんですよ、アライブのようにドラーベを食べて強くなれるのか、…でも駄目でした、現存する三種のドラーベを食べても全く力など得られなかった、…あれは…アライブ特有なのではと…』
「…ゴホッ…(急に…何を…)」
レダル
『しかし私は考えました、私の力が強すぎるが故に強くなれない、ならばっ!…現存するドラーベよりも…強いドラーベを食べたら!…強さが増す可能性があるとは…思いませんか?』
「……ゴポッ…(…強い…ドラーベ……まさ…か…!)」
ヒュウの脳裏に最悪の予想が浮かび、徐々に絶望した表情に変わり、なんとか止めようと這いずって近付こうと藻掻いた、しかし力は全く入らずに手を先に伸ばせるだけ、今は鉛の様な重さに感じる身体が近付く事は一切無かった
レダル
『…その顔!気づいてくれたんですね…!大丈夫…あなたが死んでも…アライブは生き続ける事が出来るんです!……私の身体の…一部としてね…!』
レダルはグバァッ!と大きく口を開き、拾い上げたアライブを口へと近付ける
「やめ…ゴホッ!…や゛め゛ろぉ゛……!」
『(ヒュ…ウ……)』
「……っ!(アライブ…!?)」
『(…メサキノ…ワレニバカリ…トラワ…レルナ…)』
「…ゴホッ!ゴホッ!(こんな時に…何を言って…!そんな事を言えるなら…速く…速く逃げて!)」
『(モウ…カラダガウゴカン、ダガ…セメテ…ノゾマセテクレ)』
「…うぅ…っ…(望…み?)」
『(…ヒュウ…イキロ、ソシテ…ワレヲワスレルナ、ナンセ…ヒュウハワレノ…ワレハ…ヒュウノ……アイボ…)』
バクゥッ!!
「……え?」
レミ
「…えっ…?」
アライブが最期にヒュウに伝えたのは、ヒュウが付けたアライブの名前の由来にもなった…ヒュウのアライブに対する願いだった
しかしそれすら遮られて行われたのは、レダルがヒュウの視界に映るように丸ごとアライブを頬張り、呑み込んで見せる事、レダルの口の中へアライブが消えていき、少しずつゴキュゴキュと呑み込む毎に首がアライブによって膨らみ、ゆっくりと首元へ向けて膨らみが動き、ゴキュリと大袈裟に嚥下音を鳴らしてみせた後、膨らみは消えていった、そして丸ごと呑み込んだアライブによって、引き締まった腹部は歪に膨らみを作る
そしてレダルはヒュウを拾い上げ、わざとらしく顔を近付け
レダル
『ゲエェフッ!!…おっと、すみません…少々お下品でしたね』
「…う…ぁ…ア……アラ……イブ……?」
レダル
『…大丈夫、まだ…終わってないですよ?』
「う…?…ぐああぁぁっ!?」
レダルは持ち上げたヒュウの足を刃で貫く、その痛みによって霞む意識は無理矢理ハッキリさせられ、その後膨らんだ自身の腹部へと近付ける、するとそこからギュルギュルと音を立て始める
「…うぐ…ぁ…!…やめ…がはっ!…やめ…ろぉ゛……!」
音はドンドン大きくなりギュルギュルと音を立てながらアライブはあっと言う間に消化され、膨らんだ腹部は元の引き締まった腹部へと形を戻した
「……!!……あぁぁぁぁぁあ゛あ゛あ゛っ!!」
死にかけの身体に似つかわしくない、ヒュウによる言葉にならない悲痛の叫びが周囲に響き渡る、その様子に何も出来ない状況のレミも、より深い絶望に囚われる
レミ
「…ひど…い…酷すぎる…」
ヒュウの頭に、これまで起きた出来事が走馬灯のように蘇る、ドラーベに襲われた事から今さっきまで共にレダルと戦っていた、アライブとの記憶が次々と鮮明に蘇り…全てにヒビが入ってガシャンと壊れていく
レダル
『フフッ…フフフフッ…アーッハハハハハハハッ!!』
レダルはヒュウを捨てるように放り投げると、飛ばされたヒュウは力無く倒れる、起き上がる事さえままならず、意識を…生命を失いそうになりながらも…うめき声が漏れながら後悔の思考が僅かに働く
「(…う…あ…ぁ…アライブ…本当に…本当にごめん、結局俺は…あの日から…強くなってなんかなかった…何も変わらないままだった…)」
思考に浮かんだのはレダルと初めて戦ったあの日、力で全く敵わず、戦いの中で意識を失ってしまった時の事
レダル
『最期に良いものが見られましたね!…しかし残念ですが…、アライブを食べても私の強さは全く増しませんでした…やはり食べても強くなんてなりませんでしたよ、死んでいくあなたに代わり…アライブは私の中で…私の一部として…!永遠に生き続ける事が出来る!…ですのでヒュウ…後は安心して…喜んで死んでください……アハハハハハッ!!』
「(…アライブは…『イキロ』と言った、本当だったら…俺が言うべき事なのに…でも…俺も…もう保たない…、例えもうエヴァルドラーベになれなくても…せめて相棒として…最期まで立ち上がって…レダルさんに…一矢位は…報いなきゃ…)」
