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氷結の騎士は民を背に  作者: 蒼月
第十一章~踊らされる運命の駒~
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第五百十三話~未完成魔法~

 フィオリス側の受けた被害への対応を眺め、ハインケルはこれを望んでいたと言わんばかりにニヤケ顔を浮かべる。周辺には七極聖天の面子しかいないため、特に重い空気も流れはしないが


「ははっ、いいねぇ。でも、直接殴る方が早くねぇか?」


「まとめて排除するなら、こっちの方が効率的だろう。お前が時間を稼いでくれたお陰だ」


「けっ、俺はお前の命令通りにやっただけだ。次どうするか、決めてんだろ?」


 オーガストはハインケルの礼の言葉に意味などないことを知っている。そもそも、今のハインケルのテンションが高いのは、新しい力の行使が上手くいったからに過ぎない。これも、これからの計画を考えればまだまだ準備に過ぎないが、それでもこれは大きな前進だ。

 ハインケルに付き従う六人全員が、今の状況を長く待ち望んでいた。既に始まっている終焉への対抗策、その一つを形に出来たのだから。


「かなり減らせれたけれど、まだまだね。思ったよりも範囲が絞られてる……これは意図的?それとも限界?」


「限界の方だ。というより、制御出来たのがあれだけだ。まだ、調整は必要だろう」


 タリシアから向けられた質問に、ハインケルはこれは仕方ないと言いつつも、苛立ちも隠せず完璧に魔法を完成させたわけではないことを物語る。

 その会話には、次々と他の面子も混じり


「あれだけの効力よ、制御出来なければ意味がないわ。私達ごと消しかねないもの」


「お前の術式制御を用いても、これが限界だからなマリーン。次の方法も用意しておけ、用意ができ次第試す」


「それはいいけれど……」


「「命が溢れてる。アイツ来ない?」」


 ライラとライル、二人はハインケルの前で下から覗き込み、懸念事項の確認をする。それは彼らにとっての障害のことで……


「イクスはどうせ、これに気づいている。今更何をしようが、あいつの動きは決まっている。可能性があるとすれば、他の原初の五人の誰かが動いた時だ」


「…………面倒だな」


「言うな、ゼノン。あれは単独なぶん、ヴァンセルト達に比べれば楽なもんだ。むしろそっちが来る前に、ここをかたすぞ」


『はッ』


 ハインケルが腰かけていた席から立ち上がり、その横に他の者が並び一列が完成する。そしてその後ろにはレギブス正規軍、その中でも選りすぐりの精鋭達の部隊が並び、レギブス軍の最高戦力が集結していた。


「長かった……だが、これは始まりだ。命を捨て、共に解放を」


 ハインケルは剣を振り下ろし…………悲鳴が戦場から響いた。




 フィオリス軍の兵士達の多くが目撃した。もがき苦しみ初め、バタバタと倒れる姿を。一体何が起きているのか、理解が出来ない。そして倒れたレギブス軍の兵士達は、そのまま起き上がることはなく確実に息絶えた。何も行ってはいない。誰も、何も行っていない。なのに、人が死んだ。あまりに不気味なそれは、これまで見たことのないもの。もし、魔法というものをきちんと学んでいない人間であれば、呪いのようなものと認識するしかない。

 そんな自体を前に、リーナはブラッドローズを集結させ


「さぁて、何を企んでるかは知らないけど、中央突破して敵の気を引くわよ。これ以上、被害は増やさせないわ」


『了解ッ!』


 剣を構えた部隊、黒き姿の戦士達。被害こそあれど、まだまだ健在。やれることはやると、覚悟は決まっている。城壁上に並んだ戦士達は、一斉に飛び出した…………

どうも、作者の蒼月です。

投稿遅れていますが、どうにか生きてはおります。中々辛い状況ですが、投稿を止めることはないので……


では、次も読んで頂けると幸いです。

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