氷華と星槍 ― 側背同時断ち
虚界兵が次々と地面から這い出し、影の靄を引き裂きながら襲いかかる。
黒い瘴気がうねり、咆哮の代わりに空気そのものが震える。
イリナ、 槍を肩に担いでニッと笑う。
「じゃ、クラリス! 挟撃でいこ!
右はワタシ、左はアンタね!」
クラリスは涼しい笑みで返す。
「了解ですわ。
――旦那様に“無様”は見せられませんから。」
二人は地面を蹴る。
足音が一つも聞こえない。
風の軌跡と氷の閃光だけが戦場を走った。
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イリナが跳躍し、虚界兵の背へ槍を突き立てる。
「流星突撃!!」
星光が尾を引き、槍先が影の背骨に突き刺さる。 同時に内側からセラ・フレアが燃え上がり――
虚界兵 「ギィ――――ッ!」
その影の体が内側から白炎へと崩れ落ちた。
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クラリスは微笑んだまま、舞うように剣を抜く。
「氷華連牙――
《グレイシア・ブロッサム》」
一瞬。
虚界兵の背を斬り裂いた刃から、青白い炎と氷花が同時に咲き散り――
影が音もなく消滅する。
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「そっち行ったわよッ!!」
互いに声を掛け合い、目で合図し、動きは完全に噛み合っている。
イリナ 「クラリス、後ろ!!」
クラリスは振り返らずに言う。
「その前に――そちらを助けますわ、イリナさん。」
背後から襲い掛かった虚界兵へ、 クラリスは剣を投げ、イリナは槍で軌道を変える。
刃と槍が十字に背骨を断つ。
虚界兵は黒い霧に溶けた。
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イリナ(肩で息をしながら) 「……アンタ、やっぱ強いじゃん。」
クラリス(汗を拭いながら) 「あなたも、少しは認める価値がありますわ。」
目は合う。
視線はぶつかる。
「でもレオン様の隣は譲らないから。」
火花バチィィィッ
アリア(心の声) 「はい、平常運転。」
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後方で控えていた帝国兵たちは、ただ見ているしかなかった。
黒鉄の槍、魔導砲、炎の魔法――
どれも虚界兵には通らなかった。
だが、レオン一行は――
一撃で完全に葬った。
隊長格の帝国騎士は喉を震わせる。
「……あれが……
“王国の七星”……なのか……?」
武器の差ではない。
戦い方でもない。
“位階”が違う。
レオンは彼らの前で剣を収め、 ただ静かに言った。
「俺たちは“別に強いわけじゃない”。
ただ――影と長く戦ってきただけだ。」
帝国兵たちは息を呑む。
ただの旅人のような口調。
だが、その背は“王”の形をしていた。
帝国軍はこの瞬間、
レオンを“協力者”ではなく、
世界の均衡を背負う存在として理解した。
そして――恐れた。