レミ
「…!…ヒュウ…!?」
レダルが顔を押さえ高笑いをする中、レミの驚いた声で押さえた手を離すとそこには…、足を開き…少し項垂れながら立ち上がるヒュウの姿があった、空けられた穴や口から血がドクドクと滴り、足下には血溜まりが出来、身体も崩れ落ちそうに時折ガクッと崩れかけ…呼吸をすればヒューヒューと音が聞こえ、その度に肩も上がるほど安定していなかった
レダル
『…醜い上にしぶとい、大人しく死んでればいいのに…本当に私を苛つかせます…ねっ…!』
レダルは片腕の刃を振り、ヒュウに衝撃波をぶつける、しかし衝撃波はヒュウに直撃する直前に拡散し、僅かに髪や身体を揺らすのみに留まった
レダル
『…何?』
レミ
「ヒュウッ…!お願いだから…もう無理しないでっ!」
怖さや悲しみで身体が動かせない代わりに大声を出すレミ、そんな声が届いてるかどうかは関係無く、ヒュウは吐血しながら呟く
「……ゴポッ……ご…ん…」
レミ
「…ヒュウ?」
「…ごめ…、っと…ゴホッ…っしょって…」
レダル
『…何を言っている?』
「…ずっと…一緒だと…言った…のに……」
レミ
「…!」
何とか耳を澄ませて聞こえた…ずっと一緒という言葉、レミの脳裏に浮かんだのは、ヒュウの首にスカーフが現れた時の記憶
時折むせ込み、血を吐き出しながらもヒュウがしていたのは…大事な相棒への…謝罪、言葉では謝罪しながらも…思考には別の事を考える…今身体は必死にに崩れない様にするのがやっと、一矢報いる為に何が必要かどうか考えていた、それによって…ヒュウの正面に想像上の偶像…エヴァルドラーベが現れた
ヒュウのみに見える偶像…エヴァルドラーベは、項垂れるヒュウを見つめ…正面にただ立っている、その身体の状態はヒュウと同じく…ボロボロで胸や足に穴が開けられていた、しかしその瞳に黄色は無く…全て赤黒い、が…既に死んだアライブという訳ではない
「(…悲しみに暮れるより…まだ思考が動く内に…自分が果てる前より先に…ただ一矢だけでも報いる為に…奮い立たせる為に…一番必要な事を…思い…出すんだ、…今の俺に必要なのは…あの時…メックさんを助けようとした時…アライブが誘導した時の俺は…)」
浮かべたのはあの日…イールフで初めてエヴァルドラーベとして動いて…アライブに誘導された自分、そんなヒュウの意識に答えるように…偶像のエヴァルドラーベから、ヒュウの声でありながらも重苦しい声が聞こえ…呼応する
偶像のエヴァルドラーベ
「(…無我夢中に、阻む者全てを敵と認識した)」
当然、あくまでヒュウの想像上の偶像である為、その存在や言葉を周りは認識出来ない、レダルはヒュウの謝罪に対し
レダル
『ハハ…、別に謝らなくてもいいんですよ?違うのは時間だけで、行き着く先は同じですから』
「…ゴポッ、…そう…俺…も、すぐそっちに…」
レダルへの返答をしながらも、思考を続ける
「(…思い…出せ、偽りでも抱かされた…理不尽に対する…無我夢中になった気持ちを…)」
偶像のエヴァルドラーベ
「(思い出せ、この身に宿した…短い生涯の中でかつてない程に溢れ出した…あの感情を…)」
偶像のエヴァルドラーベ
「(…あの日俺ガ宿シタ…怒リ…殺意を…もう一度…!)」
偶像のエヴァルドラーベは、アライブの瞳よりも血で濁った様な赤黒い瞳をギラつかせ、ヒュウの視界に映るように…ベッタリと血塗られた滴る手を差し伸べる
「(…もう…一度…?…いや…足りない)」
偶像のエヴァルドラーベ
「(……何?)」
「(…そんな程度じゃ全然収まらない、…レダルさんももちろん許せない…けど…何よりも…誰よりも…アライブの力になってあげられず…先に死なせた…いつまで経っても弱いままの…俺自身が一番…!……許せないんだ!!)」
ヒュウの強い感情に、偶像のエヴァルドラーベは一度手を差し伸べるのを止め、赤黒い瞳を細めながら拳をギュッと強く握り締める
偶像のエヴァルドラーベ
「(…ならばドウスル、アノ時ノ感情ですら足らず、他に強い感情を知らナイノデアレバ、コレ以上補ウ物ナド…)」
「(…知らない何かで補う時間は無いし…あの時の感情があるなら…補う必要も…ない)」
偶像のエヴァルドラーベは首を傾げる
偶像のエヴァルドラーベ
「(…どういう意味だ?ソレダケではタリナイのだろう?何ヲ考えている)」
「(…皮肉にも…レダルさんがヒントをくれたんだ、全てが怒りや殺意で事足りるなら…不必要な物を…どうにかすればいい…)」
偶像のエヴァルドラーベ
「(不必要…?…ッ!マサカ!?)」
