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女神降臨


ユラーク率いるイルモ解放戦線は、ヴァラウの聖教館を制圧した。

この瞬間、この町の中枢を完全に抑えたのだ。


だが・・・問題はここからだった。

住民の大半はバベル教徒。

彼らをどう従わせ、どう"納得"させるかが、支配の成否を左右する。


ラトナは静かに策を巡らせる。

舞台に選んだのは、町の中央にある"女神バベル公姫・降臨祭"の祭祀広場。


まず、キュウルーラたちの圧倒的な威圧と、ラトナの魔導が一斉に解き放たれた。


黒く、うす気味悪い"蟲"のような触手が地面から湧き上がり、

広場の住民たちの身体へと絡みつく。

逃げようとする腕も・・足も、容赦なく絡め取るのだ。


次々と拘束されていく人々。

年齢に関係なく、子供から大人、老人まで、すべての者たちの心に・・・深い恐怖と、絶望を刻みつけたその瞬間!


ラトナは新たに改良した"魔弾"・・・・美しく輝く魔導花火を夜空へ放つ。


恐怖の直後に訪れる、息を呑むほどの美しさ。

その落差こそが、彼女の狙い・・・・

吊り橋効果のように、住民たちの心を一気に掌握するための、巧妙な演出。




しかもここで・・仕込みの"サクラ"たちが動き出した。

ルジャンやナディラたちが、わざとらしいほど大きな声で叫びだしたのである。


「「おっおおお~ あのお姿は・・間違いなく女神様だ! 我らの女神様が降臨なされた」」

「「女神様、ばんざ~い! バベル公姫様、ばんざ~い!」」


触手に絡め取られ、身動きひとつできない住民たちは・・その声に誘われ、必死に周囲を見渡す。


"女神様はどこに!?"

"我らを助けに来られたのか?!"


だが、どこにも"それらしき姿"はない。

それでも、女神降臨を告げる歓声だけが、広場に響き渡る。


その声は、恐怖に沈んでいた祭祀広場に、じわりと"希望"という名の空気を満たしていく。

人々の胸の奥で、凍りついていた感情が、かすかに震え始めた。


まるで、救いが、本当に訪れたかのように。



そして・・その時、その瞬間!

祭祀広場を切り裂くように、雷光が地上へと落ちたのだ。

まばゆい閃光が視界を白く染め、住民たちは何が起きたのか理解できず戸惑う。


だが、ひとつだけはっきりわかることがあった!

彼らの身体を縛りつけている黒い触手が、跡形もなく消え失せていたのだ。


「「おっおおおおお」」「「た、助かった!」」


住民たちの歓声!

そして、すかさず・・仕込んでいたサクラたちが声を張り上げた。



「「なんとっ~ 女神様が地上に降り立ったぞおぉぉぉぉ」」

「「しかも! あの魔族の女に憑依し・・肉体を乗っ取ったのだ!」」

「「あ、ありがたい~ 黒い戒めをといてくれた! これぞ神の・・神の御業!」」


広場に響く大声と・・・その圧倒的な数が、住民たちの思考を一気に塗りつぶしていく。

住民たちは・・誰ひとりとして"憑依の瞬間"を見てはいない。

それでも、周囲の熱狂と、バベル教徒としての深層心理が働く。


-- あの黒髪の少女(ラトナ)に女神が取りつき・・憑依したに違いない --


理由などない。ただ、そう"思えてしまった"のだ。

群衆の熱狂が、見てもいないはずの虚構を真実へと変えたのである。



ちなみに・・・雷が落ちたように見せかけたのも、触手が消えたのも、

すべてラトナの魔導による演出だった。


「うまくいったなぁぁ! よしよし」


ラトナの口角がわずかに上がる。

女神に憑依しているwとは到底思えない・・どこか悪戯めいた、いや、悪役じみた笑みだった。


この町の住民が、この出来事をどう受け止めるかは未知数。

だが・・・" あの少女! あの魔族の少女に女神が憑依している。すなわち女神本人なのだ "という理屈付けは、今まさに放たれたばかりだ。

うまくいけば、このまま"生き神"として、この町を統治することも可能であろう。



しかし、その傍らで、アユリーナの表情は複雑だった。

彼女にとってバベル教は仇。

親の仇であり、村を滅ぼした憎むべき存在。

なのに・・・尊敬するラトナ様が、その"女神"を名乗るなど!


いや、前々から「あの女神の元ネタは・・200年前の自分だ」とも言っていたし、

「バベル教は潰す」とも宣言していた。

理屈では理解できる。それでも・・・

胸の奥に、説明のつかないざわめきが生まれていた。


-*- - - - - - *-



「久しぶりに飛んでみますか!」


ラトナはそう言うと・・・

住民たちの視線が一点に集まるその場で、ふわりと身体を浮かばせた。

わずかではあるが、確かに空へと持ち上がっていく。

いわゆる・・・"飛空魔導"なのだ。


ただし、この魔導は制御がきわめて難しい。

"浮かび上がる"だけで精一杯・・・コントロールがきわめて困難!

そう、鳥のように飛べないのだ。

だからこそ、ラトナは慎重に、慎重に高度を保つ。


もし失敗して墜落でもすれば・・・女神の威信どころか、

一瞬で"偽物"と断じられかねない(本物なのだけどね)


その緊張を胸に秘めながら、

ラトナは静かに、しかし確かに空中に留まり続けていた。



そして・・やがて澄んだ彼女の声が祭祀広場に響き渡る。

魔導によって増幅されたその声は、広場の隅々まで染み渡った。


「聞き届けよ、民よ。

 妾こそが・・バベル公姫。

 この地を治めるため、天より降り立った者じゃ」


その声が響いた瞬間、祭祀広場の空気が震えた。

石畳が微かに揺れ、風がざわめき、

まるで世界そのものが彼女の降臨を歓迎しているようであった。


「おっ・・・! おおっ・・・!」


住民たちは思わず息を呑んだ。

彼らの視界に"ありえない光景"が飛び込んできたからだ。

少女が、空に浮かんでいる。


しかも・・・・!

柔らかな後光を背にまとい、

この世のものとは思えぬ神々しい装束を纏った少女が、

静かに広場を見下ろしていた。


その佇まいは、

まるで古き神話の頁から抜け出し、

今まさに現世へ降り立った存在のようであった。


その衣装は、ラトナが200年前に纏っていた宮廷の正装。

急ぎ着替えたその装いが、逆に彼女の神秘性を際立たせ、

人々の心に"女神像"を強烈に刻みつけていく。


住民たちは次々と膝をつき、

涙を流し、祈りを捧げ、歓声を上げた。

つい先ほどまで恐怖に染まっていた心が、

その光景ひとつで一瞬にして塗り替えられていく。


・・・奇跡だ。

・・・女神が、本当に降臨したのだ。


こうして、

バベル公姫ラトナが地上に姿を現した"その瞬間"・・・

永遠に語り継がれる神話の幕開けとなる。




--------------------  To Be Continued ヾ(^Д^ヾ)



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