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氷結の騎士は民を背に  作者: 蒼月
第十章~散りゆく命~
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第四百八十八話~衝突~

 セヴランは自身の氷の腕が破壊されたが、それを気に止めることもなく即座に氷を再生させる。魔力の消耗を気にしないのか、一切の迷いがない。そしてすぐに加速する体勢を作ったかと思えば、リノームの視界から瞬きをする間もなく消えていた。


「くッ……!」


「こっちよッ!」


 リノームは目の前に現れたセヴランの攻撃を受け止め、その隙にリターシャが背後から斬りかかる。会話もなしに出来る意志疎通としては完璧な動き、これ以上ない連携だろう。ただ、これは既に何度も行われた行動であり、それがセヴランに通じないことも理解していた。

 セヴランは左の腕でリノームに斬りかかり、右の腕の氷を広げリターシャの攻撃を受け止める。そして器用に、どちらの腕も氷を先端部分から枝分かれさせ、武器のぶつかり合う部分とは別角度から刺を突き刺すように攻撃を繰り出す。これに、二人とも飛び退くしか対処手段はなく、距離を作ることとなる。


 飛び退く隙、これをセヴランは見逃さない。その瞬間、セヴランの氷の腕は二人へと高速で伸びる。獲物を逃さぬよう、三つに枝分かれをして。


「厄介なッ!」

「面倒ねッ!」


 リノームは高速で無数の突きを繰り出し、氷の腕を粉砕。リターシャも同様に、迫り来る氷の腕をことごとくはね除ける。セヴランが伸ばしたのは三本に枝分かれさせただけの腕の為、その三本をそれぞれ退けた二人への追撃はない。けれども、伸びた氷の腕は砕けたと思うと、再び同じ形で再現されていた。

 それを再生能力という訳ではない。しかし、攻撃能力が落ちないという点においては、立派な能力と言えるだろう。リノームもリターシャも、セヴラン一人の力が徐々に大きくなっていたために、どうにもならなくなっていた。それを見ていたヴァンセルトもまた、これを厄介な事象と捉え、これまで動いていなかったが動きを見せようとしていた……。




 ……これ程までに、進化していたとはな。対話の道は絶たれ、利用も叶わないか……しかし、ここで殺すことを優先するか、どうする……ここまで成長したならば、これまでとは違い竜との直接決戦に…………。


 ヴァンセルトの思考は、今のところ多くの者に知られてはいない。しかし、その時はやがて確実に訪れる。その時までに、ヴァンセルトは選ばなければならない。セヴランを、生かすか、殺すか…………。


 体勢を低くし、セヴランを視界に真っ直ぐ捉える。その次の行動は決まっている……故に、大きく一歩を踏み込んだ。その一歩は地面を大きく粉砕し、圧倒的な踏み込みだ。まるでセヴランかの如く、爆発的な加速。しかし、その本質はセヴランのそれとは違う。電磁的な反発力によるものとは違い、純粋な本人の足の力。それなのに、ヴァンセルトは跳んだ……。

 上空へと急速に射ち上がったヴァンセルト。圧倒的な速度で跳んだまま、急速に地面へと突撃する。狙った地点はセヴランそのもの、寸分の狂いもなく一直線に飛び込み、セヴランが居た場所は地面の原型を消すほどに崩壊した。


 暫くは爆風に包まれ、二人を視認することは難しいだろう。けれども、二人は互いに見ていた。その敵の姿を、最も難敵であるそれを。

 ヴァンセルトは、セヴランが全力で氷の障壁を展開して自分を受け止めたことを。

 セヴランは、全力で止めたにも関わらず、ヴァンセルトが氷の障壁をどうにか突破してきた事実を。


 初撃はどちらも失敗に終わる。ならば、次は速度を生かした攻撃であり……


「ヴァンセルトォォォッ!!!」


「来いッ、セヴランッ!!!」

どうも、作者の蒼月です。

とりあえず、セヴランとヴァンセルトがぶつかり合うところまではきましたね。さて、ここからどうなることやら……でも、セヴランも今は何故か、リノームとリターシャの二人を止めれる程に強力なんですよね。この状態ならば、可能性がなきにしもあらず……?


では、次も読んで頂けると幸いです。

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