「(…レダルさんに…たった一矢でも…報いる為に…俺は…)」
「(俺を…殺す)」
偶像のエヴァルドラーベ
「(!?)」
ヒュウがトラウマとして恐れていたあの時の感情を求めた、それ自体は良い、しかし…ヒュウはそれだけでは足りないと告げ、予想外の思考に行き着いた
ヒュウが想像している偶像でありながらも、ヒュウの導き出した考えに驚き、思わず偶像のエヴァルドラーベは一歩引いて呟く
偶像のエヴァルドラーベ
「(…ソウ…カ…そう…ダネ)」
レダル
『はい、それでは…さよ』
「…だけど!!」
遮るような強い声に一瞬レダルは怯む、しかし声を強めた事によって、ヒュウの吐血や出血の量も増しているが、ズレていた思考は次第に肉体に追い付いていく
「…ゴホォァッ!!……レダルさんは…あなただけはぁ…!」
「…絶対に…!許…っさないぃ!!」
レダル
『許さないぃ?あなたに許されなくても私には何の影響もありません、一向に構いませんよ』
偶像のエヴァルドラーベは体勢を立て直して一瞬消えると、ヒュウの横に現れて並び(他の者には見えていない)ゆらりと項垂れて動きをシンクロさせ…ヒュウが願った事を思い浮かべて不気味な笑みを浮かべる、すると…次第にゆっくりと消え始め
「…レダ…ル…今度…コソ…オマエ…を……ゴポッ!!」
偶像のエヴァルドラーベ
「(大事な相棒を救エナカッタ…弱イダケノ俺ヲ…!!)」
徐々に決意を高めていくと共に動きがシンクロするように顔を上げてレダルを睨むと、ヒュウと偶像のエヴァルドラーベの瞳が黄色く光ると一瞬強く輝いた
ヒュウ・偶像のエヴァルドラーベ
「……殺すっ!!」「(……殺スッ!!)」
「…う…ぐぅっ…!!……ぐおおぉぉぉーーーっ!!!」
偶像のエヴァルドラーベが完全に霧散するのを皮切りに、レダルを睨んだヒュウは身体をやや反らしながら雄叫びをあげる、するとそのヒュウの中心から衝撃が広がり、強い力の高まりに呼応するように近くの地盤が浮き上がる
レミ
「な…何…?…何が…起きて…?」
レダル
『なんだ…地面が…大気が震えてる…?…一体どうなっている…!』
口や傷口から更に血が噴き出しながら、ビキビキと似つかわしくない音を立てながらヒュウの身体にヒビが入り、身体が変化し始める、ゴキゴキと骨格を変異させて全身が大きくなっていく
「ぐおおオォォォーーーッ!!!」
瞳が黄色くギラつきながらヒビ割れた身体が音を立て、開けられた穴の内部からも細胞が埋めていくように塞がり、人肌の皮膚も硬い甲殻の様な皮膚に変異していく、そして背骨の一部が飛び出して尻尾の様に伸び、首のスカーフもググっと背中側に伸びていった
死んでいてもおかしくない異常な状態で、異様な光景で異音を放ち続けた変異を終えると…浮かんだ地盤が続々と落ちていく
そして…
『「…ヴウゥゥ…グオ゛オ゛ォ゛ォォーーーッ!!!」』
ググっと身体を縮こませて力を溜め、それを解き放つ様に体を反らしながら、黄色い瞳が眩く輝き、先程までの雄叫びが可愛く思えるほど、悍ましき獣の如き大きな咆哮が轟いた、それは衝撃波となりながら辺りに広がっていき、近くのレダルは防御しながらも少し後退し、少し離れたレミにも弱めの突風に吹き付けられた
レミ
「…っ!…この耳を…劈く様な咆哮…いつもよりも…、…いやそれより…どうして…?」
レダル
『ちいっ!これは…!?…何故だ!アライブは私が喰らった!!それなのに何故その姿に…いや!そもそも貴様は死にかけていたはずだ!!』
衝撃波が次第に収まり、驚くレミとレダルの視界に映ったのは、本来アライブがヒュウを喰らう事で変化する事が出来るはずのエヴァルドラーベ…そのものだった
「オ……ォ……」
雄叫びを終えたヒュウは反らす事を止め…少し顔を上げた状態で事切れた様に身体が軽く項垂れた…遠くのレミにもその顔は見え、少し違和感を覚えた、それは先程まで光っていた上下の瞳が光っておらず…真っ黒だった…そしてそのまま…動く気配が無い
レミ
「…どうして…エヴァルドラーベに…?…ヒュウ…?」
少し前、レミを含めたクルー達は、ミレイ達からエヴァルドラーベの変化の映像とその時の状況の説明を受けていた、変化の直後の咆哮をしている時は、今の様に瞳に光が無い…と
ただ基本的にはすぐに光が宿り、ヒュウが主体で動く事が多い、事前に相談すればアライブ主体ですぐに動く事も可能だと言う説明も聞いていた
それを踏まえると今回の変化は…色々とおかしい
何よりもまずおかしいのは、エヴァルドラーベに変わる為に必要なアライブがいないのに、ヒュウがエヴァルドラーベへと姿を変えた事
