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アビル鉱山


ラトナたちによるアビル鉱山の占領は、実に大きな成果だった。

ここから得られる収入はもちろん、"魔結晶"の採掘も期待できる。

ユラークたちの軍資金・・・そしてイルモ奪回作戦にとって、これ以上ない追い風となるだろう。


その確認のため、ラトナはアユリーナを伴い、鉱山の視察へ向かった。

護衛として連れてきたのはキュウルーラ20体。

1体で20人を相手取れる戦力と考えれば、明らかに過剰な護衛だろう。


なにせ、ここにいるのは一般の鉱夫だけ・・

襲ってくる心配など、本来ならあるはずもない・・・はずだった。

しかし、鉱山へ足を踏み入れた瞬間、ラトナは違和感に気づく。


・・・静寂!


あまりにも深い、異様な静けさ。

作業場も、休憩所も、道具置き場も・・・

どこにも人影がない。

そう、鉱夫たちはすでに逃げ去っていたのだ。



ラトナによる鉱山占領の際に目撃したキュウルーラの姿を、鉱夫たちは"巨人たちの襲撃"と受け取ったのだろう。

恐怖に駆られ、誰一人として残らなかったのだ。

静まり返った広大な採掘場に風の音だけが残る。


「・・無人とはな」


その声には、驚きと苦笑、そしてわずかな諦めが混じっていた。


人がいない以上、採掘はキュウルーラに任せるしかないのか!?

しかし、ラトナの目の届かない場所(遠距離)では、彼らをうまく操作することができない。


思わぬ形で突きつけられた"人手不足"という現実に、ラトナはため息をつくしかなかった。


それでも、せっかくこのアビル鉱山に来たのだ。

観光がてら周辺を歩き、"魔結晶"の原石でも見てみたい・・・

・・・とはいえ、そんな都合よく転がっているものではないのだよw


そんな・・どうでもよい思考をしていたラトナは、ふと何かの波動を感じた。


「んっ・・・!?」


ラトナは顔を上げ、目を細める。

ここに誰かが残っているのだろうか!?

微かだが、魔力の波を感じた。


その気配は、正式な魔導士のものではない。

もっと素朴で、もっと原初的な・・・

生まれながらに魔導を宿す者の波動。

ラトナは静かに語る。


「隠れているのは、私たちのような魔導士ではない。

・・・"魔導の器"に今だ気づかぬ者だ」


そう、アユリーナのように、"生まれつき”魔導を宿す者が、この鉱山にいるということ。


ちなみにラトナの場合、魔導の素質は元来なく、訓練と知識で手に入れた後天性の魔導士である。

それでも自称世界最強になれるのですよw


そして、隠れている者が姿を見せない理由も明白だった。

ラトナの背後に並ぶキュウルーラたち・・

その巨体と無機質な威圧感は、知らぬ者から見れば"巨人の軍勢"にしか見えない。

恐れて当然だった。


ラトナとアユリーナは、魔導の波をたどりながら、その魔導源に近づく。

どうやら採掘場内ではなく。少し離れた場所。

岩肌の向こう、地形のくぼみに隠れるように、ひっそりと建つ古い小屋・・

いや、それは小屋というより宗教施設の拝殿に近い造りだ。

その建物から、確かに魔導の波が流れ出してきている。


ラトナは目を細め、低く呟いた。


「・・・ここなのか!?」


風が拝殿の壁を撫で、乾いた音を響かせる。

清掃は行き届いているが、どこか物悲しい静けさ。

ラトナは拝殿に入り込み、ぐるりと見渡した。


人の気配はない。

ただ・・魔導だけが、濃く、重く、空間を満たしている。

いったい魔導の源はどこだ!?

そう思案した瞬間、答えは意外なほどあっさりと姿を現した。


「ああっ、これね!」


それは目の前、ラトナの姿をした等身大の女神像。

つまり、この拝殿に祀られた・・・いわば御神体(バベル公姫)というべきものなのだろう。


聖教館にあった攻撃的な像とは違い、

ここに据えられているのは・・・純粋な女神像だった。

しかも、どこか妙に肉感的で、ラトナは思わず苦笑する。


だが、彼女の意識は像そのものではなく、

その真下・・・白い御影石の土台から滲み出す魔導の源へと視線が吸い寄せられていく。


「おっと・・土台か!? 御影石の下から・・なのか」


ラトナの低い声が、狭い空間に広がる。

その声に反応したのか、アユリーナはそっと膝をつき、

女神像を支える白い御影石の土台に手を添えた。


「この土台の下に!? 誰かが隠れているの?!」


アユリーナが眉をひそめてつぶやくと、

ラトナは静かに頷き、鋭い眼差しを向けた。


「そうだね。とにかく土台を動かしてみましょう。もしかすると・・・"あれ"かもしれない」


そんな意味深げな言葉とともに、ラトナはキュウルーラたちに合図を送ると・・

その指示を受けた彼らはすぐに動き出した。

女神像を慎重に持ち上げ、白い御影石の土台をゆっくりとずらしていく。

キュウルーラたちの素早く無駄のない動きにより、作業は瞬く間に完了した。


そして・・・・

露わになった土台の下から、ついに"それ"が姿を現す。


「えっ・・なにっ!」


アユリーナは思わず息を呑み・・ラトナはどこか得意げに目を細める。

そこに安置されていたのは・・・棺。

しかも、伝説に語られるような、豪奢で装飾過多なドラキュラ(吸血鬼)の棺そのものだった。

だが同時に、神聖さと禍々しさが同居する、奇妙な威厳も漂わせている。


「こ、この魔導・・・やっぱり、この棺の中からですよね!?

まさか死んでる人が・・いえ、吸血鬼!?

ラトナ様、これ・・相当まずいですよね」


不安を隠しきれないアユリーナの発言に対して、ラトナはストレートに答えてきた。


「んっ〜、これは間違いない。吸血鬼のものだね。

討伐後に捕まえた吸血鬼を魔導で拘束し、意識を封じたまま・・

この拝殿の"人柱"として・・その魔力を永遠に搾り取るための手法だよ」


それは300年前、ルシャーナ帝国が存在していた時代に一時的に流行した禁忌の術式。

吸血鬼を殺さず生かさず、永遠に魔力だけを吸い続け・・魔導具などの動力源として利用する。

非人道的な行為ゆえに、当時の帝国法で厳しく禁じられた闇の技法であった。


ラトナは棺を見下ろし、古い時代の話を淡々と告げる。


「どういう経緯で・・この棺に封印されたのかは不明だ。

悪事を働いたのか、ただ恐れられただけなのか!?

だが、どちらにせよ・・・この吸血鬼はまだ死んではいない以上・・危険な存在なのは間違いない。

可哀想だけど・・始末してしまおう」


その声音には、戸惑いも迷いもなかった。

ただ事実を述べるだけの、冷ややかな判断だけがそこにあった。

アユリーナの背筋に冷たい汗が流れる。


「・・殺すの!?」


「そうだよ。彼ら吸血鬼は"人"じゃない。

私たちとは違う。危険な生物だ」


ラトナの冷酷な言葉が拝殿内に響く。


この棺は決して開けてはならない。

開ければ、封印が解け、吸血鬼が蘇る可能性がある。

ならば、選択肢はひとつ。


・・・棺ごと、葬ってしまうしかないのだ。





--------------------  To Be Continued ヾ(^Д^ヾ)


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