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氷結の騎士は民を背に  作者: 蒼月
第十章~散りゆく命~
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第四百八十三話~英雄が抱く畏怖~

 ようやくリノームを捉えたセヴランだったが、ロイヤルガードの更なる介入により作戦が失敗に終わる。右腕を完全に殺し、ここからセヴランが取れる手段はあまりにも少ない。ことごとく計画を崩され、セヴランには余裕など残されていない。まともな思考も出来ない状態で、眼前の敵を睨むことで冷静さを保ち……


 ……ッチ……これからどうする、もう魔力もほぼ残ってない。このままだと、時間稼ぎさえ出来なくなる。ラディール大将も、他の敵兵を止めるので精一杯だ、戦力はもう……。


 剣を構え、その闘志だけは折れていないと見せつけるように牙を剥く。その様子にはリノーム達も当然反応し


「まだ動くのか」


「降伏しなさい、今ならばまだ」


 リターシャからの降伏勧告。これまではまともに告げられることさえなかったその言葉、だが今さらフィオリスとて退ける訳がない。多くの血を流し、民とて安全を保証してくれるとは限らない。これまでのパラメキアの侵略のやり方を鑑みるに、民がかなりの税を課せられるのは確実。レギブスと比べれば少しはまともというだけで、多くの人間を殺し国を併合していったパラメキアがまともな国と言い切ることは出来ない。それに、こんな時になってからわざわざ行う降伏勧告、こんな挑発じみた言葉は、セヴランの心に怒りを生み出す結果を生じさせる。


「ふざけるな、何が降伏だッ。これまで一方的に攻め込んで、戦争を広めたのがどの何処の国だったか、まさか忘れたとは言わせないぞッ!」


 セヴランの叫び、それは多くのフィオリス王国民の叫びでもあるだろう。戦いにより一度は基地を占領され、実害こそ大きくなる前ではあったが、その不安は大きいものであった。いつ自分達は殺されるのか、もう平和に過ごすことなど出来ないのではないか。そういった不安は連鎖し、未だに拭えずにいる。どれだけセヴラン達が戦おうとも、パラメキアが戦いを行う以上はこれが続くのだ。

 だが、そんなセヴランの想いは届くことはない。この会話でさえ…………


「答えてみろ、ロイヤルガードッ――――」


 セヴランの怒号、怒りを撒き散らすそれは、空から降ってきた次の一撃に書き消される。油断はしておらず、残されていた右腕を振るい反射的に防御に成功はする。だが、それは完全に敵の狙い通りであった。


 残る一人、それはヴァンセルトしかあり得ない。ロイヤルガード最強、そのヴァンセルトの攻撃を、疲弊した状態のセヴランが、それも片手のみで完全に受けるのは不可能であった。身体強化も満足に出来ていない現状、その力に負けた腕は骨が粉砕し、肉が断ち切られ、剣もろとも切断された……。

 あるのは何だろうか、痛みか、屈辱か、敗北感か、最早セヴランにそれを認識することは出来ない。あるのは絶叫、悲鳴、流れ出る鮮血と共に、音を立て地に膝を着いた一人の戦士の姿だけ。




 セヴランは敗北、敗北したのだ。もう彼に戦う力はなく――


 ……まだ……


 敗者として、英雄に屈し――


 ……まだ、俺は……


 しかし、戦士としての魂が、動けぬそれを突き動かす――


「俺は……まだ、戦える……」


 何故立てるのか、何故立ち上がるのか。動くことなど不可能な筈なのに、その瞳の奥には未だ燃ゆる篝火が覗く。それは最早戦士ではない、英雄をも超え、ヴァンセルトに畏怖を抱かせるに至る存在となり


「ふっ……化け物めが」


 フィオリスの敗北で終わる筈のこの戦いは、一人の戦士によって敗北に至ることなく継続された……

どうも、作者の蒼月です。

連続して投稿が遅れ、誠に申し訳ありませんでした。

仕事の都合でどうしても投稿出来ませんでしたが、ようやく通常通りの生活に戻るので次回からは投稿ペースを戻します。

このような遅れが生じているこの作品ですが、読者の皆様に読んでいただけるよう、投稿ペースの約束を守ることをしていく所存ですm(_ _)m


では、次も読んで頂けると幸いです。

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