その変化も異様で、通常はヒュウがアライブに喰われ、ドロドロに変化しながらヒュウを呑み込んで伸縮を繰り返し、溶かしながら球体へ、そして球体から形を変えていきエヴァルドラーベへと変わる
しかし今回はアライブがいない上、ドロドロに包まれも溶かされもしないでヒュウ自体の姿や体躯が変わっていった
更に変化の直前や変化の最中、咆哮する際も瞳が黄色く輝いていた事もおかしい、通常の変化中…つまりアライブに呑まれてる際の内部の様子に関しては情報が無いが、少なくとも共に過ごした中でエヴァルドラーベにならずにヒュウの目が黄色く光る事は無かった
最後に細かな事ではあるが、今回ヒュウが変わったエヴァルドラーベの姿に一か所だけ違いがある、それはアライブにあった物と同じ胸の傷、今のエヴァルドラーベには胸の傷が綺麗に無かった…が、変化前にボロボロだったヒュウの傷が無いのは全身に言える事なので、そこまで重要では無いとも考えられた
変化出来た理由自体はともかく、普通ならばアライブが存在しない今、ヒュウ主体で動けると思われる
…だが、ヒュウは先程までアライブと共にエヴァルドラーベとしてレダルと戦い…胸を貫かれた、そして変化が解けた際もアライブ共々その穴は残り…少なくとも重体…正直死んでいてもおかしくない
エヴァルドラーベに変化した事で全ての傷は表面上塞がってるようにも見えるが…瀕死の状態での謎の変化…おそらくではあるが、普段のヒュウの様子から変化自体にも多大な負荷がかかっているのをレミ達は知っていた
その為にヒュウの気力はもう…無くなってしまったと…レミは考えた、そして最後の考えはレダルも同じで、呆れるように言葉を吐き捨てる
レダル
『はっ…予想外の変化は驚きましたが、瀕死の身体が耐え切れず、力尽きましたか…まぁ最期に良いものを見せてくれた…ということでしょう』
レミ
「…そ…んな…」
その言葉の通り、レダルが近寄ってもヒュウに反応が無く、顔を少し上げたまま身体が軽く項垂れたまま動く気配が無い、レミは何度も呼び掛けるが、ヒュウが反応する事は無く
レダル
『…さようなら』
レダルは無情にも腕を刃に変え、ヒュウの首を切断する為にとうとう刃を振るった
ズバァッ!!
レミ
「ヒュウッ!!」
レダル
『…グゥッ!?』
レダルの刃は、ヒュウに巻かれていたスカーフが弾き返す、その速さや鋭さは斬撃の様になり…レダルを大きく後退させる、それによりレミの脳裏にも少し希望が過り、その希望を言葉にして発せた
レミ
「もし…かして…アライブ!?」
レダル
『…まさか!?…いや…アライブの反応は無い!これは一体…!?』
スカーフはゆったりとヒュウの周囲を揺らめき…
ブワッ!!
大きく広がり、項垂れるヒュウの全身を包み込んだ
レダル
『!?』
レミ
「…ヒュウ!?」
スカーフは包んだヒュウの…エヴァルドラーベの姿を象るように伸びて包んでいく、そしてスカーフらしからぬ、ビキビキと異音を立てて形が整えられていく
音が鳴り止むと、そこには全身をスカーフの赤色の甲殻を纏ったかのようなエヴァルドラーベの姿があった、しかしその姿は大まかに同じ姿でありながらもいくつか違いがあった
まずスカーフの様な真紅の全身をベースに、頭部の角先、鎧の様な肩、手や足先や尾の先までと、部位を問わずに僅かに血管の様な模様が浮かび、ドクンと不規則に脈動していた
その模様は特に顔の黒い部分が分かりやすく、赤い模様が侵食してるかの様だ
頭部の一部にも従来の形の面影がありながらも、その頭部をまるで赤い竜に咥えられてるかのような形になっている
刃を移動出来る様になった腕の刃は消えてすらっとしていて、両手は少し大きく更に鋭く変化していた
首に付いていたスカーフは、ヒュウを包んだ影響かどうか不明だが消えていた
そして…黒い顔と頭部にギラリと瞳が浮かび上がって黄色い光を宿した
…しかしその直後、黄色い光は侵食されるように色が変わり…黒い光の瞳を宿したヒュウは
『「…グゥウオ゛オ゛オォォォーーーッ!!!」』
レダルへと向いて咆哮し、先程よりも耳を劈く様な大きな音と強い衝撃が襲う、方向は違う位置にいるレミにも、耳がビリビリする様な感覚が襲った
レミ
「…うぅっ…!」
レダル
『ぐっ…!なんてやかましい…!…いや…そんな事はどうでもいい、奴はスカーフで自身を包んだ…?いや…それだけでなく…更に変異したのか?』
レミ
「…更に…変異?あれは…ヒュウに何が起こってるの?」
『「グウゥオォォァァアッ!!」』
変異したヒュウは咆哮を終えると共に、獣の如くレダルに飛び掛り、回るような勢いで蹴り飛ばした、レダルは咄嗟に攻撃を防御するも、完全には防げずにバランスを崩されながら後退させられる、着地したヒュウは、ゆっくりと歩き、レダルを後退させる前にいた場所で…何かを拾う
