13話 氏真(其ノ弍)
夜中だというのに、氏真の陣は煌々と篝火が焚かれ、あたかもお祭りが始まらんかの様であった。
それもそのはず、仇敵である織田信長の息子を捕らえて来たばかりか、
釜茹でにして、その醜態を皆で見物するという、前代未聞のビックイベントが行われようとして居るからである。
足軽たちばかりか、今川軍の主だった武将たちが皆、持ち場を離れて、桶狭間に設けられた氏真の陣に見物にやって来た。その中には、今川軍の総大将、今川義元の姿もあった。
「氏真。流石は我が嫡子(跡取り)である。此度の働き、見事であるぞ」
義元はかなりの肥満体で、動きが緩慢であるが、よく通る声で、氏真を褒め称えた。
氏真は、自分では特に何もしていないにもかかわらず、あたかも自らが奇妙丸を捕らえたかのように、父にアピールする。
「かなりの苦労をして、間者を潜り込ませておいたのです。隙あらば奇妙丸を捕らえてこい、と命じておいて、正解でした」
「して、その奇妙丸はどこぞな」
義元が問うと、俺は、猿轡をかまされ、両手を後手で縛られて、義元と氏真の許に引き立てられた。もちろん、引き立てているのは、権六である。
「おお、これが、奇妙丸でおじゃるか。あのうつけの息子だけに、うつけ顔じゃのう」
義元がそういうと、周りの武士たちが賑やかに、笑いだす。
「さてさて、お集まりの衆! いよいよ、お待ちかね。釜茹での時間ですぞ!!」
氏真はそういうと、用意された特大の大釜の横に俺を連れていき、俺の身体を、両手で高々と掲げた。
俺の頭を、今までの出来事が、走馬灯のように駆け巡った。
隕石に打たれて、転生したこと、病弱な母と、乳母との出会い、、、、、。
折角転生しても、結局、落ちこぼれは落ちこぼれ。どうということがない人生だった。。。。。。
俺は、静かに目を閉じた。
すると、遠くの山の中から、大きな怒号と歓声の渦のようなものが湧き上がって来た。
瞬く間に、怒号と歓声は桶狭間を囲む丘や山一面から、けたたましい音を上げて、
こちらに向かって押し寄せて来た。
「義元様! て、て、敵襲で御座います!!!!」




