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不死王レオンとアルヴィス王国物語  作者: スガヒロ
第三章

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紅蓮の監視下 ― 火の谷キャンプ

〈帝国領南部・ヴァルハイド近郊 “火の谷キャンプ”〉


昼でも空が赤く染まる、灼熱の大地。

火山灰が舞い、遠くでは熔岩の滝がゆっくりと流れていた。

その谷間に、鉄杭と魔導陣で囲まれた前線拠点――

帝国軍野営地〈火の谷キャンプ〉が築かれていた。


レオン一行は、砂風に吹かれながらその門をくぐる。

空気が焼け、靴底がじりじりと焦げる。



---


帝国監視下での行動


「――アルヴィス王国からの協力者一行、入場確認。」

鋼鉄の鎧に赤紋章を刻んだ兵が敬礼した。


クラリスが控えめに礼を返す。

「帝国使節団筆頭、ライゼン・ヴァルハルト卿の命により、

 我々は“帝国軍監視下での調査行動”を許可されています。」


兵士は頷き、魔導刻印の印章を確認する。

「確かに。ヴァルハルト卿の印章に間違いなし。

 ――ただし、ここから先の行動は“司令部の許可”が必要です。」


「……やはり、自由には動けませんね。」

アリアが低く呟く。


イリナは肩をすくめて笑う。

「まーまー! “監視下”とか言っても、ワタシたちが変なことしなきゃ大丈夫っしょ!」

セリオが震える声で言う。

「イ、イリナさんが一番“変なこと”しそうなんですけどぉぉぉ!!」


クラリスはため息をつきながら整然と告げる。

「お静かに。……帝国は“敵”ではありませんが、味方でもありません。

 ここでは一挙手一投足が、信用に繋がります。」


レオンは静かに頷く。

「彼らにも彼らの使命がある。

 ――だが、我々の目的も同じ“聖樹の保護”だ。衝突は避けたい。」


アリアが思い出したように言った。

「アストリアでの話……“同行条件”。」


イリナが指をパチンと鳴らす。

「あー、あの堅物の人でしょ? “帝国軍の監視下で動け”って言ってたやつ!」

セリオ:「あと、後ろにいた赤い目の魔導士さん、ミュゼさん? めちゃくちゃ怖かったですぅ……」

クラリス:「彼女の気配は鋭かったですわね。……あのような方々が、帝国の中枢にいるのです。」



---




火の谷キャンプの内部は、規律そのものだった。

整然と並ぶ鋼鉄製の天幕、兵士たちの無駄のない動き。

蒸気を噴き上げる魔導機関が中央に据えられ、

周囲には浮遊監視球が静かに巡回している。


「……すごいねぇ。全部“動く砦”って感じ!」

イリナが目を丸くする。

「この国、マジで全部機械でできてるヨ!」

セリオ:「ど、どこ見ても鉄と煙ばっかですぅ……空気が焦げてる……!」


クラリスは眉を寄せ、

「文明の発展は素晴らしいですが……どこか、“息が詰まる”場所ですね。」

アリア:「魔導技術がここまで進むと、自然との調和は難しいのかもね。」


レオンは焚き火のような赤い空を見上げた。

「……それでも、この地の人々は生きている。

 火の中で、炎と共に。」



---




その時――

彼らの背後から、重い足音が響いた。


「アルヴィス王国の宮廷画家ノエル殿」


振り向くと、漆黒の軍装を纏った男が立っていた。

額には帝国の紋章、胸には深紅の徽章。


「帝国軍第四監察官、ガイル・エストレイン。

 貴殿らの行動を監督する任を拝命している。」


クラリスが一歩前に出る。

「監察官殿、我々は貴国に害意はございません。

 ただ“炎の聖樹”の異変を調査し――」


「その言葉、信じるか否かは私次第だ。」

男の声は冷たく、だが理知的だった。

「我々も“紅炎の脈動”の原因を追っている。

 貴殿らの協力は歓迎するが……“命令系統”は帝国にある。」


アリアが低く呟く。

「……完全に監視下、ってわけね。」


イリナが腕を組み、ふてくされた顔で言う。

「ヤな感じ~。でもまぁ、監視でもなんでもイイよ。

 レオン様の剣とアタシの槍で、ちゃんと結果出せばいいだけっしょ!」


レオンは小さく笑い、

「結果が全てだ。

 ――それなら、見せればいい。」


ガイルはしばし沈黙し、やがて短く頷いた。

「……よかろう。明朝、前線へ出る。

 貴殿らにも同行してもらう。」


赤い空の下、焔がゆらめく。

その奥で、地鳴りのような唸り声が響いていた。


アリアが振り向き、

「……感じます。“影の根”が、地脈の奥で蠢いてる。」


レオンは剣に手をかけ、

「――ならば、封じるまでだ。」


焔のような風が吹き抜け、

彼らのマントがたなびく。


そして、火の谷の夜が――

ゆっくりと牙を剥き始めた。


いつもありがとうございます。また明日更新します。次回、紅蓮の空路 ― 炎の国を越えて

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