レダル
『…つぅっ!防いでもこれだけ押し込まれるとは、…あれは…?先程アライブが落とした…私の腕…?』
ヒュウの覆われた頭部の一部がグバァッ!と音を立てながら開き、拾い上げたレダルの腕を…バクゥッ!と、喰らい始める
レダル
『なにっ!?』
レミ
「ひっ!?」
レダルの腕を強引に押し込み、ングングと喉を鳴らしながら丸ごと呑み込んでいき、最後にゴクリと嚥下音を鳴らした、開かれた頭部の口元は元の形に戻り、腹部からは消化音が響くと
『「…カハァァァァア……!」』
ヒュウの口元から薄く煙が広がる、先程レダルがアライブを呑み込んで行った様な…喰らった後のゲップの様な事をすると、不気味な笑みを浮かべている
今までのヒュウと比べて明らかに異様なその姿にレミの恐怖は増していく
レミ
「ち…違う…ヒュウはあんな事…あれは本当に…ヒュウなの?」
レダル
『コイツ…!』
そしてヒュウはギラリとレダルを睨むと再び正面から飛び掛かっていく、レダルは受け止めようとするが、瞬時に視界からヒュウが消える、驚くレダルの背後から強烈な衝撃が襲い…レダルは吹き飛ぶも、咄嗟にその勢いを殺す為空中で尻尾を使い反転する、するとそこには追撃しようと飛び掛るヒュウの姿が
『「グウオォォ!!」』
レダル
『速い!?チィッ!!』
レダルは腕を刃に変え防御姿勢に入るも、ヒュウは構わずに殴り飛ばす、拳に刃が刺さりながらもレダルを強く吹き飛ばして壁に打ち付け、レダルは地面へ落ちる
レダル
『グッ!?』
レダルは素早く立ち上がり体勢を整える、ゆっくり歩いて向かってくるヒュウの拳はレダルの刃によって出来た筈の傷が無くなっていた
レダル
『何?どうなっている?…確かに攻撃の際に私の刃が刺さり…傷を負ったはず…!例え再生だとしても今までの比じゃない…!』
『「…グウゥォォゥ…殺す…グォロス…!」』
レミ
「ヒュ…ウ…」
あまりのヒュウの豹変ぶりに、心配していたレミも身体が震え、ヒュウを恐れてしまっていた、レミは恐れを少しでも和らげようと、リュックに入れた壊されたエクレールをギュッと抱き締める
その後もレダルは怯む事なくヒュウへと突撃して、互いに素早く移動しながら刃と拳はぶつかり合う、ヒュウとの単純な力ではレダルに分があった、レダル側は刃である為…一方的に攻撃出来るはずが、貫かれながら拳が届いたり、攻撃の合間に拳を入れ込まれていた
このままでは良くないと判断したレダルはヒュウが背後に回れぬよう壁に背を近付ける、そして刃を振るって衝撃波を放った、ヒュウは構わず歩き、ビシッビシッと血の様な物が吹き出しながら身体に深く鋭い切り傷が付いていく、しかし傷がすぐに塞がっていく様子が見れた
レダル
『っ…やはり再生している…それも私と同等レベルに…だがなぜ…?アライブは私が丸ごと食べ…消化した、…それなのに何故死にかけだった奴は立ち上がり、あの姿に変化する事が出来、スカーフに包まれて変異し、戦い…私を追い詰めている…!アライブならともかく…よりにもよって無力な人間である奴が!!』
ヒュウがゆっくりと近付くのをいい事に、レダルは上に飛び上がっていく、それを目で追うように、ヒュウはゆっくりとレダルの方向へ向く、そしてレダルは先程のエヴァルドラーベと同じように天井に飛び付く
レダルはあくまで自分の方が上だと知らしめる為だけにヒュウ達と同じ攻撃方法をしようとした、急降下しつつ腕を刃に変えヒュウを貫こうと、ただエヴァルドラーベとは地力が違う、力も速度もレダルの方が上な為、見掛けが同じ技だとしても威力は桁違いとなる
レダル
『いい加減…死に損ないのあなたにトドメを刺してあげますよ…あなた方が行おうとした攻撃と…全く同じ攻撃でね…!』
その直前、レダルが飛び上がる時、ふとレミはヒュウが追い掛けずに大人しく見ている事が気掛かりになる、先程まで素早く怒涛の攻撃を繰り広げていたのに…今はただ見上げている…しかしよく見ると、加えられたような頭部の内側…顔付近が薄っすら赤く光り始めていた、更に関連があるかは不明だが…僅かに地鳴りも感じる
それと同時に、レダルは急降下を開始した
レミ
「…あれ…は……?」
レダル
『…今度こそ…死ねええぇぇぇーーーっ!!……!?』
レダルはヒュウを貫く直前まで接近した時になってようやく、自身を見据えて溜めている赤い光に気付く、しかし既に回避を選ぶ余地は無く、先にそのまま攻撃を貫通させようとする、するとヒュウの頭部の口元がグバァッ!と開き…
……カッ!!
