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不死王レオンとアルヴィス王国物語  作者: スガヒロ
第三章

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水守の祈り ― 聖樹の光はまだ遠く

〈帝国東領・ブルーリヴァー峡谷〉

戦場を包んでいた黒い霧は、ゆっくりと晴れていった。

水の聖樹が再び脈動を取り戻し、

冷たく濁っていた川は青白い光を湛えて流れ始める。


勝利の声は上がらなかった。

静寂だけが、谷を覆っていた。


――レイヴンの腕の中、リスティアが眠っている。

その顔は穏やかだが、頬に残る黒炎の痕が痛々しかった。



---


ティル=アクエラが跪き、祈りを捧げる。

「水の聖樹よ……この娘をお救いください。

 彼女の心はまだ、この地を想っています。」


聖樹の根元から、やさしい光が流れ出し、

水の粒となってリスティアの身体を包み込む。


その光は、温かく――まるで抱擁のようだった。


ミュリオ:「……脈が、安定してきたっす。

 でも意識は……まだ戻らない。」

ヴェイル:「まるで眠ってるみたいだな……長い夢を見てるみたいに。」


ティル:「彼女の魂は、まだ聖樹の加護の中にいます。

 完全に戻るまでには……時間が必要です。」


レイヴンは唇を噛みしめ、静かに頷いた。

「時間なら、いくらでも待つ。……あいつが戻るまで。」



---


焚き火の音だけが響く夜。

レイヴンは眠らず、リスティアの傍に座り続けていた。


ミュリオが小声でつぶやく。

「レイブンさん……もう少し休んだほうが……」

レイヴン:「いい。……俺は、目を離したくない。」


ティルは水瓶を手に、焚き火のそばで祈りを続ける。

「水の流れが、彼女の命を少しずつ洗っています。

 今はただ……信じるしかありません。」


ヴェイル:「あの娘、ほんとに強かったな。

 お前を守るために、迷いもなかった。」

レイヴン:「ああ……だからこそ、俺が守らなきゃならない。」


彼の声は震えていた。

けれどその瞳の奥には、確かな決意が灯っていた。



---



やがて、夜が明け始める。

朝霧の中で、水の聖樹が蒼く光を放つ。

その光がリスティアの胸の上で、淡く瞬いた。


ティル:「……反応があります。

 生命の循環が、戻ってきています。」


ミュリオ(涙をぬぐいながら):「ほんとに……助かるんすね……?」

ティル:「ええ。でも――奇跡のような時間が必要です。」


レイヴンはその光を見つめながら、

彼女の手を優しく握った。


「……焦らなくていい。

 ゆっくりでいい。

 お前がまた笑えるその日まで、俺たちはここにいる。」



---



昼が訪れ、ブルーリヴァーの流れは完全に澄み渡った。

帝国兵たちは戦の傷を癒やしながら、聖樹の下に祈りを捧げている。


ヴェイル:「この谷、もう“死の地”じゃねえな。」

ミュリオ:「ええ。いまじゃ“命の流れ”っすね。」


ティル:「水の聖樹は、彼女の勇気に応えています。

 だからこそ……この地を見守ってあげてください。」


レイヴンは頷き、聖樹の方へ目を向けた。


風が吹き抜け、枝葉が静かに揺れる。

それはまるで、聖樹が言葉を返しているようだった。


> “この娘の魂は、水と共にある。

焦らずとも、流れは必ず還る――”




レイヴン:「ああ……わかってる。」


彼は小さく呟き、再びリスティアの手を握りしめた。


水面に反射した光が二人を包み、

その静かな輝きは、まだ見ぬ明日への希望を示していた。


いつもありがとうございます。また明日に更新します。次回、紅蓮の道 ― 炎帝の国へ

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