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氷結の騎士は民を背に  作者: 蒼月
第十一章~踊らされる運命の駒~
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第五百十九話~二度の陥落~

 エメリィを加え、戦力の増強は行えたブラッドローズ。しかし、現実は厳しいもの。方面軍はその戦力を大幅に削られ、レギブスは撤退する意思を見せない。これまで奇襲でこそ戦果を上げれているが、流石にこれ以上の奇襲はない。まともに真正面からやりあえば、物量に押されて負けるのは必死だ。


 リーナは思考し、その間はバウルが指揮を行い迫ってくるレギブス兵を迎撃する。ギーブはリーナの側につき、意見を出し作戦立案の補助を行う。けれど、思うように作戦は出てこない……



「戦列乱すなよッ!ここは絶対に死守しろぉッ!!」


 バウルの怒声。動ける者を十人連れ、迫ってくる大群を切り開いてゆく。大地を蹴り、加速、跳躍、全力で敵へと斬りかかる。


「そこだぁぁぁぁッ!!!!」


「行かせるかよぉぉぉ!!!!」


 手は抜かず、全力で挑んでいる。ある者は大地を切り裂き、その破片で遠距離から攻撃を。ある者は空中で高速回転し、その勢いのまま敵へと落下攻撃を。これまでのセヴランやリーナ、ロイヤルガードの戦い方から得た経験を元に、各々人間の限界を超えた動きで戦う。

 それでも、敵の方が物量で有利ではあるが……


「な、なんだ!?」

「地面がぁッ!」


 ブラッドローズの戦闘に合わせるように、進んでくるレギブス軍の地面が大きくうねり立つ。大地がせり上がり、上には立っていられず多くのレギブス兵が坂となった地面から転げ落ちる。下敷きになった人間は死に、上に落ちた者も無事では済まない。そしてせり上がった大地そのものはレギブス側からの遮蔽物となり、遠距離攻撃を妨害する壁にもなる。

 これだけ大規模な変化を起こせるのは魔法で、そしてそれが扱えるのは――


「流石っすね、エメリィさんッ!おい、俺らも遅れんなよッ!!!」


 バウルは自分達の後ろに構えたエメリィに、バウルは手を上げて感謝を示し突撃する。



 動きはブラッドローズだけではない。フィオリス方面軍も戦列を形成し、ブラッドローズがうち漏らした敵の迎撃を始めている。無論、犠牲がない訳ではない。圧倒的な数の前に、フィオリス側は犠牲が増えてゆく。リーナ達の作戦立案が上手くいき、間に合えばいい。けど、誰もそんな夢のような展開ばかりを見てはいない。正直なところ、ここでの戦いに作戦などない。セヴランがいるならまだしも、ブラッドローズに出来ることは限られ、作戦行動も防衛が主体ではない。


 時間ばかりが経過し、リーナが上げた作戦は随時展開され迎撃を継続する。だが、元々不利であった形勢が変わることはなく、防衛線が押し下げられる一方で、またしても防壁まで押し込まれた。

 当然、ここまでくると七極聖天も動いてくる。エメリィが魔法で足止めし、空いたエメリィの穴を攻めるように敵が雪崩れ込んでくる…………。






 気がつけば、既に日は落ち、戦場を闇が包んでいた。それなのに、レギブス軍は諦めを見せない。被害を省みないその戦い方は、フィオリスをじわじわと削り、既に三割の戦力を失わせていた。最早防衛もままならない。防壁も突破され、第一防壁内での乱戦。結局のところ、前回のレギブス防衛戦と変わらない流れとなってしまった。

 いや、七極聖天が全員揃って攻めてきている、それに今回は正規軍が相手にいることを考えれば、フィオリス側の成長は確かなものだったと言えるだろう。けれど、これが限界であった…………。




「もう駄目ね、限界。また、ここを捨てることになるわ」


「既に話は通していますから、セルゲノフ大将も納得してくださるかと」


 戦場から少し離れた第三防壁上で、リーナとギーブは第二防壁の先で繰り広げられている戦場を想像しながら、風に当たっていた。もう、作戦を練ることもない。立案したところで、出来ることはもうない。

 リーナは自身の後ろを見る。そこには、既に撤退を始めていた方面軍の部隊がいる。そう、端からここでレギブス軍を迎撃しきれるとは考えていなかった。だけれども、簡単に基地を明け渡してしまえばレギブスに感づかれる。故に、多くの犠牲を出し、撤退せざるを得ないという状況を作る必要があった。そして、それに関して言えばこれは成功だろう。レギブス軍は勢いに乗っている。この流れを、七極聖天だけで止められるものではない。

 ブラッドローズは最後まで時間稼ぎに徹してくれる。ここまで出来るのも、リーナへの信頼があればこそだ。そんな優秀な仲間に感謝をしつつ、リーナは戦場を指差す。そしてそれを合図に、ギーブが闇夜へと閃光を上げる。


「さぁ、セヴラン程じゃないけど、ここは私の作戦勝たせてもらうわよ」


 リーナは見えぬレギブスへと笑みを向け、作戦の最終段階へと踏み切った。

どうも、作者の蒼月です。


さて、内容としてはそろそろこの章の終わりでしょうか。まあ、あまりにもここ2章程が長すぎたので、まかないとですね。

ブラッドローズって優秀ではあるんですけど、本当に物量には苦手なんですよね。どれだけしても消耗はありますし、けっして持久戦に向いた構成ではないですから。セヴランもリーナも、どっちかと言えば短期決戦寄りですし。能力そのものが全員そうですからね。

リーナの作戦の最終段階。これがどんな結果をもたらすのか……


では、次も読んで頂けると幸いです。

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