レミ
「っ!?」
放たれた赤い光は急降下するレダルを呑み込み、勢いを殺すどころか押し戻して吹き飛ばしながら火山の天井を貫く、その勢いは凄まじく…遥か上空までその光は届いた
レダル
『グ…!?グァァァッ!?こ…これはまさか、あの時の!?』
レダルの脳裏に浮かんだのは、以前ヒュウ達と地下で戦い、倒した後に受けた赤い光、しかし威力は防御で軽減出来たその時の比ではなく、レダルの身体は再生が追いつかないほど焼け付き、一気に崩れ落ちていく
レダル
『バ…バカな!?私が…私が人間如きに…!?この…私があぁァァァーーーーッ………!?』
遥か上空でレダルの断末魔が響き、赤い光が消えると共に…レダルは崩れ去った…
『「カハアァァ……」』
赤い光を放ったヒュウの顔付近から煙が勢い良く噴き出し、そして開いた頭部が閉じた、光が通った周囲や天井には痕跡のように焦げ付いたような跡や匂いが残っている、離れたレミにも光の余波による、僅かに暖かな熱波が肌に感じられ、僅かに残光も残っていた
レミ
「…うっ…ど…どうなったの?…レダルに…勝った…の…?」
『「…ウゥゥゥ…グウウゥゥ…!…殺…す……コロ…ス…」』
レミ
「…えっ?」
未だに唸るヒュウはくるりと向きを変え、レミの方へゆっくりと不気味に頭部をガクッとさせながら歩き出していく
『「…ウゥゥ…殺す」』
レミ
「え…?殺すって…まさか…、…ヒュウ…レダルは…倒したのよ…?」
『「グゥゥ…コロス」』
レミ
「あなたは…レダルに勝てたのよ…!」
『「…コロス…殺す…!」』
レミ
「アライブの仇は取れたの!だからお願い…!…もう戦わなくて良いんだって!」
『「殺…す…コロ…ス!」』
レミ
「…元に戻ってよっ!!ヒュウッ!!」
『「殺スゥゥ!!」』
徐々にレミへと近寄り、言葉も迫力も増していくヒュウ
…すると
グラッ…!ゴゴゴゴゴッ!!
『「…グッ…ウウゥッ!?」』
レミ
「っ!?…これは…地震?…しかも大きい!?」
突如その場に、その島に大きな地震が起こり、震源にいるレミやヒュウは動けないほどの揺れが襲う、揺れは数十秒に渡り続き、なんとか周りが崩れずに収まった…かに思えた
ゴゴゴッ…ゴポォッ!!
レミ
「…なんとか…収まった?…でも…今度は何の音?…少し…熱い…?…もしかして…!戦いの振動や…あの熱を帯びた光のせいで…地殻に影響が?…このままじゃ危ない…?…ねぇ!…ヒュ…!」
ガシッ!
レミ「…うっ…ぐ……!?」
レミは深く考え込んでいたせいで、歩き寄っていたヒュウの接近に気付かず、首を掴まれ持ち上げられる
『「殺ス…!」』
レミ
「…く…ヒュウ…!正気に戻って…!このままじゃここは…!……!!」
ゴポッゴポッ!
ヒュウの立っている地面に、点々とマグマが湧き始め、地殻からの熱が一気に噴き出すように伝わってくる
ヒュウ達とレダル、そしてアライブを失った後に変化したヒュウとレダルの戦いによって火山の地殻は刺激を受け、地鳴りは極限まで強まり、今まさに噴火の時を迎えようとしていた
レミ
「…ぐぁっ!?」
その最中にレミの首を締める力が一瞬一気に強まる、それによってレミは目が開けづらくなり、次第に閉じてしまう
『「殺ォ…」』
レミ
「…ヒュ…」
『「…すぅっ!!」』
……ブンッ!!
レミ
「…うっ…?…ごほっごほっ!…っ?」
レミは…首の苦しみから解放されていた、その代わりに全身に風を受けてるような感覚に包まれる、目を急いで開くと、立っているヒュウが…ドンドン遠ざかる光景が映った、自分の状況に理解が追いつかない
そんな中…僅か数秒の刹那の事ではあるが、遠ざかるヒュウの瞳が…黒ではなく黄色く光っていたのが、レミの中で強く印象に残った
それはエヴァルドラーベの主体の状態を表し、アライブなら赤黒く…黄色は…ヒュウである事を示していたからだ
…カッ!…ドォンッ!!
そしてヒュウが立っている地面は真っ赤に光り、爆発するようにマグマが勢い良く噴出し、レミを見上げるヒュウがマグマに呑み込まれる姿がレミに映る
レミ
「…そ…そんなっ!?…うぅっ!?」
エクレールの入ったリュックごと飛ばされたレミは、先にヒュウが放った光によって出来た穴を勢い良く通り抜ける、その勢いに意識が飛びそうになりながら遥か彼方の上空へと飛び出していった…
…その頃、ワグアリゾート上空にて
???
「…まずいな、もしも情報通りだとしたら火山は…、…?…何…あれはっ!?…くっ!サブアーム展開!…間に合ってくれ!!」
レミの飛ばされた勢いが浮遊感へと変わり、落下へと変わっていく
ガシッ!
レミ
「…?」
その時レミの身体を何かが掴んだ、状況が分からず周囲を見渡すと、自身を掴む何かの上部が目に映る、そこに通信による音声が響く
???
『レミ!無事かっ!?』
レミ
「…この…声…ポート…さん…?」
ポート
『そうだ!一体何があった!?』
レミ
「…何がって?…!」
レミ自身理解が追いつかない中、視界に遠ざかる火山が目に入る事で、意識がハッキリする
レミ
「…駄目!戻ってポートさん!ヒュウがっ!ヒュウがぁっ!!」
ポート
『落ち着けレミ!今戻る事は出来ん!もうあそこは…!』
…ドオォォォンッ!!!
