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氷結の騎士は民を背に  作者: 蒼月
第十二章~終焉の始まり~
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第五百二十七話~交信~

 地を鳴らし、世界をも揺るがす轟き。体が震える、心が恐怖する。そこにいた誰もが……この大陸に存在する人類全てが、恐怖という感情と戦うこととなった。



「な……なんだ、今のは……」


「……分からないわよ……殺気なんてものじゃない、もっと、得ないのしれない……」


 セヴランもリーナも、生まれて初めて感じるその圧に、膝が震えていた。立っているのもやっと、息が上がり、呼吸が苦しくなる。それでも、立てているだけ上等か。他のブラッドローズの隊員達の多くは、その場に膝を着く状態になってしまっている。何が起きているのか、そんなことを考える余裕もなく――対照的なまでに冷静なハインケルは、この場で状況を理解し、理解したからこそ声として漏れてしまう。


「まさか、終焉が始まったのか…………」


「これが、終焉?」


 セヴランの問いに、ハインケルは視線をちらりと向ける。だが、返答には僅かな間がある。普通に考えて、わざわざセヴラン達に語る必要はない。しかし気が向いたとでも言うのか、ハインケルはセヴラン達に語ることにした。


「要因は分からんが、結界が破られたか……少なくとも、竜が攻めてくる。俺達を、滅ぼす為にな」


「やはり、竜に纏わる話は事実だと……竜……」


「ふん……やはり、その様子だとまだ対策も何もないのか。その様で俺達の邪魔をして……どうせパラメキアにも噛みついたままなのだろう。厄介な連中を消し損ねてしまったものだ……」


「……俺達を見逃すと?」


「勘違いするな。もうお前達に構っている暇が無くなっただけだ。これは忠告だ、お前達が信念を持って立ち続けるのであればまだいい。が、何故戦うのか、その信念を見失った時、せめて俺の邪魔をするな。世界に絶望して、自ら死を選べ」


「……………………」


 ハインケルやヴァンセルト、ソフィア達の言葉は、セヴランにとって理解するのは容易くない。何を言っているのか、分かるのはいつもその時が来てからだ。ハインケルはそんなセヴランを尻目に、背を向けて崩壊した巨大な穴へと視線を落とす。

 まさかと思う。ハインケルがそうであったように、まだ皆が生きているのかと。ある意味で、セヴランも七極聖天の強さには信頼がある。同時に、リーナ達が命懸けで実行した作戦でさえ、まだ倒せる存在ではないのかと、そういう恐れもある。そんな感情が渦巻いていると、瓦礫の中から勢いよく何かが飛び出してき


「おいおい、流石に今回のは効いたぜ。やってくれるよなぁ、ブラッドローズ」


 青い炎を纏う不死鳥が高らかに鳴きつつ、その背にオーガストとゼノン、タリシアを乗せてハインケルの元へと舞い降りる。更に同時、地面から飛び出した獣の聖獣がその巨大な腕でマリーンとライラ、ライルを抱えて崖を走破し駆け付ける。


「もう、そんなことを言ってる暇もないわよ。来てしまったんでしょ」


「マリーンの言うとおりだ、もう時間がない。ブラッドローズの相手をしたいなんて言うなよ、オーガスト」


「わかってるよ。俺達が本気だして潰しきれないんだ、ここで時間掛けてても仕方ねぇ」


 七極聖天達は誰一人として、既にセヴラン達から興味が失せてしまったように見向きもしない。次の行動も決まっているのか、ハインケルが自身の竜の聖獣の手に乗り


「ま、待てッ!」


「待ったところで、お前に関係ないだろう。行くぞッ」


 ハインケル達は聖獣を駆り、レギブス方面へと去ってゆく。少なくとも、目の前の脅威は去った――――筈であった。だというのに、セヴランやリーナの心には靄がかかったままで晴れることはない。

 しかし、立ち止まっている暇はない。終焉が訪れた今、何よりもそれを知らねばならない。国を、人を、多くのものを守るために、セヴランは次の動きを考え始めた…………。






「ふむふむ、成る程ね~彼らについているのか。あはは、見てるかい~うん、そろそろだ。分かってるんでしょ?あぁ……」


 セヴランに付いてきたユグナーツは、ニコニコした表情を見せたまま虚空に向けて語りかける。何をしているのか、それを理解する者はいないし、見ている者もいない。ただ、そこに一人の人物が近づき……


「よお、何してるんだ」


「んー昔の知人の話してたんだ」


「知人?誰もいねぇじゃねぇか」


「ここにはね。彼は見てくれてるよ、あんまり興味ないからいつもは見てくれないけど」


「???」


「アハハ、それは重要なことじゃないから気にしなくていいよ。それよりも、セヴラン達を後で集めてもらえる?」


「何か用事か?」


「竜が攻めてくるからね。第一陣がラグナント平原に来る、それをパラメキアとレギブス、彼らと共に防いでもらうよ」


 ユグナーツは変わらず笑みを浮かべている。しかし、その瞳の奥には、底知れぬ闇があることをバーンズは悟り、言葉を発せずただ迫る危機に心を震わせ、セヴラン達の元へ急ぐのであった…………

どうも、作者の蒼月です。

お久し振りです。今回はまだあまり話が進んでませんが、まあ繋ぎなので……申し訳ないです。

ただ、ユグナーツとかいう物好きのお陰で、物語がだいぶスムーズに進めれるので助かりますね。


さて竜と呼ばれる存在、その姿がそろそろ現れそうですね……どれ程の存在なのか、楽しみにしていただけたら。


では、次も読んで頂けると幸いです。

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