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氷結の騎士は民を背に  作者: 蒼月
第十一章~踊らされる運命の駒~
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第五百二十五話~リーナの策~

 この戦い、単純に戦力差で考えるならば、フィオリスに勝ち目は無い。そして、ここの戦闘能力など全てを加味して、ようやくフィオリス側は不利程度。しかし、それでも良い。守るべきは民であり、部隊の壊滅は条件には入らないのだから。



 戦場全体が緊張している。どこもある程度が拮抗しているという時点で、リーナの目的は達成されたとも言えるから。それを思うと、思わず苦笑が漏れ


「何が可笑しい」


「別に、ただ貴方達が無様だと思っただけよ」


 ハインケルの一撃を紙一重でかわしたのち、即座につばぜり合いで押し込む。ハインケルも対応しようと動きを見せるが、遅い。

 リーナはハインケルが剣を振るうよりも早く上へと跳び、頭上から飛びかかる。無論、ハインケルはそれでも反応はしてくる。振るう剣を無理やりに体を捻り、軌道修正を――


「なッ!」


「捕まえたッ…………!!!」


 ハインケルの対応は完璧だった。正直、リーナのこの二撃目は予想していた為に、そこに合わせる動きで計算していた。だが、一つの想定外があったとすれば…………


「お前、何を考えている……」


「ここで貴方達を止めること、簡単でしょ」


 リーナは、武器を手離していた。故にハインケルよりも一手早く動き、ハインケルへと取りついたのだ。その動きは拘束のみを考えたもので、リーナからは攻撃性を感じない。拘束されたハインケルは地面へと上から押さえ付けられ



 ……この女、なんて馬鹿力ッ……


 ハインケルは拘束を解こうと力を込めるものの、リーナは微動だにしない。動かせる頭で頭突きを放つも、血を流せどもリーナは動かない。それもそうだろう、身体強化で限界まで力を引き出した上で、リーナは痛覚を殺しているのだ。この程度で怯む訳もなく、リーナは獣のごとき笑みでハインケルを睨み付け


「お前、まさかッ!」


「今よ、やれえぇぇええぇぇッ!!!!」



 次の瞬間、リーナの声に呼応するかの如く、戦場であったサファクイル基地、その地面が崩壊した………………。






 地面の崩落は、第一防壁から第三防壁区間まで、そのほぼ全てが瞬時、かつ同時に崩落し始めた。崩壊に飲まれ、多くの者が落ちていく。抵抗もままならない、自然の力の前に人間は無力だ。

 崩落に飲まれていくレギブス兵達、彼らはどうにもならない。ハインケルの視界で見渡し、フィオリス側の戦力が何故ブラッドローズしか居ないのか、他の部隊を退かせたのかが分かる。


 ……そうか、連中ならばこの崩落に対応出来ると。だから、他の連中も出さずにこれだけの人数で俺達を足留めしていたと。まんまと嵌められた訳だな、クソが……


 ハインケルも、どうにかしたいがもう動けない。体勢を整えれていたならまだしも、地面に押さえ付けられていたところからの落下だ。これを狙って、リーナは拘束してきたのだから。しかし、それ故に、リーナも共に落ちる。他のブラッドローズの面々はどうにか崩壊する中を駆け登るが、それが間に合わない。自身の命と引き換えにしてでも、ここで道ずれにするという強い意思。

 ハインケルは認める。このリーナの強さを。ブラッドローズの強大さを。だからこそ惜しい。これだけの力を持つ者達が、このまま朽ちることが。失われてしまうのだ、弱者を守ることで、自分達自身を殺していく。それが堪らなく惜しい……何故それが伝わらないのか。


「ブラッドローズ……目先の勝利求めているようでは、お前達は無力に溺れるぞ…………」


 ハインケルは周囲を見渡した後はリーナへと視線を戻し――――






 リーナは落ちている、ハインケルと共に。本来ならば、ここから上へと跳ばなければならない。けれど、それももう不可能だ。

 手も足も、頭だって動いていない。それもそうだろう、身体強化の魔法とは、別に奇跡の技でも何でもない。ただ単純に、人間の体を限界以上まで酷使しているに過ぎない。限界を越えている以上、脳も追い付かない。その人間の脳も、身体強化を施してある。更には、受けたダメージに対する痛覚遮断などもある。これらを常に魔法として発動させ続け、尚且つ人間を越える動きをしなければならない。

 もうこれを半日以上は行っている。リーナの体は限界をとうに越え、身体強化がなければ既に五回は死んでいる。


 ……あぁ、もう作戦は成功ね。どうにか、七極聖天は抑え込めたわね……


 リーナは落ちつつ、既に消えつつある視界を保ちつつ安堵する。レギブスの足留めに成功し、七極聖天をも止めてみせた。代償は多くの仲間と、取り返した基地の丸々半分以上。成果としては、まあ悪くないというところ。負けて元々、なら良いではないか。リーナは自分にそう言い聞かせる。しかし、このままでは死ぬ、これで終わり。どれだけ良かったと自分に言い聞かせようと…………


「これで、終わりなのね……呆気ないものね…………」


 まだまだ、戦うつもりでいる。守らなければならない者がいる。けれど何よりも、リーナ個人としては再開できたセヴランを置いていくのが辛く




「セヴラン…………ごめんね…………」




「せめて世界を守らないと、俺達は死ぬことは許されないぞ、リーナ」




 聞こえる筈のない……だが、絶対に間違えることはない。そう、その声へと振り向き…………落ちていたリーナは、現れたセヴランにそっと抱き抱えられた…………

どうも、作者の蒼月です。

お久しぶりです。投稿遅れてますが、生きていますm(__)m


さて、この戦いも幕を閉じようとしてますね。フィオリス側の身を削る作戦、七極聖天の足留めと上手くいってますね。そして現れたセヴラン、彼らはどういう動きだったのか……ただ、これでこの戦いは、ほぼフィオリス側の勝利と言えるでしょう。

この流れが次にどうなるのか……また次の投稿は遅れそうですが、きちんと書くのでお待ち頂けたら。


では、次も読んで頂けると幸いです。

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