ポートが言葉を言い切る前に、火山は黒煙とマグマを噴き出し、巨大な爆音を轟かせ…噴火した
レミ
「あ……あぁ……そん…な…」
レミ
「…っ!…ヒュウゥゥーーーーーッ!!!」
ポート
『…一体どうしたんだ…ヒュウに…何かあったのか?』
火山からはマグマや噴石が次々と飛び出していく、このままでは危険と判断し、レミの叫びの疑問を抱えたポートは、戦闘機を動かして急いでプレデシャンへ移動した
ワグアリゾートでは、巨大な地震や活動を停止していた筈の火山が噴火した事で、島中パニックになっていた
プレデシャンへ戻ったポートはレミを医務室へ運び、持っていたリュックに入っていた破壊されたエクレールをメックに渡した、そして戻ったポートを含むミレイ達は、現地の人と協力し救助活動に出る
ポートが戦闘機で噴石を被害に注意して破壊しながら、サブアームを使って山肌の一部を崩し、流れ出るマグマの方向を変える
地上のミレイ達はポートからマグマや噴石の情報を受取り、現地の役所などへ伝え避難誘導を行う、あっと言う間に時間は経ち、気付けば夜中になっていた、ミレイ達や現地の人の懸命な活動により、避難は滞り無く行う事が出来…束の間ではあるが、一応は安息を得る事が出来た
一段落ついた事により、ミレイ達がプレデシャンへと戻ってきた、ミレイとポートはレミのいる医療ルームへと入っていくと、レミがベッドに呆然と座り込んでいた、今涙は出てないものの、その跡は残り…目の周りは泣きはらしたかのように赤くなっていた
ミレイは憔悴したレミの状態を見て声を掛けるのを躊躇った、その代わりと言わんばかりにポートが声を掛ける
ポート
「…レミ、そんな状態で申し訳ない中敢えて聞くが…一体何があった、何故お前は火山から飛び出して来たんだ…?」
レミは力無く囁く
レミ
「ポートさんこそ…どうして…あそこに…」
ポート
「…買い出しから戻るとお前達の姿が無かった、始めはただ遊びに行ったのではと思ったが、火山に向かうお前とエクレールの情報があってな、艦長がそれを気にした事で何か起きた可能性を考慮し、俺は一足先に小回りの利く戦闘機で火山付近まで向かった」
ポート
「すると途中で火山が揺れているのを確認し、艦長達からも地震が起きていると連絡を受けた、俺は地震で火山に異変が起きないか…もし何かが起きた際に動ける様に備え、空中でお前達を探しながら待機していたんだ、そこに…火山を貫くような赤い光が表れ、警戒しつつ穴に近付こうとした時、お前が穴から飛び出して来たんだ」
レミ
「……」
ポート
「レミ…もう一度聞く、火山で何があった…そして何故エクレールは破壊されている、噴火の直前…お前はあの場所で何かを見たんじゃないか…?」
レミ
「…噴火の…直前…」
その時の事を意識すると、充分出し尽くしてすっかり枯れた筈の涙が瞳に溜まり、ポタポタと零れ落ちる
レミ
「…ヒュウが…ヒュウが助けてくれたの……最後のあれは間違いなく…!…ヒュウだった…!」
ミレイ
「ヒュウ…?確かにヒュウ達もいないって聞いたけど…もしかして元々一緒ではあったの?」
レミは火山に行く事になった経緯、そしてヒュウ達を追い掛け、火山の空洞に降りてからの出来事を震えながら伝える
ビーチでヒュウ達の様子がおかしく、こっそり様子を見に行くとヒュウ達はエヴァルドラーベに変化して何処かへ向かった、急いで出来る支度をし、追い掛けた先の火山の空洞でヒュウ達とレダルの戦いに遭遇し、レミ達は負けそうなヒュウ達を一時的に助けるも、エクレールを壊され逃走手段を失う
ヒュウ達は態勢を立て直して渾身の一撃を繰り出すも…レダルがそれまでしなかった攻撃…刃に変化した腕で胸を貫かれて敗れた、そしてエヴァルドラーベの変化が解けて…終わってしまったと思ったその時、死にかけのアライブを…同じく死にかけのヒュウに見せ付けるように…レダルはアライブを丸ごと食べ…呑み込み…消化した
ミレイ
「…決着が着いた上で…なんて…惨い事を…」
そして…全てが終わってしまったと思った時、死にかけのヒュウが辛うじて立ち上がった…それだけでも驚くべき事だが…それだけに留まらなかった、なんとヒュウはアライブに喰われる事なく、何故かエヴァルドラーベへと変化した
ポート
「…何?アライブを失ったのにか…?」
レミ
「…うん」
いくつか不自然な所を感じつつも(ミレイ達におかしいと思った事を説明してみるも、その場では何も分からなかった)変化した事が起死回生になるかと思いきや、エヴァルドラーベは項垂れて瞳の光が消えて顔には光が全く浮かんでいなかった、それによって少なくともヒュウの意識が無い事も分かると、レダルが近付いてトドメを刺そうとした、その時突然スカーフがヒュウを包み込み、更に変異した
ポート
「更に…だと?」
レミ
「…うん、全身…スカーフのような赤色になって…形も少しだけ変わっていたの…それと…その時瞳は…黒く光ったの」
