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氷結の騎士は民を背に  作者: 蒼月
第十二章~終焉の始まり~
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第五百三十八話~終わりの始まり~

 戦闘部隊の再編、負傷兵の回収と治療の指示をあらかた終えたセヴラン。だが、次なる作戦を詰める為休む間もなく、王都地下の自軍の基地へと幾人かが集まっていた。

 集められたのは、セヴランを筆頭に各部隊の指揮官となる面子。また、王都の内政を事実上動かしている文官達。セヴランも会うのが懐かしいホウ爺ことホウルダーの姿もあり、今のフィオリスという国家の代表と言っても過言ではないだろう。


「これで全員か……全員、集まってくれてありがとう」


 セヴランは、部屋に集まった全員に頭を下げる。正直、セヴランからすればここに人が集まらなくても仕方がないと考えていた。なにせ、これからここで話すことはこの国の、世界の命運を左右することになる話だから。


「ホッホッ、今更儂は気にしませんぞ。王を失って以来、この国はもう助からないというのが見解でしたからの」


「リーナ様がお戻りになられたこと、それが何よりも救いです。未だ王の死は公表出来ていませんが、既に民主にも噂は広がっています。戦争終結以外に、我々に道はありませぬ」


 文官の言葉は皆の知るところで、最早国としてフィオリスは機能しているかは怪しい。だが、今更そんなことを理由に国を守らないことはあり得ない。戦闘要員としてこブラッドローズの面々も、覚悟を決めた表情が並んでいる。


「ありがとう…………時間がない、本題に移ろう。既にホウルダーには話を通していたと思うが、竜のことは理解しているか?」


「えぇ、既に民の避難は進めております。ただ、いくら王都地下の基地と言えど、全ての住人を住まわせることは不可能です」


「限界までは地下に避難させて、あとは王都外へ避難させるしかないでしょうね」


 現状を鑑みたリーナの案は、実行するのが最も容易かつ確実なものだ。それ自体には誰も反論もなく、むしろ予定調和だと文官は頷き


「既にそちらの準備は進めております。王都からある程度の地点の村に避難してもらえるよう、説明は終わらせてあります」


「内政に関しては、既に打てる手はほぼ打ってありますぞい。まあ、打てる手がほぼ無いというのが実情ですがの。むしろ、軍事面の話をすべきかと」


 ホウルダーの言葉を受け、セヴランはこれ以上の内政問題に関しては考えるだけ無駄だと判断する。そもそも、セヴランは政治を学んでいる訳ではない。政治に詳しいホウルダーが言いきるのだ、それを信用するのがセヴランの仕事だと言えるだろう。


「なら、今後の戦闘における話だ。竜との戦闘だが……正直、まともに戦える戦力には限りがある。ブラッドローズどころか、パラメキアやレギブスを考慮しても、数人だろう」


「ま、それを考慮して竜への主力部隊は、俺様とセヴラン、リーナの三人だな」


「それではバーンズ将軍、私達は囮として、必要ならば露払いというところですね」


 主力を語ったバーンズに、ギーブは自身らの役目を確認の意味も込めて口にする。ギーブも、セヴラン達の戦った竜の力を直接見たわけではない。だが、セヴラン達の姿や言動からその強さが確かであることは感じ取れる。

 ただ、それでもその発言が前向きでないことも事実で、バウルはどうしたものかと頭を掻きながれ


「あんまし、やられる前提で話したくはねぇが。セヴランよ、俺達以外に戦力は?」


「呼び掛けはしたが、パラメキア方面軍とレギブス方面軍がどれだけ動いてくれるかだな。無論、竜相手に戦えるかと聞かれたらあれだが」


「俺達でも、民を守る盾ぐらいにはなれるだろ。こればっかりは、信じて待つしかないか」


「今のバウルへの補足じゃないが、竜相手への対抗策は一応用意してある。モース」


 名を呼ばれた


「はっ、既にこの王都で作成を進めていた攻城兵器の投杭機は全て稼働可能。城壁上に展開、いつでも使えます。また、魔法陣による防衛計画に関してですが、そちらはギーブより」


「魔導師部隊による迎撃作戦、こちらはソフィア氏からもたらされた情報から研究、完成を急ぎましたが……如何せん急造だった為、完璧とは言えません。魔力の確保という最大の課題を残していますが、部隊員を犠牲にすればある程度の使用には耐えうるでしょう」


 セヴラン達、フィオリス王国とてまったく対抗策を練っていなかった訳ではない。対竜へ使えそうなものとして、セヴランも前々から幾つか案を用意をさせていた。ただ、それもどれだけ機能するかは怪しいものだが。


「では、我々は民の誘導を急ぎます。話は聞いておりますが、どうにもついていける戦いではないようですので」


 この作戦会議において、ブラッドローズとは所属が異なる通常のフィオリス軍の士官。数人が参加しているが、自分達の実力を理解しているが故に作戦での主力足り得ないと分かるのだ。セヴランもそれを否定せず


「はい、我々もそれで問題ありません。民を、よろしくお願いします」


「はっ、では先に現場へ――」


 と、部隊が動くという瞬間、部屋の外から強烈な爆音、そして地下にある筈の部屋が大きく揺れる自体に見舞われた。


「何事だッ!!!」


 バーンズの叫びに合わせるように、通信機からの伝達が部屋へと伝わる。その声は焦りからなのか怒号のようであり、どいうことか通信の声は途切れ途切れに


「竜が……たぞッ!……前線は崩……至急……」


 何かを伝えようとした声はそこで途切れ、事の重要性を理解させる。この瞬間、即座にセヴラン達は剣を取り


「予定よりもかなり早いが迎撃を。民を、我々の国を、竜の好きなようにはさせるなッ!!!」


『はッ!!!!』


 戦闘用員はセヴランを先頭に駆け出し、地上の戦線へと急いだ…………。






 フィオリス王都地上部分、外周に展開した城壁の外周。そこは既に、地獄のような光景が広がっていた。余程強力な一撃を受けたのか、城壁の外側だが地面に巨大な穴が空いている。その光景に、セヴランは寒気を覚えつつ、その光景を生み出した空の存在に目をやりつつ


「状況は」


「隊長ッ!あれが、竜ですか……あれの放った咆哮?ですか。たった一撃で、区画ごと消されましたよッ……」


 セヴランからの言葉で隊員は状況説明をするが、たった一撃というのはセヴランからすれば予想通り。そして、認めたくない現実であった。


「ギーブ、魔導部隊の展開を急がせろッ!各兵器起動、対竜戦用意ッ!」


 セヴランの号令は戦場に響き渡り、ブラッドローズは構える。人類の存続をかけた、終焉の開幕を…………

どうも、作者の蒼月です。

また大変遅れてしまいました。申し訳ありませんm(__)m


やはり、もっとやる気を出すべきなのですが、中々難しいものです。命を掛けてやるぐらいの意気込みを持たないとな、とここ最近は常々感じてしまいます。


内容としては、まあ次から戦いが始まる。更に、ここからはほぼ戦いしか残されていないという点でしょうか。もとより日常パートなどはほぼ無かったですが、セヴランの心は耐えられるのでしょうか……


では、次も読んで頂けると幸いです。

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