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氷結の騎士は民を背に  作者: 蒼月
第十一章~踊らされる運命の駒~
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第五百六話~防衛せし国境線~

 ブラッドローズが切り込む後ろで、フィオリス側はレギブス軍の進行を食い止める。だが、以前とは決定的に違う。扱える戦力、質、数共に。城壁上に並ぶ銃装隊の列は圧巻の一言。レギブス側にはない銃の力、それをフィオリス軍は遺憾なく発揮出来ていた。



「ってぇぇぇッ!!!」


 部隊長の号令と共に撃ち下ろされる銃弾の雨。それは鎧もまともに身につけないレギブスの歩兵相手には有効であり、進行を確実に阻止してゆく。

 銃弾を受けてしまえば、レギブス軍特別義勇兵――装備もない農民上がりの歩兵である彼らは地に倒れるしかない。そうして前列が一度躓けば、後続の者達もバタバタと崩れ……ゾロゾロと固まっている歩兵は、完全に進行能力を失い混乱に陥っていた。


「おいッ!早く下がれッ!」

「黙れッてめぇが前に突っ込んだんだろうがッ!」

「どうでもいいから早くいけボンクラがッ!!」


 士気が高いわけでもなく、訓練もされていない有象無象の集まり。それが生きるために仕方なく集まっている者達であるということは、フィオリス軍の者達も理解はしている。しかし、同情して手を抜けば、次に殺されるのは自分達だ。憎しみの連鎖程この世で無駄なものはない。淡々と、しかし確実にフィオリス軍は敵を退け続ける。


「全体、攻撃の手を休めるなッ!下からの援護もある、存分に力を振るえッ!」


 フィオリス側の防衛手段は何も銃装隊だけではない。無論地上は歩兵の戦列により壁を築き、銃装隊が仕留め損ねた敵をはね除ける役目を担っている。大盾を構える重装歩兵、その後ろに構える槍兵、そして地上から敵の動きを牽制、また迎撃する弓兵、敵の進軍が一方向からに限定されているが故の戦列。これを破るのは、単なる歩兵でしかないレギブス側には不可能であろう。

 銃弾をくぐり抜け、矢の雨を掻い潜り、それでもなお大盾に阻まれ敵陣に食らいつけない。そんな光景が幾度も、幾度も繰り返され、フィオリス軍は大した被害を出すことなく戦い続ける。これにブラッドローズの撹乱の効果も相まって、戦闘は順調にことが進んでいた…………。



 早朝とは言わずも朝から開始されたこの戦い、早くも昼に差し掛かろうかという時間。長期戦になることは想定していた為、フィオリス側は残していた兵力と各部隊を交代させつつ、戦闘で疲弊し過ぎない流れを作る。

 ただ、そんな最中のある光景にて……


「よお、そろそろ交代だ」


「もうそんな時間か、皆疲れてるだろうから助かるよ」


「いっちゃなんだが、ここは楽だと思うぞ。下のブラッドローズの連中に比べればな」


「あれは特殊だからな、俺達がどうこう言うわけにはいかないさ」


「だけど……少し気になったんだが」


「何がだ?」


「なんか、レギブスの動きがおかしくねぇか」


「そうか?別に、連中の普段通りの戦術だと思うが」


「……気のせいか、なんか手前と奥で動きに差があるように思ってよ。まあ、今の部隊になって初めての戦いだし、俺も少し過敏になってたのかもな。それじゃあ、ここは俺達が引き継ぐよ」


「あ、あぁ。頼んだ…………差か、言われてみれば確かに……」


 変化とは、常に目に映るような大きなものだけではない。小さな、蝕むように広がる変化もある。彼らが抱いた疑問とは、一体何なのか。この時はまだ、レギブス側の意図を見抜ける者はフィオリス側には居なかったのであった…………

どうも、作者の蒼月です。

はいはい、なにやら不穏な空気が……まあ、こういったことに気づくのは、何もセヴラン達みたいな人達だけではないということです。しかし、その違和感の正体に気づけるかと言えば、これが中々に難しいのです。レギブスも黙ってボコボコにはされません。一体どうやって、今回は勝ちをつかむのでしょうか。


では、次も読んで頂けると幸いです。

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