ミレイ
「…黒?黄色や…赤黒い色ではなく…?」
レミ
「…正確に言えば、スカーフに包まれて赤くなった直後は、頭部も真っ黒な顔にも…黄色い瞳が浮かび上がって光ってた、でもすぐに黒く染まる様に変わっていって…」
変異を遂げたエヴァルドラーベの瞳が黒く光ると動き出し、以前レミ達が見た事がある、アライブが隠し持っていたレダルの腕を喰らった、そしてエヴァルドラーベとレダルの戦いが再開された最中、レダルは空洞の天井からエヴァルドラーベを貫こうとした時、エヴァルドラーベから赤い光が放たれ…火山に穴を開けながら、レダルを消し炭にしたという
ポート
「赤い…光…それがあの時の光か…まさか…アライブが死んでからレダルに勝つとはな…」
レミ
「…レダルを倒したヒュウは、なぜか私に狙いを変えたかのように歩いてきた…、何度か呼び掛けたけど…意味は無かった、でもその時…戦いで刺激を受けた火山が活性化を始めて…火山が噴火する事を考えて動けなかった私を、ヒュウが首を掴んできて…その力を強めて締めてきたの…」
ポート
「っ!完全に正気を失くしていたのか…!」
レミ
「…変化した後から…ずっとうわ言のように、殺す…って呟いていたっけ……でもその直後…私は空を飛んで…?ううん、今思うとあれは多分…投げ飛ばされたの…」
ポート
「投げ飛ばされた…?火山から飛び出したのではなく、ヒュウに投げられたのか?だが…首を締められていたのだろう?」
レミ
「そう…だよ、…正直あのまま殺されるって思った、…でも投げられた直後…視界に入った遠ざかるエヴァルドラーベの瞳…今でもハッキリしてるの…あの時の瞳はっ…黄色く光っていたっ…!…だからきっとヒュウは…!…私を助けてくれたの…!」
ミレイ・ポート
「!」
レミ
「…その直後火山は噴火して…ヒュウは…噴火したマグマに…うぅっ…!」
レミは耐え切れず、再び泣き出してしまう、ミレイはそんなレミが泣き止み…落ち着くまで…優しく抱き締め続けた…
休暇の為にワグアリゾートへと訪れたこの日、楽しい一日で終えるはずだった今日、レミは大事な相棒が破壊され…仲間も…ヒュウとアライブの二人を…同時に失ってしまうという…最悪な悲劇の一日へと変貌してしまったのだった…
第六十話【そして、最悪の一日】
この話終了時点の主な登場人物のプロフィール
エヴァルドラーベ(ヒュウ)
レダルとの戦いの最中、アライブを目の前で失ったヒュウが一人で変化し、その後スカーフに包まれて変異した姿
その姿は元のエヴァルドラーベとしての形を大まかに残しつつも、スカーフに包まれた影響か…全身が赤くなっている
頭部がまるで竜に喰われている様な形状だったり、全身に血管の様な模様が浮かび上がったり、スカーフが消えてたり(スカーフに包まれて変異した為、ある意味ではスカーフは消えてはいない)など、所々違いもある
ワグアリゾートの火山でレダルとの戦いに敗れ、アライブ共々死にかけになったヒュウ、その際にレダルによってアライブの惨い最期を見せつけられてしまう
それをキッカケにせめて一矢報いる為にと必死に思考を巡らせ、偶像のエヴァルドラーベとのやり取りの末、イールフでの強い感情を呼び覚ましつつ、不必要な自分自身を殺す決意をした
それが原因かは謎だが、その決意の後にヒュウは単身でエヴァルドラーベに変化した、しかし直後には意識が無かった…のだが、無防備な所をレダルに攻撃される際、揺らめくスカーフが迎撃した後、エヴァルドラーベはスカーフに包まれて更に変異した、そして全身が真紅に染まり…一部が変異したエヴァルドラーベになった
結果的にレダルに勝利したものの、意図的かどうか不明なままレミを上空に投げ、その直後の火山の噴火によってマグマに飲まれて…消えてしまった
偶像のエヴァルドラーベ
アライブを失ったヒュウが、一矢報いる為に考えを少しでも増やす為に無意識に想像の中に浮かべた他には見えない想像上のエヴァルドラーベ
その身体はエヴァルドラーベと全く同じだが、想像した当時のヒュウと同じのボロボロの状態、ヒュウが主体の時とは違って瞳は全て赤黒いが、これはヒュウがイールフでアライブに誘導された自分を思い出そうとした為
性格は想像している以上もちろんヒュウ…のはずだが、暴走した時のイメージをしているからか、どちらかと言えばアライブに近い
…が、一人称やヒュウのとある決意に対しての呟きなど、ヒュウらしさを感じられる所も(ヒュウの想像の中での事なので、誰かがそういう感想を述べる訳でも無いのだが)
ヒュウが一矢報いる為の方法を思い浮かべ、ある決意をした事で、思考を増やすという役目を終えて霧散していった
作品に関しての感想、質問があれば可能な限りお返事します。
次回も楽しみにして頂けると幸いです
ここまでお読み頂きありがとうございました!




